17 園村の嘘は愛の一方通行②
「まあ、去年かかっていてもタイプが違えば、普通にうつるでしょうよ…」
「確か、私はN1H1型って言われた…」
「もし、園村が去年、B型とかA香港型にかかっていたとしたら、N1H1型の免疫はないからね…」
大泉がしたり顔で語り出す。まあ、確かにその通りである。だから、私はあの時、園村に対して、一度はうつしてはいけないから帰るように強く言ったのだ。
ところが、彼は去年インフルエンザにかかったから大丈夫と根拠のないことを言って、私のためにおかゆを作ってくれたのだ。
高熱でもうろうとしていたとは言え、きちんとした確認をできなかった私もいけない。まあ、今さら何と言おうと後の祭りである。
「まあ、そこまでして、悠ちゃんに愛情のこもったおかゆを作りたかったのね…」
「ちょっと、遥!」
「いや、それは遥ちゃんの言う通りでしょう!」
「ちょっと、イズミン!」
「これは東雲さん、園村のお見舞いにいかないとね…」
「もう、矢島まで…。何だよ…」
「あっ、もちろん、私達一緒に行けないから…」
遥がとどめの一撃を放つ。もうこの人達、一体何なの? さっきまでちょっとでも懐かしく思った自分を密かに後悔する。いっそのこと、この三人もまとめてインフルエンザにやられたらいいのにと本気で思った。
「はいはい。三人はまだインフルエンザにかかってないから、うつったら大変ですからね…。もう、いい!」
私は会室を勢いよく出て、一人で園村の家へと向かった。彼の家には夏に一回行ったことがある。前期の打ち上げをした時、大泉を除いた四人で集まった。そこで私は園村から初めて告白された。
あの時…いや、今も、私は彼のことを恋人として見ることができずに断ったが、別に嫌いな訳ではない。
むしろ、気心の知れた友人として、ずっと一緒にいたいぐらいだ。別に今のままでいいのに…。どうして、園村は彼氏と彼女の関係にこだわるのだろうか…。




