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狩人と農夫と獲物  作者: あまやま 想
第9章 天草への帰省
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9 天草への帰省①

 天草下島に夕日が沈む。不知火海を眼前にしながら見る夕日は、コンクリートジャングルの東京ではまず見られない。


 この景色がお金に変えられない貴重なものであると、東京に出てから初めて知る。今まで、三人の兄達が御所浦を離れてから、久々に戻ってくると実に名残惜しそうに毎日夕日を眺めていたのを不思議に思っていた。


 今なら、どうして眺めていたのかよく分かる。子ども達はスプライトや三矢サイダーなどを、大人はビールやジントニックなどを飲みながら見ると、また格別である。家から歩いてすぐの所に海があって、本当によかったと思う。


 今、二九歳の一番上の兄・貞男も、二七歳の次兄・頼秋も、二五歳の末兄・春吉も学生時代は同じことをしていた。


 今は三人とも御所浦を離れた遠い地で仕事していて、めったに実家に戻って来ない。長兄は既に結婚していて、男の子どもが一人いる。あとの二人はまだ独身だが付き合っている相手はいるらしい。私の男性観はよくも悪くも年の離れた三人の兄の影響が大きい。


 兄達を見て育ったから、どうしても、同級生の男の子が幼く見えてしまう。仲良く遊ぶことはできても、異性として付き合うことは考えられない。そんなことは園村には一言も言わなかった。


 まあ、言ったとしても、分かってもらえるとは思えないが…。私は少なくても末兄よりも年上でないと好きになれないような気がしている。


 何でもない日はただほんやりと海を見たり、地元の友達と本渡まで渡って遊んだりした。御所浦島は本当に小さな島で何もない。


 かつてはあった町役場も合併で市役所支所になってからは、島で公務員として働ける人も数えるほどしかいない。島民のほとんどは漁師か魚肉加工工場勤めかのどちらかである。


 うちの親も父が漁師、母が工場のパートをしている。ただ。誰も後を継いでくれそうもないので、父の代で漁師の家業は途絶えるだろう。


 実家に戻って来てから、一週間は全てが久々で楽しかったが、だんだん刺激のない生活に嫌気がさして来た。そこで本渡に再び渡って、天草高校時代の友人と再会した。さすがにお盆を前にすると、多くの人が帰省して来るので、高校卒業以来、初めて会えた友達も多くいた。

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