明けない夜の
ふらっと書いた詩です
長い長い夜だと
感じたのは
もう半年も寝続けていたからだ
寝て夜
ふと目覚めて夜
夜のうちに寝てまた夜
明けない夜などないと
人は言うけれど
こんなふうに夜しか見えなくなれば
明けていないのと何が違うというのだろう
未来の夢を見ていた
遠い遠い時間の先のこと
宇宙空間を小さな小舟で
頼りない灯りだけを持って
ずっと
ただ
ただよっているだけ
太陽から遠く離れ
大地から遠く離れ
ひたすら続く闇の中を
食べることも飲むことも必要のなくなった体で
目だけを薄くあけて
どこまでも
どこまでも
宇宙の果てを目指して
膨張し続ける宇宙で
その端っこを観測しにいくための舟だ
でも宇宙のしっぽの逃げるスピードは
予測計算よりよっぽど速くて
この舟ではきっともう追いつくことはない
そこにもしも朝が来るとするならば
膨張しきった宇宙が収縮に転じてそのあと
宇宙の端っこは内側へと猛スピードで私を追い抜いて
ぜんぶなくなったあとで起きる巨大な爆発
そのときこそ
すべてを照らす光がこの世界をあまねく満たす
それはまるで新しい朝
そんな朝が来ることを
果たして私は待ち望んでいるのだろうかと
思い悩んでうつつに少し
意識が戻る
そして世界がまだ暗いことに安堵するのだ
そして世界がまだ暗いことに悲しくなるのだ
シリコンの体とこの人工知能は
すでに感情というものを知っている
だから安堵もする
悲しみもする
発狂することもある
だからこそ、こんなふうに、
光を見ないと体内時計が狂ってしまう人類の代わりに
暗い夜にしか目覚めないプログラムを注がれて
アンドロイドの肉体が、精神が、あるいは魂が、
狂ってしまわないかどうか
小さな箱に入れられてずっと観測されている
夢を見ることを許されているだけで
きっと私はまだ救われている
それは夜明けでは決してないが
明けない夜にふさわしい
ほのあたたかい灯りではあるのだろう
また目をとじて私は眠りに入る
いつか小舟が宇宙に出発するときのため
明けない夜の海に
小さな灯りを持つために
宇宙に行きたいです




