12 秋のお月見会①
園村や大泉の天文同好会入会騒ぎの間に、九月も終わろうとしていた。九月が終われば、十月から後期の授業が始まる。
夏休みに入る前は、二ヶ月の夏休みなんて長過ぎるな…と思っていたが、一ヶ月を実家で、もう一ヶ月を東京で天文同好会のことや新しいバイト探しなどで動いていたら、あっと言う間に終わりそうだ。あとは九月三〇日の中秋の名月を残すだけである。
そこで遥と二人でお月見会の準備をしていた。本当なら一年生の五人で進めないといけないのだが、大泉と矢島はバイトで、園村は馬術部で忙しいため、遥と二人で進めていた。
この日は遥も私もバイトはなかった。結局、私は遥に勧められて、大学近くにあるユニクロのバイトを一緒にする事にした。
「あら、悠ちゃん、遥ちゃん。お月見会の準備ありがとう。私も手伝うからね」
そう言って、平尾さんが慣れた手つきで仕事を進めた。慣れないゆえに、二人ではあまりはかどらなかった仕事が、すごい勢いではかどっていく。おかげであっと言う間に準備が終わった。
「よし、たまには女の子だけでごはん食べにでも行こうか? おごるよ!」
「えっ、いいんですか? 平尾さん…」
「もちろんよ、悠ちゃん。悠ちゃんと遥ちゃんのおかげでお月見会の準備が早く終わったんだから…。今までは一人でやっていたからね。四谷君は全く手伝ってくれないの」
「平尾さん、これまで後輩入って来なかったんですか?」
「遥ちゃんは四月にいなかったから分からないと思うけど、新歓の頃は結構物珍しさに集まるの。でも、ほとんどが全く続かないのよね…。九割以上が名簿だけの幽霊会員だし…。悠ちゃんは分かるでしょう?」
「あっ、はい」
グキュルルルルー。あっ、しまった…。とっさに私のお腹が大きく鳴った。それを聞いた二人がクスクスと笑い出した。
「もう、悠ちゃんったら…。平尾さんの前なのに…」
「だって、仕方ないじゃない。お腹空いたんだから…」
「そうよね。私もお腹空いたぁ。さあ、悠ちゃん、遥ちゃん。さっさと行こう!」
平尾さんはそう言って会室を出た。私達もそれに続く。大学キャンパスを出てすぐの所に、某ファミレス店がある。私達三人は迷う事なく、そこへ向かった。




