第3章 第34話 お化け屋敷~プロローグ~
2018年 10月27日(土) 13:23
俺、金間、真壁。十六夜、芽依、月長とのトリプルデートが始まり、まず最初に向かったのは第2体育館。そこでは暦祭実行委員会が主催する、暦祭の中でも1、2を争う人気を誇る企画が毎年行われている。
「すげー! 体育館が全部お化け屋敷になってる!」
その光景を初めて見た真壁が声を上げる。照明が点いておらず、暗幕によって光を遮られたバスケットコートを二面作れるほどの大きさの体育館には、見渡す限りに黒いポリ袋を切って広げた壁が作られている。この中には同じポリ袋によって迷路が作られており、平均クリア時間30分という超大作のお化け屋敷となっていた。
「水菜ちゃんお化け屋敷こわ~い」
「大丈夫だ水菜! 俺が守ってやるからな!」
「あぁそう」
俺の袖を掴み顔を近づけてくる月長に、そんなことを一切気に留めず親指を立てる真壁。なんか月長の死んだ顔も見慣れてきた。
「でも実際そんな怖くねぇだろ。なんせ名前が『こわーいめいろ』だぜ? ぜってぇ子ども向けだって」
金間が得意げにパンフレットを見せてくるが、それは策略だ。誰のかっていうと、宍戸さんの。
俺が高3の時、こいつらが話しているのを聞いたことがある。当時の生徒会長が子どもを釣るためにあえてひらがなにしたと。そして今から1年後の暦祭では名前だけでなく、パンフレットや外の装飾をポップにし、多くの子どもたちを地獄に突き落とした。
それにより大量のクレームが入り、生徒会長が卒業した3年次には普通に恐怖の館みたいな名前に変わっていたはず。あの時は生徒会長ひどい人だなと思ったが、なるほど。宍戸さんならやりかねない。ていうか嬉々としてやりたがるはずだ。
とにかく、高校の文化祭クオリティを遥かに超える恐怖を味わえるらしい。ボッチの俺は行ったことがないが、そんな俺にも伝わるほどの話題を作っていた。
まぁ俺は特に問題ない。なんせ陰キャ。夜目は効くし、暗いのにも慣れている。そもそもお化け屋敷なんて子ども騙し。こんなんではしゃぐほど陽キャではないのだ。仕方ない。俺と同じように余裕そうな月長と一緒に行動してやるか。
「ぱんぱかぱーんっ! ビビり度をお知らせします! 碧さん、ホラー大好き。水菜さん、暗闇に興奮。金間義勇さん、真壁淳さん共に普通。芽依さん、ホラー苦手。主水さん、めちゃくちゃビビってますっ!」
「…………」
リルが何か言っているが、無視だ無視。だいたい俺は三度も死んでいるんだ。俺の方がよほど幽霊だろう。それなのに何を……。
「なるほど! 私、姿消してますねっ!」
(待ってごめんなさいめちゃくちゃ怖いです近くにいてくださいっ!)
そもそも人間自体が怖いのにそれが驚かせてくるとか怖いに決まってるじゃないですか本当に勘弁してくださいうわリルの奴ほんとに姿消しやがったっ!
「二人一組で入るんだって。今の内ペア決めしちまおう」
「わたし主水がいいっ! 主水こういうの大丈夫だよねっ!?」
「なに言ってんの芽依ちゃん。おーくんは水菜ちゃんと一緒にいようね~?」
「やだ俺は十六夜がいいいいよね十六夜さん俺十六夜さんとじゃなきゃ帰る」
「ぇ……。わ、私は……いいけど……」
リルは言っていた。十六夜はホラーが好きだと。芽依と月長が睨んでいるけど見えない知らない。俺は十六夜と一緒にいるんだ。
「ほい、懐中電灯」
その後は芽依、金間ペア。月長、真壁ペアが出来上がり、男子に懐中電灯が渡される。そしていよいよ俺たちの番が訪れた。まず最初に芽依たちが入り、1分ほど経ってから月長たちも突入する。最後は、
「楽しみだね、大矢くん」
「そそそそうだなうんほんとたのしみ」
……あ、ちょっと待って。やばいほんとにやばい。帰りたい帰りたい。助けてリル。お願いおいしいごはん奢ってあげるから。
「次のペアどうぞー」
「いこう、大矢くん」
「はへぁ」
本当に嫌で嫌で仕方なかったが、無表情ながらも明らかにワクワクしている十六夜の様子に、もう観念するしかないと諦めた。




