7 夏の負け戦②
そして、泣き出す遥…。園村と矢島は遥のただならぬ雰囲気を感じ取って、こっそりと素早く帰ってしまった。
まあ、それはそれで正解である。時には女だけで話したい時もある。ただし、それは話す側だけであって、話を聞かされる側はたまったものではない。やっぱり、私は薄情な女なんだろうか?
こんな時は私も男になれたらいいのにと思ってしまう。私は女でありながら、女性特有のドロドロした人間関係が本当に嫌いである。苦手だよ。マジで…。
アイカ先輩と言うのは、大泉と遥の通うバイト先の先輩のことだ。居酒屋で働くフリーターの先輩で、三歳年上の22歳である。
身長が152センチで少しぽっちゃりとしているのにペチャパイの遥と違って、アイカ先輩は身長が161センチですらっとしているのに胸とか尻とかの出る所はきっちり出ている、大人の女性と言った感じの人らしい。
よくも悪くも、遥と正反対のタイプであろう。157センチの中肉中背の私はどっちつかずで、どうアドバイスをしたらいいか全く分からなかった。
もともとアドバイスなんて気の利いたことはできないが、せめて遥が楽になれそうな一言ぐらいは言ってやりたかった。しかし、全く思いつかなかった。
思うに、この戦い、もう既に負けているような気がしてならない。さっさと白旗を上げて、さっさと撤退するのが一番傷つかない。…なんてことは口が裂けても言えないが…。
「とにかく、もう一度、二人で話し合ってごらん。もし、二人だけで難しいなら、私も間に入るけんさ…」
これが私に言える最も気の利いた言葉であったと思う。これでとりあえず、遥に対する義理を果たしたことになるだろう。遥は言いたいことを気が済むまで言って、ようやくすっきりしたのか、
「悠ちゃん、今日は本当にありがとう!」
と、言って足早に去って行った。