13 秘密基地、手に入れました①
十月に入り、長かった大学の夏休みも終わった。そして、六本桜大学にも再び学生が戻って来た。これまでサークルや部活をやっている人だけが細々と大学にやって来る程度だったが、朝から大学に学生の大群が押し寄せる。
特に火曜日と金曜日の朝と木曜日の昼は共通教育過程必修の英語や第二外国語とか、学部基礎科目とかがあるので、全学部の一年生が共通教育棟に集まるから本当に大変である。そんな日々の中で一日の講義が終わったあとに、天文同好会の会室に顔を出すのが、私達の密やかな楽しみとなっている。
後期が始まってから、卒論に追われているのか、四谷さんも平尾さんも会室にほとんど顔を出さなくなり、早くも私達だけの秘密基地と化していた。
この日は珍しく、馬術部の練習がなかったようで、園村も早い時間から会室にいた。五人が一同を会していると、天文に関する話はほとんどしないのに、実にいろいろな話題が飛び交う。
「俺、新人戦のレギュラーに選ばれたんだぜ!」
「マジで? 園村、何気にすごくない?」
大泉が目を輝かせながら、園村に近づいて、あれこれ聞いている。いろいろあって、しばらく会わない時期もあったのですっかり忘れていたが、彼は何でも首を突っ込むし、何でも興味を示すエネルギッシュな人だ。
面白いと思えば、元カノがいることも気にせず、天文同好会に入れてくれと平気で頼む人だから、全く遠慮をしらない。それが大泉のいい所でもあり、悪い所でもある。
「ところでさ、馬術部の大会って、どんなことをやるの?」
「確かに矢島君の言う通り、私も気になるなあ…」
「だったら、みんなで見に来いよ。今回は都大学連合主催だから、大東京農大が会場なんだ。大東農なら、ここから近いだろう?」
「それで、何をやるの? 何も分からずに、見に行こうとはさすがに思わんし…」




