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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第3章 高1秋・文化祭

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第3章 第7話 おわりのはじまり

2018年 10月22日(月) 10:26




「主水、わたしに任せてっ」

「おーくん、水菜ちゃんが……はぁっ……きっちり……はぁっ……縛ってあげるからねぇ……」

「大矢くん、私がやる。じっとしてて」



 どうしてこうなった。



 月長の椅子投擲により額に怪我を負った俺は、なぜか張り切っている芽依、興奮している傷害事件の犯人月長、保健委員の十六夜の三人に保健室へと連れてこられていた。



 そこまでは別にいいのだが、養護教諭の不在により新たな争いが発生した。誰が包帯を巻くのか論争である。誰でもいいよ。



「私は先生から包帯の巻き方を教わってる。客観的に考えて私が適任だと思う」

「縛ることに関しては碧ちゃんより上手い自信あるよ~? 試してみる~?」

「こんな言い争いしてる場合じゃないでしょ? ほら、間を取ってわたしがやるからっ」



 こんな話をもう5分以上続けている。また女子同士の争いに首を突っ込んで心にダメージを負うのも嫌なので黙っているが、正直めちゃくちゃ痛いので早くしてほしい。ほら、まだ血止まってないよ?



(リル、俺死なないよね?)

「今は大丈夫ですよ。切れちゃいけない血管が切れてたので治しましたから」

(リル……。いつもありがとう……!)



 思えば過去に戻るたびにリルに命を救われてる気がする。少し人と関わるようになったらこの調子とか……ほんと生きるのに向いてないな。



(それに前回もサービスしてくれたんだろ? ほんとなんて言ったらいいか……)



 二子玉に警棒で殴られた時の怪我を治してもらった時、リルは命だけは助けてあげると言っていた。だが月長曰く、奇跡的にたいした怪我にはなっていなかったそうだ。これはつまり、必要以上に治してくれたということ。ツンデレというかなんというか……とにかくありがたい。



「勘違いしないでくださいね? 水菜さんの拘束を解くというサービスその2が無効になったからおまけしてあげただけです。あ、それと勢い余って治しすぎちゃったんです」

(どっちだよ)



 内緒にしていた優しさがばれて気恥ずかしいのだろう。リルは少し頬を染め、ごまかすように髪先をくるくると弄った。



「で、でも本当にこれだけは勘違いしないでくださいね! 私はあくまで自分の卒業論文のためにあなたを助けただけです! 卒業論文の妨げにならないことは助けませんからっ!」

(わかってるよ)



 最近はその境界線もあやふやになっている気もするが……リルにとっては何よりも大事なことなのだろう。念入りにそう告げると、スッと姿を消してしまった。透明になっただけでそこにはいるのだろうが、問題は何も解決してないんだよな。



「わたし!」

「水菜ちゃんっ」

「私」



 さてどうしたものか。もう自分でやっちゃった方が早い気がするんだけど。



「だいたい碧ちゃんはおーくんの何なの? 保健委員だからってここまですることないと思うけど」



 いつまでも話が纏まらないので、誰かを蹴落とす作戦に切り替えたのだろう。月長が攻撃の矛を十六夜に向ける。だがこれはまずい。十六夜碧は俺と小中学校の同級生……。



「私と大矢くんは、幼稚園からの幼馴染。ずっと同じクラスだった」

「「「ぅえぇっ!?」」」



 十六夜の淡々とした衝撃発言に、俺たち三人の声が重なった。小中のことはさっき思い出したけど……幼稚園からだったとは。当然子どもの頃から陰キャだった俺は、幼稚園生だった頃も友だちがいなかった。だからと言ってここまで覚えていないとか失礼すぎるな。



「ねぇっ、子どもの頃のおーくんってどんなだったのっ!?」

「だめっ!」



 目を輝かせて訊ねる月長を、胸に手を当てた芽依が止める。いや、胸ポケットか。おそらくそこに俺の生徒手帳がしまってあるのだろう。芽依にとってその過去は俺を支配できる最強の武器。これを手放したくないんだ。



 もう俺が陰キャだということは周知の事実だろうが、あまり知られたい過去ではない。だから口外してほしくはないが……十六夜の出方がわからない。



 そもそも俺と十六夜は、10年以上同じ空間にいるだけで、全く関わりがない。だから俺にとっては初対面なのだ。性格なんて知りようがない。



 でも氷のような無表情と抑揚のない話し方をしていることから、陰キャか陰キャに近い生態であることは間違いないだろう。



 だから余計なことは言わないと思うが、なんせあの十六夜乙女さんの妹。同じく空気を読めないのかもしれない。さぁ……どっちだ……!?



「……別に。今と変わらないと思う」



 よかった。黙っていてくれ……、



「今も昔も、嘘つき」



 俺には十六夜の感情の機微がわからない。今まで存在すら知らなかったのだから。



 それでもこの一言だけは、何か今までとは違うと思った。



「それってどういう……」

「あなたたち、何やってるの?」



 月長が訊ねようとすると、プラスチックのコップでコーヒーを飲んでいる若い女性の養護教諭が保健室に帰ってきた。なぜ俺が飲み物の種類までわかったのかというと、



「……どうしたの、その怪我」

「……あ」



 養護教諭が血まみれの俺を見てコップを床に落としたからだ。



「いや、転んで……」

「だったら早く止血しなさいっ!」



 ごもっともである。



「今しようと思ってて……」

「ていうかこの量……救急車呼んだっ!?」


「いえ……」

「なんでのんびりしてたのよっ!?」



 ごもっともである。



「十六夜さん、救急車呼んで! 後の二人はこの子の荷物持ってくる!」

「「「は、はい……」」」


「早くっ!」

「「「はいっ!」」」




2018年 10月22日(月) 10:49




 頭から大量に血が出たので救急車で搬送された。事件から約1時間後。遅すぎる対処である。



(救急車なんて初めて乗ったな……)

「正確には2回目ですね。体育祭の時も乗ったので」



 隣で救急隊員が励ましてくれている中、無事だとわかっている俺は枕元に座っているリルと心の中で会話していた。



(芽依たちには悪いことしたな……。救急隊の人にも。かと言って天使にある程度治療してもらったなんて言えないしな)

「正確には天使見習い、ですが」


(同じだろ?)

「いいえ、違います。天使の仕事は死者を死後の世界に連れて行くこと。私にはその権限はありませんし、だからこそこうやって生者とお話できています。正式な天使は逆にこんなことできませんから」



 そう聞かされても俺には同じ超常的な存在だとしか思えない。だが今ここまで詳しい話をしたということは、何か関係があるのだろう。



(リル、今回テンション低いよな)



 月長の好意発覚で俺自身のテンションが高いせいもあってか、いつもとの違いが浮き彫りになっていた。普段のリルはこんなに静かではなく、こんなに悲しそうな顔はしない。



「……そう思うのなら、きっとあなたのせいですね。今回、主水さんの思考が読めなくなることが多々ありましたから。……何か隠しているのでしょう?」

(……まぁな)



 ここまで知られているなら、話さざるを得ない。



「教えてください、ご両親のこと」



 今から半月後に死んでしまう、俺の母さんと父さんのことを。

明日(2021年4月29日)~5月9日までのゴールデンウィークの期間中、毎日2話投稿します(予定)!


何時に投稿できるかはわからないので、ブクマとか! していただけるとね、確認しやすいのではないかと思います! よろしくお願いします!

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