14 秋桜祭⑥
「悠ちゃん、園村君のこと、どう思う?」
「平尾さん、急にどうしたんですか? 薮から棒に…」
思わず、望遠鏡に頭をぶつけるところだった。平尾さんから望遠鏡を覗くように言われたので、交代してしし座流星群を見ていた。
ああ、流星群がきれいだな…と見とれていた時に、突然不意打ちを食らったので全く対応できずにいた。 不器用な人間はこれだから嫌になる。
「私がこんなことを急に聞くのは意外だったかな…」
「いえ…」
「そう。だって、園村君があまりにも悠ちゃんに一途だから、もう私、見てられなくて…」
「そ、そんな、止めて下さいよ!」
本当に止めてほしかった。こんなの私の知っている平尾さんではない。しかし、慕っている先輩故に無下にもにできない。
「で、正直なところ、どうなのよ?」
「えっ?」
「えっ…じゃないよ。園村君と、どうするの? 付き合うの?」
「いや、それはないです。もう既に二回も断っているので…」
まさか、平尾さんとこんな話をすることになるとは思わなかったので、私は完全に面食らっていた。この方は天体の事以外には全く興味を持たないと思っていたのに…。やっぱり、この人も年頃の女の子か…。
「もしかして、密かに思い続けている人でもいるの?」
「いや、特にいませんけど…」
「それなら、園村君のことをどうして断るの?」
「恋人として…見る事ができないからです」
「何か、もったいないよね…。それって、この夜空でこんなに星が美しく輝いているのに、望遠鏡で覗く事もなく、東京では星なんか見えないと言っているようなもんよ! 相手から付き合って欲しいと言われているのなら、少しぐらい相手に歩み寄ってもいいと思うけどな…。そうすれば、新しい発見があるかもしれないよ」
こんな話をする時でも、夜空に例えて話すのは平尾さんらしい。そうやって話すってことは、彼女もかつてこのような事があったのだろうか?
私は思い切って、平尾さんに尋ねてみることにした。話題をふって来たのは向こうである。向こうからふって来て、答えをはぐらかすことはないだろう。




