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狩人と農夫と獲物  作者: あまやま 想
第8章 傷心の遥
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8 傷心の遥①

 スタバでの一件の後、遥は大泉と一緒にしていた居酒屋のバイトを辞めた。大泉の気持ちが完全にアイカ先輩に傾いていて、どうにもできないことがようやく分かったらしい。


 大泉にも申し訳ない気持ちがあるのか。遥が私達と一緒にいる時はまず近づかなかった。いや、近づけないのだろう…。そんな訳で、この頃は遥を加えた四人で行動することが多くなっている。


「ああ、大泉の奴、本当に腹立つ! それにしても、旅行に行くつもりで貯めていたバイト代…どうしようかな?」


「遥、いくらぐらい貯まったの?」


「一ヶ月半で仕事を辞めたから、五万ぐらいしか貯まってないし…。悠ちゃん、意外とめざといとね…」


「飯倉さん、そのお金でパアーと飲もうか?」


「園村君ったら、未成年なのにダメよ。…って、君はもう成年だから飲んでいいのか…。まあ、一人で飲むのは勝手だけど、みんなを巻き込まんで。それにこれは私のお金よ!」


「よし、そのお金でAKB東京ドームツアーのチケットを四枚買おうか!」


「おい、矢島! もう、この人達、何…。もう! 傷心の人をよってたかって…」


 七月末には前期の試験がある。一時期は話をかけられないほどふさぎ込んでいた遥だが、ようやく軽口が叩けるようになってきた。


 私は本当にホッとしている。スタバでは突き放すようなことをしてしまったが、実はずっと心配でたまらなかった。それにしても、大泉は本当に最低な奴である。スタバの一件以来、彼とは全く話していない。


 いくら、恋愛は二人で作り上げるものと言っても、あまりにも一方的な別れであった。もともと、彼にはそう言う気質があったとしても、とても許されたものではない。


 スタバでは二人の甘い考え方に思わず切れてしまったが、今思うと本当に大人げない行動だったかもしれない。


 一方的に捨てられた遥のことを思えば、もっと積極的に遥の味方になってもよかったと今さらながらに感じる。何であんな中立な立場で、あの場に臨んでしまったのか?


 いくら、恋愛がどうなろうと、自己責任と言っても、あんまりだったかも…と、試験勉強の合間に反省した。


 そう言う意味では、園村はきっちりと自分の仕事をこなしていた。本心はどこにあったのか知らないけど、どう考えてもかばいようのない大泉を適切にフォローしたのだから…。

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