1/16
満月二つに剣一つ
・・・・・夢を見た。
風一つない夜の空気の中、目の前には童話に出てくる様な湖があって、その水面にはキラキラと眩しいくらいに光る満月が写っている。
・・・その光景をツキジはぼんやりと何の感情も無く、ただ佇んで見つめていた。
顔を上げれば本物の美しい満月が浮かんでいるというのに、なぜかツキジは湖の水目に写った方の偽物の満月から目を離す事ができなかった。
「・・・・・・?」
しばらくすると、水面に写った満月がぐにゃりと歪み、突如異物が現れた。
その異物が何なのか確かめたくて思わず凝視すると、その異物がキラリと光り、思わず眩しさに目を細める。
「剣・・・・?」
その異物の正体は、映画や本の世界でよく目にした事がある剣だった。先程の光は、月の光が剣の刃先に反射したものだったのだ。
ツキジは無意識に湖に浮かぶ剣に手を伸ばす。
その瞬間、先程まで吹いていなかった風が突然激しく吹き荒れ、風に吹かれた髪の毛がツキジの顔を覆い、前が見えなくなる。
ーーーーーー湖に浮かぶ不思議な剣に手が触れたかどうかは、ツキジは覚えていない。