14 秋桜祭①
十月も後半に入り、大学は学園祭シーズンを迎えていた。六本桜大学も学園祭である「秋桜祭」一色になり、話は模擬店や出し物のことで持ち切りである。また、他校の学園祭巡りをして楽しもうとする輩も男女問わずに多い。
そんな中で、生物資源科では毎年有志が「水あめせんべい」と「きなこもち」の模擬店を出しているらしく、大泉と遥はそちらの実行委員になっていた。やっぱり、二人は根っこからの祭り好きである。
私はそう言うのが苦手なので、当日に店の手伝いを申し訳程度にしてごまかすつもりでいる。それでも普段あまり話をした事もない人からも
「ちょっとでいいから、出店の準備を手伝ってくれない?」
と言われる始末だ。さらに、二年生や三年生とすれ違った時にも
「あなた、資源科の一年生よね。学祭準備よろしく!」
…なんて通りがかりに言われるほどである。それにしても、どうして、こんな面倒なことをみんな楽しそうにできるのか不思議である。
私は自分がやりたいと思う事は、はまってやる方だが、やりたくないことは例え義理であってもやりたくない性質である。
大泉や遥のように、こう言った事を楽しめる人は楽でいいな…と思わずにはいられなかった。大泉や遥ほどでなくても、せめて、矢島のようにうまい案配で折り合いがつけられる人や、馬術部が忙しいのにうまいこと合間をぬって、律儀に顔を出す園村のようになりたいものだ。
分かっているのに、一人天同の会室で無駄な時間を過ごしている。最近は会室に置いてある会報には、ほぼ目を通し終えたのでただぼんやりと過ごす事が多かった。




