7 夏の負け戦④
「実はさっき、ここに来るまでにイズミンと話していたけど、二四時間ずっと束縛されるのはつらいって話していたんだ。それにイズミンは引っ張るよりも引っ張られるタイプだと思うな…」
「何、それ? そんなの都合良すぎでしょう? 愛していれば、常に相手のことを知りたいし、常に一緒にいたいと思うのは当たり前でしょう。そうでなかったら…、愛していないのと同じよ!」
園村が大泉を助けると思わなかったので、かなり意外だった。それにしても、男と言うのはそんなに自由奔放でわがままなのか? そりゃ、遥が反発するに決まっている。
「ねえ、悠ちゃんも何か言ってよ…。悠ちゃんは私の味方じゃないと? お願い…。何か言って…」
いつの間にか、遥の矛先が私に向かっていた。確かに、園村は大泉の味方をしたが、そのような言い方をされてはこっちもたまらない。何となく、大泉や園村の言うことも分かる。
それにしても、遥って、こんなにネチネチとした人だったかな…。よく分からんけど、きっとこう言う一面もあったのだろう。だから、今はこんなことになっている。私はこんな風になった彼女を初めて見た。
「大泉君、とりあえず謝ろう。どんな理由があっても、遥を裏切ったのは確かだからさ。その上でこれから二人がどうするか考えよう。大泉君が反省して、これからも二人の関係を続けるのか? それとも、どうにもならずに別れるのか? それを二人で考えないといけない。二人とも園村君とか私に甘えたらダメ!」
そう言うと私は静かに立ち上がった。三人を残して、一人だけ凛とスタバを出る。やっぱり、こんな話をするのに、人に頼ったらダメだ。表現は悪いけど、自分のケツぐらい自分でふけ!…と思った。
全く、あきれてモノが言えないよ。こんなことに巻き込まれるのは、もう二度とごめんである。
その後、大泉は遥に対して、自らの非を詫びたものの、遥の望むような結果にはならなかったようである。恋愛なんて、両方の思いが一致しなければ、いども簡単に崩れ去ってしまう。どんなに片方が愛して止まなくても、もう片方の熱が完全に冷めていたら、関係を維持できるはずがない。




