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偽りの歌姫は月光の戦士となる  作者: 明日最わたる
第一章
8/16

その剣は"月光の剣(つるぎ)"



ーーーー使えない、とa-0756は冷静に頭の中で思った。怒りや呆れでそう思ったのではなく、ただ"この少女は役に立たない"と純粋に分析してそう思ったのだ。


"月光の戦士"であるはずの少女は、出会った時からずっと動揺したり、怯えたり、奇声を発したりと勇ましい剣の使い手であると聞かされていた"月光の戦士"のイメージとはかなりかけ離れていた。


だからと言って"月光の戦士を命をかけて護衛する"というa-0756の任務には何ら影響はなく、ただ"この少女は戦力にはならない"という事を頭に入れておき、自分の腕がもげようとも腹を打たれようともこの少女を最後まで守れば良いだけだ。


少女が戦力外だとようやく気付けたのは、彼女が焚き火近くにある剣を取りに行き、そのまま力を発揮して戦うのかと思えば、あろうことか自分に向かって"逃げましょう"と大声を上げ、こちらに気をそらせていたはずのヴァルガが少女の大声に反応してしまい、 その様子を見た少女が恐怖で震え上がってしまったのをこの目でしかと確認してからである。


それなら仕方ないと、ヴァルガの少しでも足止めする為、a-0756らヴァルガの足元に銃を打ち込み、少女の元へと駆け出した。


足を打たれたヴァルガはバランスを崩し、怒りの矛先を少女に向け、そのまま命力(と呼ばれる、人間の命を削って出せる力のことである)を使い、炎の槍を作り出してそのまま少女へと放ったのだ。


足を打たれたヴァルガは再び自分の方を振り向きこちらに向かってくるか、痛みのあまりその場でバランスを崩したまましばらくじっとしてくれるかと願った攻撃だったが、まさかのa-0756の予想を裏切った行動だった。


本来であればあまり使いたくなかったが、少女を守る為に自分の持つ風の命力を左手から放ち、彼女の体を風で包み込んでガードする命力を繰り出した。


ところがその瞬間、少女の悲鳴と共にヴァルガの繰り出した炎の槍が、彼女の手に持っている月光のつるぎで一刀両断されたのだ。


a-0756の風の命力のガードに包まれながら少女はそのまま滑る様にヴァルガに向かっていき、ヴァルガの右手を素早く切り落とした。


ヴァルガの絶叫がその場で響き渡る。


その光景をみたa-0756は、ああ、今までのは能力を隠していただけでやはり彼女は選ばれし戦士だったと納得し、"月光の戦士"である"少女"の顔を見た。


少女と目があったa-0756は思わず目を見開いた。


今までの少女の顔付きとはまるで別人の様に変化していた。顔の造形は変わらぬものの、凶悪そうな鋭い目つきに、自信に満ちた表情で余裕の笑みを浮かべているのだ。


この少女は先程の少女ではない、とa-0756は直感で感じた。


「・・・やっと出てこれた・・・この風のガードは、お前が出したのか」


先程までの少女の甲高い声質とはまるで違う、どこか狂気染みていながらも冷静を保っている様な不気味な声にa-0756はどういう事かと思いつつも、「はい」と簡潔に答える。


「私には必要ない。今すぐ、外せ」


「・・・・・承知しました」


言われるがまま、a-0756は少女の周りの風のガードを解く。


すると方腕がもげて痛みでうずくまった状態のヴァルガを見て少女はなぜだか顔を歪めて急に不気味に笑井い出し、「ははははっ!!!もー限界だぁ・・・・おい、トドメを刺すぞ。援護するなら銃でやれ、命力だけは何があっても決して使うな」とa-0756に指示を出した。


御意、と短く返事をしてからa-0756はとりあえず少女に従い、少しずつ動き出そうとするヴァルガに照準を合わせる。


少女はヴァルガに剣を構えて再び近付いていくも、ヴァルガはその気配に敏感に反応し、唸り声をあげながら巨大な左手を振り上げて少女の体を鷲掴みにしようとする。


けれど少女はそれを読んでいたかの様にひょいと交わし、そのままヴァルガの懐に入る。


そのままトドメをさすのだろう、と思った瞬間、いつの間にかヴァルガ放ったらしい無数の炎の槍が少女の頭上に現れており、少女目掛けて放たれた。


「!!!」


a-0756はすぐさま命力を使い、少女の頭上にある無数の炎の槍を風の刃で薙ぎ払うと、それと同時に、ヴァルガの首が地面にボトリと落ち、巨大な体は地面へと倒れ込んだ。


「・・・・・・」


少女はa-0756の方を無言で振り向くとそのままつかつかとこちらへ寄ってきた。


そしてそのままa-0756の胸ぐらを掴み、強引に少女の方へと引き寄せられる。


「命力は使うなと言わなかったか」


狂気染みた雰囲気から豹変し、今度は他人を従える様な圧力を醸し出す少女に困惑しながらも、a-0756は冷静に答える。


「ですが、私の使命は月光の戦士様をお守りすることです。・・・・あの場では銃ではどうにもならなかったのですが」


「あの程度、私ならどうとでもなる。・・・・とはいえ私は戦闘になるとどうにも我を失い、先程の様な見苦しい姿を見せることになる。戦闘が終わっても私のタガが外れて暴走が止まりそうにもないその時には、すまないが銃でも命力でも何でも使って私を止めて欲しい。・・・それと、この小娘・・・ツキジは何があっても守ってくれ」


そこまで言い終わると、少女はa-0756の胸ぐらから手をパッと離し、a-0756の瞳を探る様な目でジッと見た。


ーーーー要約すると、"私を守る時には命力を使わず、止めるために命力を使え"ということで、もう一つは・・・・・


「ツキジ・・・とは先程までの怯えていた少女の事か。では、今のあなたは・・・・・」


「私はかつてこの世界を二つに分ける時より存在した月光の戦士。この剣と、この体の持ち主の少女、ツキジに魂のみ宿り、死の世界より舞い戻った。・・・・本来ならもっと早くに現れすはずだったのだが、私がツキジの体を借りるのには何か条件がある様だ」


「・・・お会いできて光栄です。月光の戦士様」


a-0756は胸に手を当て、深くお辞儀をする。


「顔を上げてくれ。そう言う堅苦しいのは好かない。・・・・にしてもお前、随分と人間臭さのない奴だな。言葉に感情が一切込もっていない」


「私は戦力にのみ特化した人間です。無駄な感情などは一切必要ないと上官から言われて育ちました」


a-0756がそう言うと、月光の戦士はa-0756哀れむ様な、気味が悪いとでも言うような微妙な表情をして「なるほどな」と短く頷いた。


「・・・・・一つ聞きたいのですが、先程のツキジという少女は今どこにいるのですか」


「ああ、ツキジなら先程炎の槍が飛んできた時に気絶してしまったよ、今は眠っている。ふふ、情けない小娘だ」


まあ仕方がないがな、と月光の戦士は不敵な笑みを浮かべてクスクスと笑った。


何が可笑しいのか分からないa-0756は笑っている月光の戦士を無視して、「あなたはそのツキジという少女の体をそのまま乗っ取り、我々に協力してくれると言う事でしょうか」と自分の疑問をぶつける。


するとそれを聞いた月光の戦士は笑っていた顔からスッと笑顔がなくなり、a-0756を睨みつけて「何故、そう思う」と聞き返してきた。


「その方が効率的だからです。はっきり申し上げますとあの少女は戦力としては役に立たない。月光の戦士様がそのままツキジという少女の体を乗っ取ってくれていた方が・・・・・」


全て言い終わる前に、月光の戦士の拳が瞬きするより早くa-0756の頬に当たり、口の中に血の味が広がるのを感じながら、a-0756はそのまま無表情に月光の戦士を見つめた。


何故殴られたかわからないんだろうな、と月光の戦士が言うと、a-0756は「はい」と頷いた。


「お前は確かに戦力には何より優れているかもしれないが、人として一番大事なものが欠けているよ」


「それは、私の使命を全うするもので必要なものなのでしょうか」


「そうだ。・・・・・はっきり言ってツキジはお前が持っていないものをたくさん持っている。きっとアイツは誰よりも心も体も強い人間になるよ」


ツキジという少女とあなたは知り合いなのですか、とa-0756が尋ねると月光の戦士は今は教えたくないね、と再び不敵に笑ってそう言った。


「ツキジの側にいて色々と学ぶといい。そして命を掛けて彼女を守れ。・・・・まあ、戦いに関してはしばらくは私が表に出るつもりではあるが・・・・」


「戦闘が必要になった時には、あなたがツキジの体を乗っ取ると言う事でしょうか」


「そのつもりだが、ツキジの体を借りる条件が・・・・ってそれはそうと、気になっていた事を一つ聞いてもいいか」


a-0756がはい、と答えると月光の戦士は自分の着ている黒のロングコートをトントンと指差した。


「ツキジはなぜこんな変態露出狂みたいな格好をしているのだ。なぜ下に何も着ていない」


「へんたい・・・ろ・・・?申し訳ありません、日本語はまだ全て取得した訳ではないのでその意味は分かりかねますが、下に何も着ていないのは私が脱がしたからです」


なぜなら湖にしばらくつかってしまい、濡れた服で体温を下げるのを防ぐ為です。という説明をする前にa-0756は再び月光の戦士に頬をぶん殴られた。


ーーーー先程よりも、なぜか強く。


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