14 秋桜祭⑤
昼間に必要最低限の仕事を済ませた後、私は天文同好会の会室へと向かった。よく見ると、秋桜祭の雰囲気に馴染めず、サークル棟に逃げて来た者もちらほらと見られる。
人付き合いが苦手な者にとって、学園祭のたぐいなんて苦行に過ぎない。慣れない接客をして、私はもう限界だった。
それでも、大泉や飯倉遥の配慮のおかげで、昼のかき入れ時の三〇分ほど以外は、ずっと奥できなこもちや水あめせんべいを作っていたにも関わらず…。やはり、知った顔であったとしても、一緒に作業をする以上は気を遣う。また、園村が
「俺は作るよりも受付がやりたいから!」
と売り子と制作を変わってくれたおかげで昼からの受付をせずに済んだにも関わらず…。それにしても、園村って、本当にいい奴だな…と改めて思った。もちろん、それと恋愛感情は別であるが…。
「悠ちゃん、もう来ていたのね」
「あっ、平尾さん。私もさっき来た所です」
私は平尾さんが来たことに気付いて、ソファーから立ち上がって挨拶した。それから、手短に望遠鏡を運ぶ準備をして、二人で一緒に平尾さんの家へと向かった。平尾さんの家は△△駅からしばらく入った高台にあるとのこと。
東京にしては珍しく、緑に囲まれているために周りが暗くなっている。そのため、東京近辺で夜空を見る穴場となっている。住むには結構不便だが、平尾さんは、夜空がよく見える場所であったこの高台をわざわざ選んだらしい。
この方は本当に夜空が好きなんだと、改めて思い知らされる。そんな事を考える私に構う事なく、平尾さんはてきぱきと望遠鏡の組み立てを進めていく。
やがて、望遠鏡の組み立ては終わり、空はすっかり暗くなっていた。早速、平尾さんはしし座流星群を探す。私はぼんやりと夜空を眺める。




