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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第3章 高1秋・文化祭

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第3章 第4話 未来知識無双

 暦学園の文化祭、『暦祭』は、1年の中で最も大きなイベントである。



 その大きさは気持ちという面ではなく、単純な期間の長さ。開催週の月~木曜日を丸々準備期間とし、その間授業は行われない。他校と比べても異常な気合いの入り方だ。



 そして金、土、日曜日が暦祭本番。朝から夜まで学校が開放され、校外からの客もかなり多い。



 後夜祭も終わった翌月曜日が片付け日。だがこの日に俺はいない。俺が未来に戻るのは日曜日の夕方6時前。忙しい時間にいられなくて申し訳ないが、こればっかりは仕方ない。



 つまり本日月曜日は準備期間初日。まだ教室には何の飾り付けもされておらず、デフォルトの状態。これから1年A組の出し物である喫茶店仕様にしなくてはいけないが、



「悪い、後は頼んだ」



 いつもクラスを引っ張っている樹来紅が、朝のホームルームだけ出席すると早々に教室を出ていってしまった。暦祭実行委員としての仕事があるからだ。



 3年次には委員長を務めることになる樹来は、基本的にクラスの出し物に関わることはない。故に今はリーダー不在。



 クラスの危機はそれだけではない。ほとんどの生徒は部活動に所属しており、人数の多いクラスよりそちらを優先する者が多い。ホームルームが終わった直後である現在、ほぼ全ての生徒は荷物をまとめて教室を出ようとしていた。



「みんな待ってよっ!」



 そんな彼らを引き留めようと、さっきから教壇の上で一人の女子が叫んでいた。名前は霜降小雪(しもふりこゆき)。1年A組の学級委員長だ。



「みんなで協力しようよっ! なんで真面目にやってくれないのっ!?」



 この感じ久しぶりだな……。どのクラスにでも必ず一人はいる、イベントに張り切るあまり発狂する女子。それが俺の知る彼女の全てだ。ガリ勉についてくる奴なんて誰もいないのに。カーストというものを理解できていない真面目馬鹿が霜降雪という人間の本質なのだ。



 言い過ぎかもしれないが、たぶん俺はこのクラスの誰よりも彼女からの被害を受けているので許してほしい。部活に入っておらず、暇を持て余していた過去の俺は、消極的ながらも装飾物作りに誰よりも励んでいた。



 だがさすがというべきか、真面目にやっていてもサボっているように見えるのだろう。黙々と作業をしていた俺は、霜降からよく名指しで注意を受けていた。当然陰キャの俺には反論の時間など与えられない。それに増長した霜降は、カースト中~上位が真面目にやらない不満を俺にぶつけ、一人仕事をした気になって満足していた。



 真面目な委員長も他の奴らと変わらない。結局は自分より下をいじめることで悦に浸る普通の人間なのだ。まぁカーストを理解できていない分余計タチが悪いのだが。



「月長、行こうか」



 だが2週間ながら努力を重ねた今の俺は違う。何をやるのかは知らないが、イベント同好会に所属している俺はクラスから逃れられる権利を持っている。霜降には悪いが、泣きじゃくるまで騒いでてもらおう。



「ねぇ、主水。霜降さんかわいそうだよ。なんとかしないの?」



 それなのになぜか芽依に引き止められてしまった。



「……なんで俺?」

「だって主水は困ってる人を見たら助けちゃう人でしょ?」

「どこのどなたですか……」



 そんな人知らない。たぶんオリエンテーションの七海や、体育祭の月長の出来事のことを言っているのだろうが、それとこれでは話の大きさが違う。さては芽依の奴、陰キャの血が騒いだな。他人が勝手に苦しんでいるだけなのに、なぜか罪悪感を覚えてしまう気弱な性格が出てきたのだろう。



「俺じゃ無理だよ。世界を救うのはいつだって陽キャなんだ」

「どゆこと?」

「七海、少しいいか?」



 席を立ち、部活に入っていないはずなのに帰り支度をしている七海の机に近づく。



「悪いけど率先して机を移動させてほしいんだけど」

「なんであたし?」

「樹来がいない今、七海がこのクラスのリーダーだから」



 まぁ実際は人望のある月長が適任だろうが、短時間なら七海が効果的だろう。



「……まぁあんたが言うならいいけど」



 断られる可能性も半分以上あったが、案外すんなりと動いてくれた。カバンを椅子の上に置き、一人で机を持ち上げる。



「どこに持ってけばいいの?」

「とりあえずレイアウトから決めないと装飾物も作れない。4つで固めて大きなテーブルを作ろう」

「り」



 七海が動いたことで訪れる変化。今まで文化祭の雰囲気に当てられ騒がしかったクラスメイトたちが、クラスのクイーンが率先して働いたことで、自分たちも動かざるを得なくなった。



「とりあえず適当でいいよね?」

「ああ。細かいところは後で調整する」



 静まり返った教室に、俺と七海の声だけが響く。……ていうか面倒なことになったかもな。



「大矢、これどこ持ってけばいい?」

「大矢、ここなんだけどさ」

「大矢、俺は何を……」



 嫌な予感通り、七海が俺の指示を仰いだことで、他の奴らも俺の指示を望むようになってしまった。こういうのはガラじゃない。というかどう考えても役者が違う。が、



「窓際に頼む」

「そっちはそれでいい」

「とりあえず机と椅子を分けてほしい」



 俺には3年前の記憶がある。もちろん詳細な出来事は覚えていないが、レイアウトの再現は可能だ。ただ記憶通りに並べればいいだけなのだから。



 だがこれにより最悪の状況が生まれてしまった。



「さっすが水菜ちゃんのおーくん~。頼りになる~!」

「ほんとイベント好きだよね主水……」



 真のリーダー樹来の不在。その空いた穴を俺が未来知識で埋めてしまったことにより。



「案外現代知識で無双系の主人公ならいけるかもしれませんね」

(まじで勘弁してくれ……。心労で死ぬ……)



 代理リーダー、大矢主水が誕生してしまった。委員長、睨まないでください。

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