17 園村の嘘は愛の一方通行③
次に告白されたのは、馬術部の新人戦の後だった。あの時、彼は障害飛越競技で予想外の活躍をして、まさかの準優勝を獲得した。
その姿に思わずかっこいいと思ったが、間違ってもほれることはなかった。それなのに彼は懲りなかった。ただ、それで突き放すのはあんまりなので、準優勝祝いで一緒にごはんを食べに行った。
そんなささいなことなのに、彼はとても喜んだ。私にはさっぱり分からなかったが、これで丸く収まるなら安いものだと思った。
そして、今回のおかゆ騒動だ…。確かに体が弱っていたとは言え、彼の好意に甘えた私も悪い。しかし、インフルエンザにうつるかもしれないと分かっていながら、あえておかゆを作りに来た園村もずるい。
どう考えても、リスク覚悟でやったとしか思えない。しかも、万が一インフルエンザになった時も、園村は全く悪者にならない。周りから見れば、私が悪者になる。園村はきっとそこまで計算している。とんでもなく腹黒い奴…。
それなのに、私はそれを全く指摘することができない。もし、それを指摘しようものなら、とてつもなく冷たい人物のレッテルを貼られることだろう。
そんなことを考えているうちに、私は家に帰り着いていた。まあ、とりあえず、具材の調達をしないと…。
冷蔵庫を探していたら、実家から送られて来た高菜漬けがあったので、おかゆに高菜でも入れてみようかな? それとも、ここは無難に卵がゆがいいか?
あれっ、何ておかゆを作るだけで、こんなに悩んでいるんだろう。何か変だな…私。とりあえず、冷めたご飯と卵と高菜を持っていこう。調味料は向こうで借りることにしよう。
それから、またさっきみたいにブツブツ考えながら、十五分ほどすると、園村の家に着いた。もう、さっきから下らないことをあれこれ思い出してしまう私は本当に馬鹿だな…。とりあえず、ドアベルを押す。
「はい?」
全く、何のためらいもなくドアが開いた。園村には警戒心と言うものが全くないらしい。まあ、これが男と女の差だろう。




