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狩人と農夫と獲物  作者: あまやま 想
第10章 都天文連合合宿
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10 都天文連合合宿②

 当日は誰一人遅刻する事なく、予定通り出発する事ができた。まあ、天文同好会は活動の都合上、時間の正確さが求められるので時間にルーズな人はいない。


 時間にルーズな人は自然と排除されるに違いない。四谷さんの運転する車は同好会で借りたレンタカーだが、このお金も同好会の活動経費から出ているらしい。人数が少ないから、大学からの補助だけで活動が成り立つと四谷さんが教えてくれた。


 奥秩父キャンプ場に着くと、四谷さんも平尾さんも慣れた手つきでバーベキューの準備を始めた。遥も私も先輩達の足を引っ張らないように手伝った。


 他にも大東京大学、遅田大学、天平大学の天文同好会もバーベキュー大会の準備に取りかかっている。四校合同なので十五人もいる。いつもだと、三〜四人しかいないから、十人足らずが集まっただけでも不思議な感じがする。


 夕方六時になるとバーベキュー大会が始まった。都内にあるほとんどの大学天文同好会が一同に会している。


 今ここに、天体観察に興味や関心をもつ者が八〇人も集まっていると言う事実。これが驚かずにいられようか…。中には私みたいのもいるだろうけど、この中には平尾さんみたいな人がたくさんいるだろう。


 夜になると、ブルームーンを見るために双眼鏡や望遠鏡、望遠カメラなどを構えている天文同好会のメンバー約八〇人の姿は実に壮観であった。ブルームーンとは同じ月の二回目の満月を言う。


 この年の八月は二日と三一日の二回満月であった。ブルームーンはだいたい二〜三年に一度やってくる。別に同じ月に二回満月が見られる事自体は天文同好会的には何も意味はない。しかし、この時期は空が一年で最も澄んでいる時期なので、月や星の観測にもってこいの時期なのだ。


 しかも、今回は月が地球にいつもよりも接近しているので、いつもよりも大きく見える。このように月を観察する条件が整っていた。


 逆にこのような日は星を観測するのに最悪である。月が明るいので、暗い星が見えなくなるのだ。星を見るなら、新月の夜が一番いい。これは私が天文同好会に入って初めて知った事である。


 気付いたら、遥も私も月にのめり込んでいた。奥秩父の街灯のない夜空、初秋のどこまでも澄んだ空、いつもよりも大きくはっきりと輝く月。


 いつも見ている月も条件さえそろえば、こんなに素晴らしく見える事を知れただけでも本当によかった。あまりにも身近過ぎて、月をじっくりと見る事なんてなかったから…。

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