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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第2章 高1夏・体育祭

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第2章 第3話 隣り合わせ

2018年 6月22日(金) 13:35




「人数調整の結果女子とペアだなんて、主水さんのくせに運がいいじゃないですか!」



 昼休みを挟んだ5時間目、体育。この時期は全て体育祭の練習に当てられており、俺は月長と脚を結んで歩いていた。



「しかも相方が月長水菜さんとは! タイプですもんねーこういうふわふわ系! ここが攻め時ですよ!」

(リルマジでうるせぇ……)


 まだ始めて5分ほどだが、今のところ順調。なぜか体育着を着たリルが俺の隣を一緒に歩いていることを除けば。



「うるさいとはひどいですねっ! 私は心配してるんですよっ、あなたの将来をっ! それはさすがに嘘ですけど」

(嘘つくなら突き通せよ……。それに、確かに月長の顔は好みだけど、性格とか雰囲気も含めたらそこまでじゃないよ)


「うわ出た陰キャ理論! 顔だけ好みならそれでいいんですよっ!」

(天使理論の方が最低じゃないか……?)


「まぁ私相手ならこの程度の照れ隠しはいいですけど、人間相手にはちゃんと本心も混ぜた方がいいですよ? 変に恥ずかしがると春のやり直しになりますからね」



 ほんとにそこまで好きってわけじゃないんだけどな……。幼めな顔立ち、ウェーブのかかったブラウンの髪。すごくかわいらしいけど、性格的にはそこまでふわふわってわけでもない。



 カーストトップのグループにいながら自由人。理論的には絶対に噛み合わない七海と仲良くできるコミュニケーション能力。そして少しイタズラ好きな性格。



 樹来たちとは違う、他を圧倒できるスペックの持ち主。月長水菜もまた、歴とした陽キャである。俺が仲良くできる道理もない。



「大矢くんちょっといいかな~……」



 俺の右側で控えめな声を出す月長。見てみると、顔を紅潮させて少し視線を逸らしていた。



「ちょっと胸が気になるから……気持ち離れてくれると助かるかな~って……」



 俺の身長は170cm。対する月長は156くらい。そして低めの身長でありながら、胸は平均よりもかなり大きい。つまり歩くたびに月長の胸が揺れ、俺の横腹に確実に当たっていた。



「ご、ごめん……」

「い、いや~こっちこそごめんね……。勝ちに必要なら我慢しよ~って思ってたんだけど……さすがにちょっと恥ずかしくなっちゃったぁ~……。はは……」



 くそ、かわいいなちくしょう! なんだそのウブな反応! いい加減真剣に隣にいるのしんどくなってきたぞ!



「主水、学ラン貸してくれない?」



 月長との距離調整に戸惑っていると、突然芽依が前に立ちふさがった。しかもなぜか不機嫌そうな顔で腕を組んでいる。俺なんかしたか?



「えーと……なんで学ラン?」

「忘れたの? 女子は応援合戦で学ラン着るの。ど、どうせ主水のなんて……誰もほしがらない、と思うから! かわいそうだしわたしが借りてあげようって思ったのっ!」



 あーあったなそういうの……。三年前はマジで誰にも声をかけられなかったから忘れてた。このクラス女子の方が人数多いのに不思議な話だなぁ。まぁ悲しい思い出は忘れとくとして、



「芽依の身長だったら俺より真壁とかの方がいいだろ」



 芽依の身長はクラスで一番低い152センチくらい。俺のを着たらかなりぶかぶかになるだろうし、160中盤くらいの真壁に頼った方がいいはずだ。



「やだよ。淳の制服臭そうだし」

「臭くありませんんんっ! ちゃんとファブリーズかけてますぅぅぅっ!」

「いま夏服なんだからクリーニング出しときなよ……」



 金間と二人三脚をして通りがかった真壁が叫びながら消えていった。あいつおもしろいな……。



「で、貸してくれる……よね? できれば早めがいいなー……。べ、別に変な意味じゃなくてねっ!? サ、サイズ確認したいからっ!」

「なんでずっと怒ってんだよ……」



 まぁ芽依がいいなら別に断る理由もない。了解と答えようとすると、なぜか月長がニヤニヤしながら俺の腕に引っ付いてきた。



「え~? 水菜ちゃんに貸してくれるって約束したよね~?」



 約束したんですか!?



「……水菜は他の人に借りればいいんじゃない?」

「水菜ちゃんはそれでもいいけど~大矢くん次第だよね~」



 そうなんですか!? え、いやだったら先に約束してたらしい月長に……。



「主水ぉ……!」



 うわ、芽依のやつ俺の生徒手帳見せてきた! なんで体育にまで持ち込んでんだよっ! あの生徒手帳には俺の昔の写真が写っている。あれを見せられるわけにはいかない……!



「じゃ、芽依で……」

「主水自身がそういうならしょうがないなー!」

「んふふ~。やっぱ芽依ちゃんおもしろいな~」



 よほど他の人に頼むのが億劫だったのか、芽依が小さくガッツポーズをとった。そしてスキップ気味に去っていく芽依を見送りながら、やはり月長はニヤニヤと笑っている。



「あ、ちなみに水菜ちゃんとは約束してないよ~。ちょっとからかっただけ~」

「なんでそんなこと……」


「だっておもしろそうだし~。やっぱ人生楽しめる時に楽しまないとね~」

「ほんっと自由人だな……」



 俺の知っている限り芽依をいじれるのは月長くらい。その絶妙な距離の詰め方に素直に感心していると、月長はにへらと笑みを見せた。



「自由はいいよ~? なんせ自分の好きなことだけやってられるからね~。短い青春を嫌なことに費やしてらんないよ~」



 内容的には普段の俺と大差ない、どちらかというとクズ寄りの発言。それでも全く嫌な感じがしないのは、月長の人柄故だろう。それなのに、なぜだ。



「まぁ自由なんて束縛との隣り合わせなんだけどさ……」



 どこか月長の顔に陰りが見えるのは。



「でも自由度では大矢くんも負けてないと思うよ~?」

「どこがだよ……。俺ほど縛りプレーを強いられてる人間なんていないぞ」

「あはは確かに~。ま、隣の芝生は青いってやつだね~」



 少し暗くなった空気を紛らわせるように笑う月長に合わせ、俺も少し自虐を混ぜて誤魔化した。なんだか少しコミュ力が上がった気がする。たぶん気のせいだけど。



「ところでだけど~、もう少し水菜ちゃんたち練習した方がいいと思うんだよね~。せっかくなら一位取りたいし~」

「まぁ歩幅がかなり違うから走るのはきついだろうからな。じゃあちょっと今日の放課後にでもやってみるか」



 同じ同好会だし、あんなふざけた部対抗リレーの練習をするくらいならこっちに力を入れた方がいいと思ったのでそう言ったが、なぜか月長は両手を合わせて頭を下げていた。



「ごめん、今日は予定あるんだよね~……。明日の午後ならいいんだけど~……」

「明日って土曜……いや、俺はそれで大丈夫」



 あぶな……。いつもの癖で休日に外に出かけないようにしてた。一週間しかない以上時間は有効活用しないと。



 俺の答えを聞いた月長は、申し訳なさそうな顔をしたまま一言、



「ごめんね~……。今日カレが非番だから行かなきゃいけないんだよね~……」



 衝撃発言をした。

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