2 偶然の出会い①
それにしても、こんなことってあるのだろうか。道に迷って、偶然出会った三人が私と同じ学科の新入生だなんて…。四人でそのまま入学式の後、大学へ戻ることとなった。農学部生物資源学科のオリエンテーションが午後二時からあるのだ。
「東雲さん、出身はどこ?」
「私? 熊本ですけど…。大泉君だっけ?」
「そう、僕、大泉」
地下鉄の中で、思わず失笑した。他の二人も苦笑している。
「三人とも仲がいいよね。やっぱり、地元が同じで、昔からの顔なじみなんでしょう?」
「全然違うよ。入学式に向かう途中で、偶然出会ったんだよ。だから、四人とも今日が初顔合わせ」
ここで誰だっけ?…ああ、思い出した。園村が入り込んで来た。大泉ほどではないが彼もよくしゃべる。それに引き換え、メガネの…矢島は未だに自己紹介した時の一回しか言葉を交わしていない。二人と違って、またずいぶんと内気な奴だな…。
話によれば、まず矢島が一人で歩いていた所に、大泉が声をかけたらしい。二人が歩いていた所に園村が加わったようだ。そして、三人が歩いていた所に、私が突然通せんぼしてきたので、東京には変な人がいるものだなと思ったとのこと。
「多分、出会った順番が良かったんだろうね。最初に歩いていたのが、矢島君じゃなかったら、四人が一緒にはならなかったかも…」
「そんなことはないよ」
「じゃあ、俺が最初に歩いていたとして、お前は俺に声をかけていただろうか?」
「うう、それは…」
矢島は男同士であれば、まだ話せるらしい。それにしても、話し振りからしてずいぶん弱々しい。そんな矢島を見て、私も大泉と同じことを思った。
「私だったら、一番だろうと最後だろうと、声をかけていたけどね」
「それは東雲さんが道に迷っていたからだろう? 実を言うと僕も少し道に迷っていた。それで近くを歩いていた二人に声をかけたって訳ばいね」
「園村君はどこ出身? 多分、九州よね?」
話し振りを聞いていると、九州のなまりがあるから、福岡か熊本辺りか勝手に思った。
「その通り、僕は福岡出身ちゃんね。そして、先に言っておくけど、俺、一浪しているから…」
私は思わず『兄さん!』と心の中でつぶやいてしまった。他の二人も同じようなことを思ったに違いない。ちなみに残りの三人はみんな現役だった。
「俺は静岡。地元なのは矢島君だけだよ」
矢島が黙って頷く。そうか、それなら、この順番で出会っていなかったら、矢島はここにはいなかっただろう。大泉の言うことも最もである。そして、きっと大泉も道に迷っていたに違いない。
そうでなかったら、大泉が矢島のような奴にいきなり声をかけるとは思えない。つまり、矢島を除いて、私達は道に迷ったことで出会ったことになる。