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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第1章 高1春・オリエンテーション

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第1章 第13話 クズで気持ち悪くて

2018年 4月6日(金) 13:25




「あ、大矢。昨日はあんがとね」

「いや……無事でよかった」



 運命が変わり、七海からお礼を言ってもらった。いや本当にお礼を言ってもらうだけなんかい。別にいいけどさ。



 オリエンテーション最終日の午後1時半。荷物をバスに詰め込んだ俺たちは、集合写真のためにコテージの前に集まっていた。今からみんなはバスに乗って帰るわけだが、俺はこの写真を撮ったら終わり。家ではなく未来へと帰ることになる。



 結局今日もあんまり喋んなかったな。男子とはちょこちょこ話したが、女子は月長と普通に話したのと、七海とのさっきの会話。そして芽依とは一言も喋っていない。少しはがんばろうと思ったが、それは昨日の話。有言不実行は俺のモットーだ。最低だな。



「よし、次は俺たちだ」



 前のクラスが終わり、俺たちのクラスの写真撮影が始まる。俺は170センチ……いや高一の今はもう少し低いか。男子の中でも中の上くらいの背なので後ろの方。周りには樹来たち三人がいる。女子の三人は前の方で固まっていた。



「もう少し固まってー」



 撮影担当の先生にそう言われ、全体的にぎゅっと固まる。それにより俺が前の方に押し出され、芽依が少し後ろに下がった。並び的には芽依の斜め後ろに俺がいる形だ。



「……やっぱりわたしとあなたは違うと思う」



 カメラの調子が悪いのか先生が戸惑っているタイミングで芽依が小さな声をかけてきた。視線だけは前に向いているが、内容的に俺に言っているのだとわかった。



「まぁ……そうだな」

「わたしはもっと気を遣って話そうとするし、異性の部屋に入ったりしないし、あんなゲスい顔もできない」



 こんなところでそんな話したくないんだけどな。まぁあと一分足らずで帰るしいいか。



「それと、わたしはそんなに詰めが甘くない」



 今までのはわかったが、詰めが甘い? 俺なんかしたか?



 訊こうと思って芽依を見ると、気づいた。



 してやったり顔で生徒手帳を持っていることに。



「そ、それ俺の……!」



 なんで俺の生徒手帳を芽依が……! 俺は確かに上着のポケットに入れていたはず……!



 いや、昨日。昨日川に入るために上着を投げ捨てた。まさかその時に……!



「かえ……!」

「返さないよ? これはわたしの大きな武器だもん。これでもうわたしに逆らえないね」



 右の口角だけを上げ、ニヤリと笑う芽依。充分ゲス顔してんじゃねぇか……!



「もう話しかけないって言っただろ……」

「ふふ、残念だったね。逃がしてあげないから」



 逃がしてあげないって……。俺に関わりたくないのは芽依の方だろうに。



「わたしと主水くんの違うところ。まだあるよ」



 さっきまでの嘲るような声音が、変わった。ひどく寂しそうで、辛そうな声に。



「わたしは友だちの危機に一歩も動けなかった」



 友だちの危機……。七海が川で流された時か。確かにあの時芽依は動かなくて、俺は動いた。でも芽依は大きな勘違いをしている。



「あの時は調子に乗ってたんだよ。芽依から一本取れてテンションが上がってた。普段の俺なら絶対あんなことしない」

「どうかな。わたし、意外と人を見る目あるんだよ。ずっと周りばっか見てきたから。それに今回でまた新しいことがわかった」



 そう言うと、芽依は笑った。悔しそうに、恥ずかしそうに。



「クズとかっこいいは両立する。あと気持ち悪いもね」



 クズ……気持ち悪い……。ずいぶんひどい……。ん? ちょっと待て。



「かっこいいってどういう……!」



 そう訊ねたその時。視界にストロボの光が差し込み。



 死を思い出させる強烈な吐き気が俺を襲った。




2021年 3月21日(日) 16:58




「ぅ、えぇ……!」



 なんだ? 何が起こった? 俺は……一体……。いや、これは……!



 帰ってきた。三年前から帰ってきたんだ。卒業式の日に。



 それなのに。



「嘘だろ……!?」



 俺の未来は何も変わっていなかった。自室。一人ぼっち。最期に見た光景そのままだった。



「なんでだよ……!」



 約束しただろ、芽依! 卒業式の日、一緒にいるって……!



「くそっ……!」



 こんなはずじゃなかったのに。どうしてこうなった。未来は変わったんじゃないのかよ!



 卒業アルバムを開き、イベントのページを探す。変わってるはずなんだ、多少は。いや変わっていなくてもいい。どこで完全に失敗したかだけでも……!



「うっ」



 来た。尋常じゃない痛み。死の合図。俺はまた、一人で死んでいく。



「が、ぁ……!」



 二回目だが痛みが和らぎも、慣れたりもしない。俺の身体は重力に従って床に倒れる。



 倒れた拍子に卒業アルバムが目的のページを開く。オリエンテーション。最後の集合写真。



 そこに映っていた俺は、楽しそうに肩を組むクラスメイトの中でひどく居心地の悪そうな顔だけを覗かせていたはずだ。



 だが俺が最期に見た俺は。



 慌てながらも前より遥かに楽しそうだった。

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