17 園村の嘘は愛の一方通行①
タミフルと園村の明太子がゆのおかげでようやくインフルエンザから回復した。それにしても熱が下がってから三日間は流行拡大を防ぐために大学へ行けなかったのは本当につらかった。
おかげで一週間も大学を休むことになってしまった。私は久々に天文同好会の会室へと向かった。いつ来ても、ここの会室は落ち着く。
「おやっ、悠ちゃん、久しぶり。やっと、元気になったのね」
「遥、ありがとう。おかげですっかり元気よ」
「悠ちゃん、園村特製明太子がゆは本当においしいよね。俺も前、体調を崩した時に作ってもらってね…」
「園村君って、本当に料理がうまいよね。夏に彼の家に行った時にもおいしいの、たくさん作っていたし…。私、彼みたいに料理がうまい人と付き合いたいな…」
「ちょっと、遥ちゃん、そんなことを言ったら、京極さんがかわいそうだよ…」
「もう、イズミンったら…。園村君には園村君のよさがあるし、春都には春都のよさがあるの! あっ、イズミン、もしかして焼いている?」
「馬鹿言うなよ!」
大泉と飯倉遥が入学した頃のように仲良く話しているのを見て、私は意味もなく、ホッとしている。かつて付き合っていたのに、お互いにすれ違って別れた。
それから絶縁状態の時期もあったと言うのに…。今はそれぞれ別々の相手とうまくやっているようで本当に何よりだ。
「おっ、東雲さん、やっと、元気になったんだね。よかった」
「矢島君、久しぶり!」
少し遅れて、矢島もやって来た。わずか一週間はなれていただけなのに、この場所が懐かしく思えたほどだ。それにしても、園村がやって来ない。どうしても、一言お礼を言いたいのに…。
「園村君はどうしたの? 今日は馬術部?」
「何言っているのよ。園村君は誰かさんにおかゆを作りに行ったせいで、インフルエンザにかかったの。一昨日からお休みよ」
「えっ、マジで?」
「悠ちゃん、本当に知らないの?」
「うん、今、初めて聞いた。それにしても、あいつ、嘘つきやがって…」
「えっ、どう言うこと?」
矢島が尋ねて来たので、私は園村がおかゆを作りに来た時のことを事細かに話した。特に去年インフルエンザにかかったから大丈夫って所は強調しておく。矢島がすかさず口を挟む。




