序章
たいしたものではないが、自分達で狩った物なので、それだけで嬉しかった。
ミキ 「やりましたね。」
レージ「助かるよ。また明日も一緒に狩り行こう!」
そう言ってミキの手を握ると興奮した様に話した。
お互いの距離が近い事に今更ながら気付くと、すぐに手を離し、距離をとった。
レージ「ご…ごめん。つい嬉しくて…」
ミキ 「いえ…あの、明日もいきましょ。私も楽しかったので…」
クエストを終えるとギルドに戻りログアウトした。
俊はすぐさま姉の部屋へと駆け込んだ。
俊 「ねぇちゃん!魔法の習得教えてくれ!それと、どうしたらもっと仲良く
なれるか教えてくれよ」
沙耶 「ん?あんた友達できたの?男?女?それによって変わるわよ。これ。」
そう言って渡されたのは恋愛コミックだった。
俊 「男だけど…って、何これ?」
沙耶 「これ読んで、男の落とし方を学びなさいよ。」
俊 「別に落としたい訳じゃ…」
沙耶 「参考になるわよ。明日いいところ連れてってあげるから、待ってなさい。」
参考書代わりに渡された恋愛コミックは意外と読みだすと面白かった。
が、あまり参考にはなりそうもなかった。
何故なら、俊は男子を落としたい訳ではないからだ。
ー次の日ー
私立高校に通う佐藤俊に声をかける者は誰もいなかった。
居ないというより、仲のいい友達がいないのだ。
入学早々先輩に目をつけられ、喧嘩したせいで怖がって近づかなくなった。
高橋先生「今日の掃除当番は佐藤と井上だったな。ちゃんとゴミ捨てもしとけよ」
井上 「えー。マジかよ。礼司〜変わってくれよ。好きなのなんでも奢るからさ」
井上が泣きつくように当番の交代を頼んでいるのが池田礼司。
誰とも卒なく話す事ができる。そのかわり色々と頼まれると断れない性格だった。
池田 「井上またか?」
井上 「な!頼むよ。」
池田 「仕方ないな〜。」
井上 「さんきゅ。礼司は頼りになるぜ。今度奢るからさ。」
佐藤俊と話す事なく、テキパキと掃除を終えて、机と椅子を整頓する。
池田 「え〜っと、あとはゴミ…あれ?」
スタスタとゴミを纏めると佐藤俊が先を歩いていく。
池田 「佐藤くん!俺も持つよ!」
佐藤 「…」
佐藤俊は一旦振り向くが、そのまま歩き出した。
両手に持ったゴミ袋を片方受け取ると池田礼司も一緒について来た。
池田礼司は佐藤俊の言動に逐一ビクッとなっていたが、佐藤俊にとってはどう話した
らいいかわからないだけだったりする。
野球部「おーい、危ないぞ!」
声がした方に振り向くと池田礼司の目の前にボールが飛んできていた。
一瞬目を瞑るとその場にしゃがみ込んだ。
当たると思われた痛みはいつになっても来ず、ゆっくり目を開けるとそこ
には佐藤俊によって素手で受け止められたボールが握られていた。
野球部「すっ…すいませんでしたーーー!」
真っ青になって駆け出していく野球部の後ろ姿を見ながら、差し出される
手を掴むと立ち上がった。
池田 「ありがとう。あのさっ…」
佐藤 「怪我ないか?」
池田 「あぁ、うん。大丈夫。」
佐藤 「そうか…。」
それからは会話らしい会話もなく、焼却場行ってそのまま帰宅した。
池田 「あんまり…怖くなかったかも。今度話してみよっかな」
そう言いながら池田礼司は家に着くとVRを起動した。
俊 「ねぇちゃん!いる?」
姉の沙耶の部屋に来るがまだ帰ってきていなかった。
がっかりしながらVRを起動した。
ギルドホールでレージを見かけるとそわそわしながらどうやって話
かけようかと悩んだ。昨日は普通に話せていたが、自分の事を覚え
ていてくれているだろうか?と不安がよぎった。
一方レージは、方は昨日のミキを探していた。
すると、端っこの方でおろおろしている彼女を見つけた。
近寄ると、ほかの人に話しかけられている最中だった。
カズ 「ね〜一人?俺のギルドどう、入らない?今なら回復アイテム
使いたい放題だし、難しいクエストは俺が一緒についていっ
てやるよ。どう?」
ミキ 「あの…人を…待ってて」
カズ 「それって男?俺よりいい男はいねーよ?」
ミキ 「あの…」
カズ 「来いって、受付けこっちだしさ〜」
そう言って腕を掴んで連れて行こうとするのをレージが止めた。
レージ「俺の連れなんだけど?」
カズ 「なに?初心者?笑える〜。」
話しているうちにミキはレージの後ろに隠れるように移動した。
カズ 「そんなやつがいいのかよ?弱っちいだけで、面白くねーだろ?」
ミキ 「いい…少しずつ強くならから…いい」
レージ「だってさ、ナンパは他所でやれよ」
カズ 「つまんねーの。」
そういうと立ち去っていった。
もし決闘でも申し込まれたらどうしようとドキドキしていたレージにミキが
覗き込むように見上げてきた。
ミキ 「あの…すいません。助けていただいてっ」
レージ「いいよ。困ってたみたいだし。今日も一緒にいいかな?」
ミキ 「はい!よろしくお願いします。」
二人は初心者用のダンジョンへと向かっていった。