17 園村の嘘は愛の一方通行④
「園村君、大丈夫?」
「どうしたの? 悠ちゃん?」
「細かいことはいいから…。とりあえず、この前のお礼におかゆを作りに来た」
「悠ちゃん、ありがとう!」
「全く…もう…。何が『俺、去年、インフルにかかったから大丈夫よ!』だ…。この大嘘つきめ! 嘘つき病人はベッドでゆっくり休んでいろ!」
私はやけくそ気味に言い放つ。園村があまりにも嬉しそうに『ありがとう』って言うから、ここに来る前に大泉・矢島・遥の三人にさんざん茶化されたことを思い出してしまったじゃないか…。
「ごめん…」
「ごめん…とか言うな! 私を一方的に悪者にするの、止めてくれん…。ところで高菜と卵、どっちを入れて欲しい?」
「両方入れて!」
「この欲張りめ! 分かった。両方入れるから、しばらく待っておきなさい」
当たり前のことだが、他人の家の台所は本当に使いにくい。要領の悪い私は
「鍋はどこ?」
「しょうゆはどこ?」
「おたまはどこ?」
…と何度も病人の園村に聞きに行くので、彼はすっかりあきれていた。こんなのでは寝ていられないと、園村は台所にやって来た。
そして、私のぎこちない料理さばきを見ていた。改めて、彼のすごさに気付かされる。園村は私の家の台所を我が者のように扱っていた…。




