16 12月のインフルエンザ①
十二月に入った。あとしばらくしたら、クリスマスや正月がやってくる。大きなイベントが目前になると、にわかにカップルが増える。
飯倉遥は秋桜祭をきっかけに知り合った同じ学科の先輩と付き合い出したと、嬉しそうに教えてくれた。私は少しばかりうんざりしながらも、楽しそうに話す遥にホッとしていた。何でも、秋桜祭実行委員をやる中で意義投合したらしい。
遥と付き合う相手は年上が合っているように思う。ああ見えて、彼女にはまだまだ幼くて未熟な一面がある。同級生ではぶつかり合って壊してしまうが、二つ上の先輩ならうまく包み込んでくれるに違いない。
私は学科の人間関係に疎いので、遥の付き合っている相手の名前を知らなかった。大泉が京極さんのことをよく知っていたので、いろいろと教えてもらった。
何でも、今回の学園祭で生物資源科の出店で実行委員長となって、出店をうまく統括した人らしい。それだけでなく、夜は舞台でバンドを披露しているとのこと。普段から人望があり、男気あふれる人であるともっぱらの評判である。
あの大泉がこれほど心酔する人とは相当な人物に違いない。そりゃ、女性にもてるだろうよ…。遥には今度こそ、うまくいって欲しいものである。
大泉も学園祭巡りに巡りを重ねた結果、どこの大学か忘れたが、よその大学の人と付き合い出したと言っていた。彼の場合、飽きっぽい所があるので、飽きることなく相手を一途に思い、大切にして欲しいものである。
もし、別れることになったとしても、変なトラブルになることがないように祈るばかりである。間違っても、浮気のたぐいはごめんだ。もう二度と、恋愛がらみのトラブルの仲裁などしたくない。
そして、驚くべきことに…矢島にも彼女ができたらしい。これは大泉と学園祭巡りに巡りを重ねた結果だが、それでもあのアイドルオタクの矢島論である。大泉から初めて話を聞いた時には、にわかに信じ難かった。
話によれば、某大学に名前を失念してしまったが、どこかの秋葉系のアイドルが来ていたらしい。もちろん、その時に矢島はオタクらしく熱く応援していたので、大泉は距離を置いて遠巻きに眺めていた。そこで偶然、アイドルのことについて尋ねられた矢島が女性に対して、豊富な情報を教えたとのこと。
その女性が女性にしては珍しく女性アイドルの追っかけをしており、まさかの意義投合。こんなことは二度とないだろうと、大泉が適当な口実を作って先に帰ったことが吉と出たようで、二人はそのまま付き合い出した。…と、大泉が熱く語ってくれた。矢島はそれを聞いて、耳まで真っ赤にしていた。
まあ、それにしても、みんな、そろいもそろって、青春しているものである。そのおかげで、天文同好会の会室でのネタに困ることはない。
かえって、天体観測に行きそびれてしまい、本来の活動ができずに困っているほどだ。四谷さんや平尾さんが卒論で忙しくて来られないので、私達だけでやりたい放題やっている。こうなると、さすがの私だって、恋したらどうなるかな…なんて柄にもなく考えてしまう。




