探索
始まりの街の横にある鬱蒼と茂った森の中、前にスライムが二匹。
ミキ 「行きますね。水の弾丸!ウォーテス・ブレッド!」
勢いよくスライムに水でできた粒が素早く飛んでいく。
当たると、スライムが弾けるように飛び散って、その後にはコインと小さな
魔石が転がった。
レージ「命中率上がったね。すごいよ。僕も頑張らなく
ミキ 「はい。やりました。」
二人はアイテムを拾うとそのまま奥へと向かう。
今度はゴブリンが一匹。こちらにはまだ気づいていないようだった。
レージ「よーし。今度は俺が…見てて」
ミキ 「はい。頑張って下さい」
ゆっくりと背後から近づくと、一気に距離を詰めて切り掛かった。
ハラハラしていていたが、それなりにダメージを与え、数回攻撃を
かわすと、仕留めたのだった。
ミキ 「お疲れ様〜。」
レージ「一匹ならなんとかね。まだ時間大丈夫?」
ミキ 「はい。」
レージ「もうちょっと奥に行ってみよっか?」
ミキ 「はい。行きましょ。」
本当は姉を待ちたかったが、連絡もないのでまだ帰宅していないの
だろう。
森の奥の洞窟へ行くとメッセージを飛ばすと、レージと共に向かった。
奥は薄暗くて見えにくかった。
ミキ 「光よ!ライト!」
空中に光の球が出て、ミキの周りを浮遊した。
レージ「便利だな〜、助かるよ。」
ミキ 「えっ…きゃっ!!」
光に反応するように奥から蝙蝠が一斉に出てきた。
レージはミキを背に庇うように立った。
襲ってくるのではなく、ただ光に驚いて向かってきただけのようだった。
レージ「大丈夫?」
ミキ 「はい…驚いちゃって」
レージ「弱いけど、俺が守るから」
ミキ 「…ありがとうございます」
レージ「敬語やめない?俺まだ学生だし…なんかミキちゃんも若い
でしょ?」
ミキ 「お…私は高校2年です」
レージ「同じじゃん。ならさ、よけい敬語はいらないよ。」
ミキ 「はい、わかりまし…わかったよ」
レージ「うん、その方がいい。行こっか」
ミキ 「うん。」
洞窟の天井に張り付くようにスライムがいっぱいいたが、少しずつ落
としては撃退していった。
奥に進むと蜘蛛が数匹塊でいた。
ミキ 「どうしましょう?ちょっと多すぎますよね?」
レージ「だな…そっと引き返すか?」
ゆっくりと元来た道を帰ろうとすると、石をコツンっと蹴ってしまい、
ゆっくりと振り返ると、こちらを眺めている蜘蛛と目があった気がした。
ミキ 「これって…やばいです?」
レージ「戦うかっ…」
そういうと、剣を構えた。
ミキも杖を構えると詠唱をしようとして横から通り過ぎる人影に戸惑った。
ミキとレージの横をするりと抜けて、蜘蛛に真っ直ぐ向かうプレーヤーがい
た。がたいのいい男性で両手には剣をもっていた。
踊るようにスパスパと切り捨てていき、何十匹といた塊は死骸の山となった。
ユウヤ「君達、ここに来る前に装備は揃えたのかい?毒ポーションもしくは
キュアか、リカバリー覚えてから来なさい。」
ミキ 「…」
レージ「すいません、助かりました。」
ユウヤ「聞いてるのかい?」
ミキ 「えっ…あっはい!」
ユウヤ「僕はユウヤ、よろしくな!ミキちゃん、聞いてるのか?」
ミキ 「えっ…なんで…?私、言ったっけ?」
レージ「知り合い?ミキちゃん?」
ミキ 「…ねぇちゃん!」
ユウヤ「やっと気づいたか?遅い!しかも勝手に行くし〜、追いつ
くのに慌てて走ってきちゃったよ」
小さめの声で呼んだので後ろのレージには聴こえてなかった。
親しげに話す姿を見て少し寂しそうにしていると、ユウヤが話しかけて
きた。
ユウヤ「ミキが世話になったね。これからも仲良くしてやってくれる
かな?」
レージ「は…はい。あの〜お二人は?」
ユウヤ「リアルで知っててね。ちなみに僕は女だ。」
にっこりと笑うユウヤにレージは少し恥ずかしくなった。
レージ「こちらこそ、よろしくお願いします。ミキさんに助けられてます」
ユウヤ「さぁ、僕も手伝うから、このまま進もうか?」
ミキ 「いいの?やったー」
レージ「ありがとうございます」
その後は、目まぐるしい勢いで次々と敵を葬っていった。
ユウヤの力は凄まじく、ミキもレージもパーティーを組んだものの、何も
やる事がなかった。
ユウヤ「こんなもんかな!」
一息ついたように言ったが、今いるのはボス部屋。
このダンジョンのラスボスの死体を椅子代わりに一息ついたのである。
ミキ 「…何もやってない」
レージ「力が違いすぎる…」
ユウヤ「あぁ、今は気にしなくていいよ。でも道や敵の種類、何
がいるのかとか、わかっただろ?今度攻略しに来る時の
参考になっただろ?」
ミキ 「参考どころか…あっという間すぎてわからないよ」
レージ「確かに…俺らじゃまだまだ厳しそうってのがわかった
くらいかな。」
ユウヤ「じゃー。入り口からもう一回おさらいしようか?ほら、
行くぞ!」
ミキ 「えっ!」
レージ「えっ!」
それから、5往復もやることになるとは思わなかった。
しかし、最後は2人でもなんとか倒せるようになってきていた。
ユウヤ「うんうん。上達早いね〜。よし、これなら2人だけで
ボスも行ってみようか!」
ミキ 「まだ早いんじゃ…」
レージ「ユウヤさんがいてくれるうちに、チャレンジしないとな!」
ユウヤ「そうそう、その粋だよ。危なくなったら助太刀するからさ」
そういうと、3人でボス部屋へと入っていった。