7 夏の負け戦③
次の日、矢島を除いた大泉・園村・飯倉遥・私の四人がスタバの同じテーブルについた。遥が二人だけで話し合えないと言うので、私が間に入って話を聞くことにした。
すると、大泉はそれでは一人で責められるだけだと言って、園村を無理やり同席させたのである。面倒くさいったら、ありゃしない。矢島は
「僕はそう言うのは苦手だし、興味ないから…」
と言って、一人だけ逃げた。そう言うことが許される矢島のキャラとポディションがうらやましい。
そもそも、この話、どう考えても一方的に浮気した大泉が悪い。もちろん、遥には全く非はない。こんな話に半ば強引に巻き込まれた園村を同情する。
そして、私も同情して欲しいぐらいだ。ところで、園村はどうやって大泉をかばうつもりなのか? どう考えてもかばいようがない。
「どうして、そんなことをするの? 汀が嫌と思っていることは全て直すから…。お願いよ! そんなこと止めて…」
遥がいつになく弱気な発言をする。こんな調子では始まる前から勝負が見えている。恋愛なんて、いつだって追いかける側が弱くて、追いかけられる側が強い。
一方的に追いかけられる状態になった地点で、恋愛関係はすごくいびつな形になる。スタバの喧噪の中で、長いようで短い沈黙が幾度となく続いた。スタバのカプチーノって、こんなにまずかったかな…と思えるぐらいに苦痛の時間だった。
「そう言うのが…嫌なんだよ。遥はいつもがんじがらめに俺をしばりつける。デートではいつもプランを考えていないと不機嫌になるし、メールはすぐに返信しないと怒るし…」
「そんな、私…」
遥が堪えきれずに口を挟もうとしたが、大泉はそれを遮るようにそのまま話し続ける。
「電話で毎日一時間は話さないと次の日会った時に不機嫌になる…。俺はそんなできる男じゃないのに…。要求が高すぎるんだ。もう、俺には無理なんだよ」




