1 全ての始まり③
「あれっ、もしかして、六大…六本桜大学の新入生ですか?」
さっき、どこの駅かと聞いてきた男が聞いてきた。ふと見ると、彼の手には六本桜大学の封筒があった。私はうまく声の大きさを調整できず、ぎごちない声で
「ありがとうございます!」
と言って、拾ってもらった封筒を素早くひったくる。そして、ぶっきらぼうに頷く。他の二人が拾ってくれた物も、同じようにひったくる。ああ、自分が嫌になる。御所浦に帰りてー!
「もしよかったら、一緒に入学式の会場へ行きませんか? 僕らも六大の新入生なんですよ」
「いや、今さら行っても、もう遅いですから…。それに何か面倒くさくなっちゃって…」
「いやいや、一生に一度しかない大学の入学式ですよ。ここで会ったのも何かの縁ですし、せっかくだから一緒に行きましょうよ。なあ、園村君、矢島君」
どっちが園村で、どっちが矢島かよく分からないけど、二人は頷く。そして、さっきからよくしゃべる男は自ら大泉汀だと名乗った。
流れに逆らう訳にはいかない。私も東雲悠と名乗った。すると、園村圭助と矢島諭も名乗った。とりあえず、メガネをかけているのが矢島だと覚えた。
そして、三人は再び歩き出した。仕方ない…。一緒に会場へ行こう。今の私は一人で東京の街を進むことも帰ることもできないのだから…。それにもともと入学式に出るつもりでいたのだから、初志貫徹できて良かったと喜ぶべきだろう。
それに多分、この三人と会うのは最初で最後だろう。そうでも思わないと、とてもじゃないけど、三人の前で平然としてられない。