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偽りの歌姫は月光の戦士となる  作者: 明日最わたる
第一章
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瘴気に侵された村


テアザントの村に着き、おそらく村に住んでいるのであろう少女と出会ったツキジ達は彼女にこの村の宿はあるかと尋ねてみたが少女は悲しそうに首を振り、この村にあった宿も経営が厳しくなり無くなってしまったのだと言う。


困った、とライノスが嘆くと少女がツキジの服の裾を引っ張りこの国の言葉であろうアデリノア語で一生懸命何かを話しかけてくれるが、ツキジには何を行っているか分からず、焦って首を傾げるばかり。


すると少女の言葉を聞いたライノスがしめた、といった顔で頷き、ツキジに代わってアデリノア語で彼女に何か返事を返すと、少女は嬉しそうにニコッと微笑んだ。


なんて可愛らしい少女なんだ。とツキジは思わずほう、とため息をつく。


ーーーーこの愛らしさにくたくたになった体が癒されていくのを感じる。


この子がニコリと笑う度に思わず抱きしめてしまいたくなるのをツキジは必死で抑えた。


「え、えーと・・・ライノス、この子何て言ってたの・・・?」


「"宿が無くて困っているならうちにおいで"とさ。優しいお嬢さんだ。ありがたく行かせてもらおう」


ライノスは少女の頭を優しく撫でると、彼女は照れ臭そうにしてから、再びツキジの裾をくいくいと引っ張った。


ーーーーうわあ、可愛い仕草。持って帰りたい。


気持ち悪いにやけ顔になってしまいそうになるのを必死で抑えながら少女に向き直ってツキジはお礼を言う。


「家に行っていいの?ありがとう・・・!って日本語通じないのか。ライノス、ここではありがとうってどうやって言うの?」


「lukua eri taありがとう、だよ」


ツキジはライノスの発音を真似てそのまま少女にお礼を言うと彼女はツキジの瞳を真っ直ぐと見据えてアデリノア語で何かを話した。


おそらくどういたしまして、と言ったのだろう。


礼儀正しい上に可愛さを兼ね備えてるなんてなんて素晴らしいお嬢さんなのだろう。この子の未来はきっと明るい、とツキジは呑気に考えていた。






体力の限界を突破してしまったツキジはクロウにおぶられながら、少女の家に行く途中に通ったテアザントの村内を見て驚愕した。


村は荒れ果て、一応畑らしきものはいくつかあるものの全く実っておらず、その上あちこちで物乞いをする子ども達や、まだ若いであろう夫婦がすっかりやつれて弱り果てている風貌で野菜や果物を買っている姿が見受けられ、思わず目を逸らしたくなってしまう。


・・・日本でこんな風景を見る事なんてまずない。テレビや本等ではこういう貧しい国の現状を見たり知る事はあったが、あくまでテレビや本を通して見る遠い遠い国の事で、ひどいと思う事はあってもやはり目の前で繰り広げられている訳ではない事だから心のどこかでは自分には関係なくて、直接関わる事

は永遠にないものだと思っていたのだと痛感する。


でも目の前のこれは違う。これはツキジの目の前で実際に起きているリアルの現実。


「これ全部、瘴気のせいなの?」


クロウにおぶられながらツキジが顔をライノスの方に向けて尋ねると、ライノスは頷いて難しい顔をする。


「瘴気は病にかかるだけでなく、作物や草を腐らせる。この村はもうずっと瘴気と共に暮らしているんだね」


「瘴気のない場所はあるにはあるんだよね?この人達は他の場所に引っ越す事はできないの?」


「無理だね。瘴気のない場所に住めるのは身分の高い王族や貴族といった金を持っている人間だけ。金の無い人間はこういった瘴気にまみれた土地で暮らして行くしか無い。瘴気に溢れた土地の中でもこのテアザントの村はヌアザティアの世界で上から二番目に汚染されてちまってるもんだからひどいもんだね」


「・・・そんな」


この村の人達はここから出て行く事もできず、日に日に汚染されていくのを感じながら苦しい毎日をだんだんと過ごしていくしか無いと言うのか。


ーーーー身分の高い人達が手を差し伸べる事は一切ないのだろうか。


ツキジの思い悩んだ表情に気付いてないらしいライノスは更に追い討ちをかける様な言葉を言う。


「・・・ちなみに言うと、生まれた時からこういった瘴気に塗れた村に住んでる人間は、瘴気から身を守る為に赤ん坊の時から命力をふんだんに使っているせいで平均寿命は40歳程度なんだよ。命力は自分の命、すなわち寿命を削って使うものだからまあ当然といえば当然なんだけどね。そうでなくても瘴気の病に侵されて死んでしまう場合も多々あるけど・・・」


「よ、40歳!?いくら何でも若すぎる・・・」


確かにこの村を見渡す限り若い夫婦や子ども達ばかりで年老いた老人は全く見かけない。


「・・・」


今、この村で見かける人達もいずれ瘴気で病に侵されたり、命力を使い果たして若いうちに亡くなってしまうのか。


もしツキジの世界に瘴気というものが流れ込んでしまったなら、今目の前で起きている事が日常茶飯事になってしまう。


恐ろしい想像をしてしまい、ツキジは思わず無意識にクロウにしがみついている手をギュッと強くしてしまう。


「・・・こんな世界嫌だろ?この瘴気なんてもんがあんたの世界に来ちまったらどうしようもないよ」


だからあんたは私達に協力する他ないんだよ、とでも言いたげに自嘲気味に微笑むライノスを見て、ツキジは益々自分がどうしていいのか分からなくなってしまった。



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