人間と欲望と天使
『貴方を救ってあげる』
天使は笑ってそう言った。
曰く、願えば天使の力が強まり、そして、理想を現実にすることができるそうだ。
僕は願った。
復讐するために。
僕の全てを奪ったあいつらに復讐を果たすために。
この忌々しい感情を忘れないように。
僕は毎日願った。
そしついに天使の力が強まり、力を使えるようになった。
これであいつらに復讐をすることができるようになった。
「あいつらに復讐を果たしてくれ」
僕がそ言うと天使は笑顔のまま頷き去っていった。
数日後、あいつらは無差別殺人事件に巻き込まれ、見るも無残な死に方をしたそうだ。
やっと、終わった。
だが、時間がたつにつれ今まで自分を動かし、支えていた何かが徐々に抜けていくのを感じた。
あぁ、なんだこれ。寒気がする。怖い。自分の中から何かがなくなって行く。
そうだ、僕には天使というものがあるじゃないか。
願えばなんでも叶う、そんな力が。
すぐに願った。
「この寒気を消してくれ。心を直してくれ」
と。
天使はやはり笑顔のまま頷き去っていった。
あぁ、これで本当にすべてが終わった、安堵のため息をこぼし、そのまま目を閉じた、清々しい明日を迎えるために。
それから僕は何故か全てが憎く感じるようになった。
親友も、家族も、
すれ違うただの赤の他人ですら憎くてしょうがなくなった。
そうだ、あの時みたいに願えばいいんだ。
全てを天使に任せればいいんだ。
『貴方を救ってあげる。』
天使は嗤ってそう言った。
ありがとうございました