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偽りの歌姫は月光の戦士となる  作者: 明日最わたる
第一章
14/16

憑依する条件



a-0756改め、クロウがヴァルガを倒し、少しだけ休憩したのちにツキジ達はすぐにテアザントの村を目指して歩き出した。


いつのまにか辺りは段々と暗くなり、今夜はここらの森で野宿をするよとライノスが言う。


「・・・ところでクロウ。エオルさんが出てくる条件は何かってのは特に言ってなかったの?」


「エオル様は"条件がある様だ"としか言っておらず、ご自分もそれがどういう条件なのかは知らない様に思えました」


「なるほどねぇ・・・とゆうことはその条件が何か分からない限り、ツキジは戦闘では全く使い物にならない訳だ」


そんな言い方しなくても、と反論したくなるも使い物にならないのは事実なのでツキジはあえてグッと押し黙る。


ーーーー本当にどうしてなんの戦闘力もない私が月光の戦士になったのだろう。もしもエオルさんとお話ができるのなら、その辺詳しく問いただしたい。・・・憑依されている間に会話が出来るのかは分からないが。


悶々と考え込んでいると「月光の戦士様」クロウにと呼ばれて俯いていたツキジはハッと顔を上げる。


「昨日、エオル様が出てくる前の状況を整理しようと思うのですが、最初に月光の戦士様は・・・」


「ま、まずさ、その"月光の戦士様"って呼び方やめない?私の名前、ツキジだし。ツキジって呼んで欲しい」


「では、ツキジ様」


「様もいらない」


「・・・ですが」


躊躇する様に口ごもるクロウに対し、ツキジは「いいから」と嗜める。


「堅苦しいの嫌なんだ。もっと楽に接してくれた方が助かる。・・・私は"様"なんか付けられるような人間じゃない」


「・・・」


それを聞いたクロウは目を見開き、不思議そうにツキジの顔をジッと見つめた。


いつも鉄仮面であるクロウのこんな表情を見るのは初めてで、驚いたツキジは思わず彼から一歩離れた。


「な、なに・・・?」


「・・・いえ。では恐縮ながらツキジ、とお呼びさせて頂きます」


一瞬何かを考える様な奇妙な間が気になったが、とりあえずクロウが自分の名前を呼んでくれる事に了承してくれた事にツキジはホッとする。


「うん、それでよろしく。・・・それで何だっけ、昨日エオルさんが出てくる前の状況を整理するんだよね」


「はい。確か、あの時は・・・」


昨日の状況をクロウとツキジは思い出しながら話し合った結果・・以下のいずれかがエオルがツキジに憑依する条件に値するのではないかと言う結論に達した。


〜エオルがツキジに憑依する前の状況〜

1.月が出ている真っ暗な夜であった

2.ヴァルガと対峙していた

3.ツキジは手に月光の剣を持っていた

4.ツキジは気絶してしまった

5.湖に落ちた直後だったのでツキジの体が水に濡れていた


「・・・この中だと、3と4がそれっぽくない?でもツキジが気絶しないとエオルが出てきてくれないってのはなかなかキツいねぇ」


ツキジとクロウが考え出したエオルが出てくる条件に値しそうないくつかの状況を聞いたライノスはう〜ん、と首をひねり眉間に眉を寄せて難しい顔をした。


「・・・私は1と3と4が条件に値するのではないかと思います。月光の戦士、というぐらいですから月の出ている夜というのは関係あるのではないかと思います」


クロウの意見にツキジはえっ、と驚きの声を上げる。


「や、やっぱり二人とも私の気絶は必須だと思ってる??じゃあ何、私戦闘が必要になった時には誰かに殴ってもらって気絶しなきゃいけないの?」


「・・・私なら、殴らなくても気絶させる事は可能ですよ」


「何する気!?痛いのはやめてよっ」


クロウの無感情な視線に死の危険を感じたツキジは自分の体を守る様なポーズをして彼を睨みつける。


そんな二人のやり取りをみていたライノスはカラカラと笑う。


「とりあえずクロウの言う通り、月光の戦士なんだし、月の出ている夜に剣を持つってのはなか説得力があると思ったよ。夜になったら試してみるのはアリだと思う」


「・・・もしエオルさんが出てこなくても、殴って気絶させたりしない?」


「お望みとあらば」


「望まない。絶対やめて」


ツキジにとっては命に関わる事だというのに、何が楽しいのかライノスは延々と笑い続けていた。


そして、そうこうしているうちに薄明るかった空は真っ暗な暗闇となり、ツキジ達3人は辿り着いた森の中で野宿をする準備を始めることとなった。


ーーーーエオルさんが私に憑依するかの実験はやらなきゃいけないのかな、とツキジは少し憂鬱な気分になりながら曇った空を見上げた。



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