10 都天文連合合宿⑤
この日を境にして、四谷さんと平尾さんが会室に来る回数がほぼ毎日から週一ペースに減ってしまった。かわりに、私達一年生が我が物顔でこの会室を使うようになる。
天文同好会なのに、ほとんど天体を見る事はなかった。たまに平尾さんが会室に顔を出された時に、少しばかり夜空を一緒に眺める程度であった。
「へえ、そいつはいいな…。大学の中に秘密基地を作ったみたいだ。俺も入れて欲しかな…」
「だめよ、園村君はもうすでに馬術部に入っているでしょう?」
「ちえっ、東雲さんは冷たいな…」
「別に掛け持ちでもいいんじゃない?」
「ちょっと、矢島君。勝手な事を言わないで…」
「飯倉さんも冷たいな…。俺だけ仲間外れかよ…」
「東雲さん、飯倉さん。園村も入れてあげようよ。確かに四谷さんの話では大学に出す名簿にたくさん名前があった方がいいんだろう?」
「そうね。じゃあ、掛け持ちでもいいよ…」
私は半ば投げやりに言い放った。もともと、矢島を誘った時点で、こうなる事は分かっていた。矢島と園村はすごく仲がいいのだから…。
矢島が園村に天文同好会のことを話す事も、それを聞いた園村が入れてくれと言いに来る事も分かっていた。別にサークルや部活を掛け持ちしてはいけない決まりもない訳だし、遥もそうなる事を分かっていたようである。
こうして、私達四人はもうすぐ四年生のいなくなる天文同好会にうまいこと収まり込んだのである。もっとも、園村はほぼ毎日のように馬術部の活動があったので、そんなに毎日は顔を出す事はない。しかし、そのわりには私達三人よりもマメに顔を出すので、どうなっているのかと密かに思った。




