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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第3章 高1秋・文化祭

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第3章 第23話 秋の空

2018年 10月25日(木) 02:14




「ただいま」

「おかえり」



 1階部分が丸々繋がっている合宿所の庭で手持ち看板にスプレーを吹きかけていると、隣の部屋でシャワーを浴びていた十六夜が帰って来た。



「もう深夜だしそのまま寝ちゃえばよかったのに」

「深夜の方が作業効率が上がる」

「わかる……」



 なんで陰キャはだいたい夜行性なんだろうな。ちなみに中間層が一番夜に弱く、陽キャ度が上がるとそれに比例して夜に強くなっていくUの字型になっている。



「生徒会長、寝ちゃったね」

「だから外にいるんだよ。女子と二人きりとか訴えられたら負けそうだし」


「じゃあ今私が訴えたら困るね」

「ほんとに罰が執行されそうだから言うなよ……。月長なら十六夜を殴りかねない」

「そっちなんだ……」



 十六夜が庭を出てすぐにある靴を置く石部分に座っていた俺の隣に腰を置く。



「ひぇあさむ」

「外戻るか」

「ううん。大丈夫」



 シャワーを浴びた直後の熱気が伝わってきて、こっちは少し温かい。それに加えて今の十六夜の服装。白いTシャツにショートパンツという肌が多く見える服のせいで、余計熱い。落ち着け落ち着け。顔は乙女さんとそう変わらないぞ。



「……寒いから上着とか羽織ったりしたら? 風邪ひくぞ」

「あとで着る。今はこの夜の空気を感じたいの」



 まいったな……。湿った髪や、少し肌に服が張りついているせいでいつもよりかわいく見える。ていうか普段メイクとかしないでその顔の良さなのか……。陰キャのくせにかわいいとか舐めてんのか。



「この後どうするの?」

「もう少しやったら別の部屋行くよ。宍戸さんと同じ部屋で寝るわけにはいかないからな。あ、でも他の部屋は鍵閉まってるのか」


「生徒会長室に行ったら?」

「いやそれは……ギリギリアウトな気がする……」


「じゃあどうするの?」

「まぁ……外かなぁ……」


「死んじゃうよ……」

「人はそんなことじゃ死なない」



 だが実際のところ困った。起こして向こうの部屋に行ってもらうのがベストだが……。



「あ、寝なきゃいいんだ」



 人の多い昼にやるより、夜一人で集中する方が俺には合っている。そう決めると、隣の十六夜が小さくため息をついた。



「じゃあ私も徹夜するね」

「いや十六夜は寝ろよ」


「それができるなら私はここにいない」

「さいですか」



 そんなこと言われたらこっちもほどほどのところで切り上げないといけないじゃないか。めんどうだな。



「じゃあ私上着と魔剤取ってくるね」

「ちょっと待ってくれ」



 立ち上がろうとした十六夜の服の端を掴んで引き止める。ちょうどいい機会だ。ここで弁明しておかなければ未練が残る。



「ちょくちょく言ってる約束のことだけど……」

「うん、なに?」



 輝いた瞳と服を引っ張ったせいでより強調された胸から目をそらす。なんて言ったら傷つけずに済むか……。いや、ストレートに言うしかない。俺は一度深呼吸し、十六夜の顔を見て言う。



「ごめん、何のことか全然わからないんだ。……本当にごめん」



 思わずまたそらしてしまいそうになった視線を再び十六夜に向ける。



「そっ、か……」



 俺の告白を聞いた十六夜は、一瞬とても悲しそうな顔をすると、わざとらしい笑みを作って石に座り直した。



「ごめん……正直、つい最近まで十六夜のことを知らなかったくらいだ。幼馴染だってことすら気づかなかった」

「ううん、大矢くんは悪くない。実際ほとんど話したことなかったし。約束だって、私からの一方的な押し付けみたいなもの……。大矢くんが謝ることじゃない……」



 初めこそ微笑みを保っていたが、次第に表情に陰りが差してくる。何やってんだ俺は。これじゃあ俺が勝手に一人ですっきりしただけじゃないか。



「昔のことは覚えてないけど、今は違う。いま俺は十六夜と一緒にいて、一緒に話している。俺はあの10年よりも、今の時間を大事にしたい。それじゃあ駄目か?」

「……本当に変わったね、大矢くん。昔はそんな気の利いたこと言える人じゃなかったのに」


「……それを成長って言うんじゃないのか」

「そうだね。大矢くんは成長した。でも私は、成長って言葉が嫌い。私は今のままで充分なのに。無理矢理変わらなきゃいけないみたい」



 たぶんこれは十六夜から俺への罰だ。俺は何もわからない。十六夜が何を言いたいのか。同じ時間を過ごし、同じ性格をしているのに。何も理解することができない。



「……ごめん、十六夜」

「だから謝らなくていい。この話はここでおしまい。作業に戻ろう」



 もう俺には彼女の背中しか見えない。大きな背中だ。俺とほとんど身長変わらないから。



 それでも彼女の背中は、やけに小さく見えた。



 ……これで本当に話が終わればよかったんだけどさ。




2018年 10月25日(木) 09:12




「なんで布団の中に十六夜と宍戸さんがいるんだよっ!」

「寝落ちしてたから布団に入れた。生徒会長と二人きりだと嫌って言ってたから私もここで寝ることにした。朝起きたらこうなってた」


「あぁ運んでくれたんだありがとう。……じゃなくてだな、なに? わざわざ寝返りで同じ布団に入っちゃうくらい近くに布団並べたの?」

「襖から一番近かったから。布団重くて遠くまで運べなかった」


「じゃあしょうがない……のか? ほら、宍戸さんそろそろ起きてください。俺たちめちゃくちゃ寝坊しました」

「んー……? んー……あと5分……」


「言っときますけどあんた普通に8時間以上寝てますからね。ソシャゲのデイリー回収の最中に寝落ちしたから」

「はっ! それはまずいわっ!」


「なんでそれで飛び起きるんだよ……。とにかく布団から出ますよ。こんな姿他の人に見られたらなんて言われるか……」

「おっはよー、主水っ」

「来てやったよー」

「おーくん! 水菜ちゃんいなくてさびし……は?」

「なんで! こういう時だけ主人公補正かかるんだよっ!」

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