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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第2章 高1夏・体育祭

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第2章 第14話 開催・体育祭

2018年 6月28日(木) 08:12




「主水のばかーっ!」

「ぐへぇっ!?」



 釈放されてから2日後。体育祭のために校庭に出ると、出迎えてくれた芽依にタックルされた。



「バカバカバカっ! 主水があんなことする度胸なんてないことはわかってたけど! 心配したんだからねっ! みんなすごい主水のこと悪く言うし……! 迷惑かけんな、ばかっ!」

「ご、ごめんなさい……。でも俺被害者……。あ、それと遅いかもだけど学ラン持ってきた」

「あ、ありがと……。ていうかうっさい! 言い訳すんなっ!」

「まぁまぁ、落ち着いて。無事に会えて何よりじゃないか」



 バンバン叩いてくる力が強まってきて真剣にきつくなったところを抑えてくれたのは、俺の命の恩人、樹来だ。……ていうかなんだこのデジャヴ感。一昨日も同じことやったぞ。



 とにもかくにも、今日は体育祭。全校生徒が校庭に集まり、朝から夕方まで誰かしらが身体を動かす何が楽しいのかわからない最悪のイベントだ。



 三年前は帰りたくて帰りたくてたまらなかったが、今は違う。いや体育祭自体を憎む心は変わっていないが、家にいるわけにはいかない。今日の15時34分が、この時代に来てからちょうど1週間のタイミング。この時間になると、俺は強制的に未来へと帰される。それまでに何としてでも二子玉を捕まえなければならない。



 結局俺が体育祭に行くのを警察側は許可した。だが積極的ではない。国民の自由を制限できないからというどうしようもない理由故だ。



 そんな自己中心的な人間でも守らなくてはならないのが警察のかわいそうなところ。平日ということで少ない保護者の約半数が警察関係者。さらに高校への入口も常に警官が監視しており、学校の周囲にも見回りの私服警官が巡回している。数でいうと100人を超えるとさっき十六夜さんが自慢してきた。犯人が警察関係者なんだから下手に話しかけるなよ、目立つだろ。



 ちなみに警察が見張っているのを知っているのは、教職員と俺、月長とその家族。そして一昨日あの場にいた樹来のみ。まぁ卯月は家に押し込んであるし、月長の家族も来ていないようだから実際の数は少し減るが。



「ていうかやっぱり話題になってるんだな……」



 家にもマスコミが常に押しかけてたから覚悟はしていたが、すっかり有名人になっていたようだ。まぁ悪い意味でだが。無視されるのは慣れているが、注目されるのはしんどいな。ひとつため息をつくと、金間と真壁が近寄ってきて肩を組んできた。



「当たり前だろすごかったんだかんな! 学校にまでマスコミ来るしよ! ま、オレは主水のこと信じますって言ってやったけどな!」

「淳はやべーインタビューされたってテンション上げてただろ」


「そりゃお前ミノアナにインタビューされたら誰だってテンション上がるだろうが!

「なんでキレてんだよウケる」



 警察からは止められたが、一応これまでのニュースは確認しておいた。最初に報道が出たのは俺が月長を襲ったということ。これ自体は全国テレビに流れるほどのものではなかったが、問題はこれから。



 二子玉が意図的に誤認逮捕をしたという事件が報道されたことにより、俺や月長の写真までネットに晒され、めちゃくちゃ叩かれていた。中にはお前全文読んでないだろと言いたくなる誹謗中傷まで含まれていて個人的にはおもしろかったが、月長の気持ちを思うとどうにもやるせない。



「……そういや月長は?」

「来れるわけないっしょ。あんなことやっといてよ」



 ま、そうなるよな……。報道では二子玉が女子高生と協力して同級生を陥れたとしか書かれていなかったが、わかる奴にはわかる内容。ここに来るまでの間でも、俺への陰口よりも月長を非難する声の方が多かった。正直それくらいなら仕方ないと割り切れるが、



「は? 水菜は悪くないじゃん。あんたら男子にはわかんないだろうけど、女子からしたらあれが当然の行動。水菜だって被害者なんだかんね」



 そう。今七海が言ったような論争が巻き起こっているのが面倒だ。俺をかわいそうと言う男子の声と、月長を庇う女子の声。男子VS女子の構図となり、話がどんどん大きくなっている。



「芽依もそう思うしょ?」

「え? わ……わたしはゆるせな……で、でも、水菜だって悪くないもんね!」



 落ち度がない俺はまだしも、責められる可能性のある月長が来れるわけがない。来たとしても同情の声で自分が辛くなるだけだしな。



 一応解決策は用意したが……月長が来ないことには始まらない。どうしたもんかな……あ、



「悪い、少し外す」



 人混みの奥である人を見つけ、俺は駆け出す。近づくたびに人がどんどんハケていくのでなんだか気分がいい。



「おはようございます、宍戸さん」



 用があったのはイベント同好会の先輩、宍戸桜花さん。いつもは下ろしている長い髪を白のハチマキでポニーテールを作っており、冷たい表情がよりはっきりと見える。



「水菜を助けてくれてありがとう。あなたに話してよかったわ」

「いや俺は何も……。それよりすいませんでした。正直この事件に宍戸さんも噛んでるんじゃないかって疑ってました」

「ふ、私が水菜を傷つけるわけないでしょう。さては大矢君、頭が悪いわね」



 少しイラっとしたが、今はそれよりも。



「昨日連絡した件なんですけど……」

「問題ないわ。全部準備できている。でも水菜が来ないとどうしようもないわよ」

「まぁ部対抗リレーは午後からですし、二人三脚もその直後なんでまだ時間はあります」



 宍戸さんも大丈夫ならほんとに月長だけだな……。そんなことを考えていると、不意に宍戸さんが笑った。小さな笑顔だが、優しい笑顔だ。



「よかったわ。あなたが部員で」

「俺がすごいんじゃなくて、俺なんかをやる気にさせる月長がすごいんですよ」

「そうね。私の後輩だもの。すごいに決まっている」



 そしてもう一度笑うと、



「あとは頼むわよ」

「はい、何とかします」



 そう俺に託した。そして、




2018年 6月28日(木) 12:35




「ひさしぶり~大矢くん」

「ひさしぶりだな、月長」



 俺と月長は再び向き合うことになる。

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