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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第1章 高1春・オリエンテーション

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第1章 第11話 俺の行動

2018年 4月5日(木) 09:34




「元気になったみたいでよかったよ」

「ああ。昨日は迷惑かけてごめん」



 オリエンテーションも残すところあと一日という4日目。俺たちは昨日と同じように川で観察……もとい遊んでいた。



「ただ今日は……別の子がしんどそうだ」



 樹来の視線の先には、浅瀬でバシャバシャしている月長と七海から少し離れて顔を曇らせている芽依がいた。水着で川に入ってはいるが、明らかに別のことを考えている。女子ということもあって、体調が悪そうでも声をかけづらいのだろう。



「まぁ水に入ってるんだから大丈夫だろ」

「だと思うけどな……これ以上ひどそうだったらコテージに帰そう」



 樹来はそう言うと川で遊んでいる男グループの元に戻っていく。芽依と仲のいい俺にだけ相談したかったんだろう。まぁ今は喧嘩中……というか、完全に嫌われたんだけどな。



 でも樹来の判断は正しい。なんせ芽依の不調の原因は俺なんだから。



「芽依、少しいいか?」

「……うん」



 河原から声をかけると、芽依は暗い顔のまま川から上がってきた。そのまま川辺を歩き、少し離れたところで話をする。



「……どうしたの? わたし、あなたと喧嘩してると思うんだけど」

「いや、なんか辛そうだからな。解決してあげようと思って」



 眉をひそめる芽依に対し、俺は上着のポケットからとあるものを取り出す。芽依にとってのネック。どうしてもばれるわけにはいかないもの。



「最っ低……!」

「おいおい、俺はただ拾っただけだぜ? 俺を責めるのはお門違いだ」



 さっきまで下がっていた眉を吊り上げて怒りを露わにする芽依。俺の言葉が嘘だと看過しているのだろう。



 まぁそりゃそうか。芽依はこれを女子部屋の自分のバッグの奥底に隠していたんだから。俺が持っていることはイコール女子部屋に侵入したことになる。



 だが芽依はこれを先生に告げることはできない。ばれてしまうから。自分の暗い過去を。



「返してよ……わたしの生徒手帳……!」



 そう。俺は昨日誰もいない女子部屋に侵入し、中学時代の芽依の写真が入っている生徒手帳を盗み出していた。



「なんでそんなひどいことができるの……!? 犯罪だよ……! 絶対にゆるさないっ……!」

「いや気づいたんだよ、芽依のおかげで。確かに俺は芽依とは違う。芽依は自力でリア充になれる。これは絶対だ。俺が保証する」



 もう一度経験したから。これがやり直しだからこそわかったんだ。



「でも俺は無理だ。どんなにがんばったってあいつらの友だちにはなれない。生涯陰キャで終わっていく。だから陰キャらしく陰湿に行動することにした。俺にしかできない、俺の決断だ」



 俺は生きるためにこのやり直しの旅に出た。陽キャになればいいと思った。



 だが陰キャでもいいはずだ。陰キャでも生きていいんだ。ボッチでも、別にいいんだ。



「それにしてもおかしいよなぁ。素の自分を出したいって言ってたのに素の写真を隠したがるなんて」

「…………。それで? どうしたら返してくれるの?」



 もう本当に嫌いで嫌いでたまらないのだろう。俺との会話に乗ってこようとしない。



 それにしても運命ってのは変えられないものだな。俺はずっと陰キャだし、芽依は俺のことを嫌う。でも言ってしまえばそれだけだ。別に問題はない。



「ほんっと最低……! 絶対にゆるさないから……!」



 いやだからって勝手に水着の肩紐を下ろされるのは困るんだけどね!?



「卒業式の日! 俺と一緒にいてくれっ!」



 芽依の肩を掴み、動きを止めさせる。俺の望みはこれだけだ。これだけできれば死なずに済む。後はもう陰キャでもいい。



「どういう意味……?」

「そのまんまの意味だ。それだけ約束してくれるなら生徒手帳は返すし、もう芽依に近づかな……!」



 視界の端に、映った。



 川の真ん中部分で流されていく七海と、それを服を着たまま泳いで追いかける樹来。



 七海は泳げないと言っていた。これが意味することは一つしかない。



「っ……!」



 気づけば俺は川へと駆け出していた。生徒手帳から手を放し、一目散にあんなに入りたくなかった川へと。



「待って、あぶないよっ!」



 後ろから芽依の絶叫にも似た声が聞こえてくる。確かに服を着たまま水に入るのは危険だ。上着だけ脱ぎ捨て、そのまま走り続ける。



 おそらくだがこれは三年前にも起きたことだ。ただ外には漏らさなかっただけで、同じ事態が起きたのだろう。だとしたら問題ない。七海は生きていたのだから。放っておいても無事だろう。



 でももし。俺の介入で運命が変わったとしたら。七海が死ぬ可能性がある。俺のせいで。俺なんかのせいで。



 いや、それは言い訳だ。ただ単に自分の行動に理由をつけただけ。



 俺は何も考えず川に飛び込んでいた。理由なんて何もない。ただ気づいたら身体が動いていた。



 距離的には樹来よりも俺の方が近い。確かこういう時は後ろから回り込んで……!



「げぼっ!?」



 必死に腕を振り回す七海の腕。触らないように後ろから回り込んだのに、掴まれてしまった。七海に抱きつかれ、俺も一緒に沈んでいく。



 あぁそれにしても。本当に上手くいかないなぁ……。



 こんなはずじゃなかったのに。

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