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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第3章 高1秋・文化祭

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第3章 第3話 九角関係

2018年 10月22日(月) 08:16




「おう主水……あぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「てめぇちょっとツラ貸せやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「え、え、え」



 月長を腕に抱きつかせたまま、芽依と一緒に教室に入ると、突然叫び出した金間と真壁に窓際へと連行された。やっぱりこいつらとの仲はもう終わっていたか……。



「おいお前なんで芽依と一緒にいるんだよありえなくね!?」

「しかも水菜まで引き連れやがっててめぇハーレム主人公気取りか!? 浮かれてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「はぁ? いやなに言ってんのか……」



 わからない。というより早く、真壁が拳を俺の頬に優しく押しつけながら、絞り出すように叫んだ。



「オレと水菜の間を取り持ってくれるって言ったじゃねぇかぁぁぁぁっ!」

「オレと芽依もだ。忘れたなんて言わせねぇぞ!」

「ぁ……あ……?」



 えーと、つまり。



「金間は芽依のことが好きで、真壁は月長のことが好きってこと……?」

「最初からそう言ってんじゃん!」

「それなのにてめぇはよぉ、水菜と腕組んで、芽依まで侍らせてよぉ、どういう了見だおいこら主水ぉっ!」



 いや俺何も悪くない……。ていうか真壁って……。



「七海のことが好きって言ってなかった? オリエンテーションの時に」



 本来の歴史では、真壁は月長に片思いをしていた。それなのに七海が好きと言っていたので記憶に残っている。



「確かに文は好きだ。顔いいし、スタイル最高だし、超タイプ。でも絶対にオレのことを好きになることはない」



 だろうな……って言ったら失礼か。話を聞き続けよう。



「でもさ……水菜ならワンチャンあると思うんだよ! たぶんあいつオレに気があるぜっ!?」



 やっぱり聞かなくていいかもしれない。



「その顔信じてねぇな!? 見てろよっ!」



 そして後ろの方で固まっている月長に手を振り、



「水菜っ! おはようっ!」

「はいおはよ~」

「ほらなっ!」



 なんだそのドヤ顔。自分に都合がいいように物事を捉えてるな。



 勘違い……。俺なら絶対しないが、真壁はカースト上位。こういうのに慣れていないんだろう。



 馬鹿だな……。でも――使える。



「わかったよ、協力する。金間もな」



 リルに読み取られないよう思考する。これでだいぶやりやすくなった。後のことも何とかなるだろうしな。



「こっちだって協力するぜ。お前の女のこともな」

「俺の女?」

「今さら恥ずかしがんなよ。ほら、暦祭の準備期間だってのに今日も本を読んでる十六夜碧(いざよいみどり)ちゃん。お前の狙いの子だろ?」



 金間が肩を組み、一番前の席で何らかの小説を読んでいる暗い雰囲気を纏った女子を指差した。



 座っていてもわかるくらい背の高い女子だ。おそらく170センチの俺より少し低いくらいだろう。大きいのは背だけでなく、腕と顎の間から見える胸もかなり大きく見える。



 漆黒の髪は腰の辺りまで伸びており、前髪も長いのでここからではまともに顔も見えない。が、頬のラインや鼻立ちなどでわかる。かなりの美人のはずだ。いや、美人だったと記憶している。



 正直なところを言うと、この女子に全く印象がない。ここにいるってことは同じクラスなのだろうが、金間から聞くまで名前も思い出せなかった。



 この女子と俺に何の関係が……。いや、確かオリエンテーションでの下種会話の際に、好きな女子を聞かれて咄嗟に選んだのがこの子だったか。それを訂正できずにここまで来たのだろう。



「オレたち非モテ同盟はこの暦祭で彼女を作る。まずは主水、お前からだ!」

「ちょっ!」



 謎の同盟にいつの間にか入っていた俺は、金間に押されて前に出る。この流れで話しかけずにUターンは無理だろう。仕方ない。軽く会話するか。



 ……それにしても、十六夜碧か。どっかで聞いた名前だな……。まぁ同じクラスなんだし聞き覚えはあるだろうが、それとは別にどこかで聞いたことがあるような……。



「お、おはよう、十六夜さん」



 そんなことを考えながら話しかけると、思い出した。どこでその名前を聞いたかを。



「……なに?」



 そして彼女が迷惑そうな顔で俺の方を向いた時、考えは確信へと変わる。



『すんませんっ! 母校にテンションが上がって監視忘れてたっす!』

『いやー、懐かしいっすねー! ジブン、100m走で1位獲ったことあるっすよっ!』

『実はジブンの妹もこの学校に通ってるんす! 年齢的に大矢さんと同学年っすよっ!』



 仕事中なのに缶コーヒー片手に体育祭を楽しんでいた警察官、十六夜乙女さん。



 あの馬鹿面を無表情にするとこんな感じになるはずだ。



 てことはつまり……十六夜乙女さんの妹が、この十六夜碧さん……。



「あ、あの、ただ挨拶しただけだから……」



 頭が混乱してしまい、それだけ言って教室の後ろに戻ることにした。やばいやばい。あのうざ警官の妹が同じクラスだなんて……。あの人下手したら授業参観とかで来かねないぞ。できればもう二度と会いたくないな……。



「待って」

「……はい?」



 そろりと歩く俺を呼び止める碧さん。彼女は身体を前に向けたまま、首だけ後ろに回して冷たい視線を向けていた。



「会話、聞いてた。無駄に声でかかったから」

「そ……ですか……」



 この極寒の視線。まず確実に俺と付き合うつもりはないだろう。それならそれで一切問題ない。あの人が義姉になるなんてありえないもん。



「ずいぶん変わったね、大矢くん」



 だが会話の流れがおかしい。……いや、ちょっと待て。なんか、急に、思い出してきた。



「昔はもっと暗かったのに」



 俺、十六夜碧さんと小中高ずっと同じクラスだった……!



「あ、あはは……。あはは……」



 まずい。まずいぞこれは……。俺の過去……超絶陰キャの過去をばらされたら俺はリア充グループから弾き出されるかもしれない。しかも金間と真壁はそんなことお構いなしにアピールさせたがるだろう。



 そして。そして、だ。細かい事情を抜きにして現状を図に表すとこうなる。



挿絵(By みてみん)



 脅威の九角関係。しかも矢印が向かい合うことはなく、俺は二方向に矢印が向かっていることになっている。この全てを何とかしないといけないのか……。はー、なるほど……。



(リル……耳塞いどけ)

「え? は、はい」



 ふぅ……。一度深呼吸し、心の中で叫ぶ。



(地獄すぎるだろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!)



 待ち受けている現状に絶望するしかなかった。

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