7 夏の負け戦①
七月に入るとそろそろ夏休みが見えてくる。大学の夏休みはなんと…八月と九月の二ヶ月間もある。私は何よりも先に実家へ帰りたかった。
東京での生活は常に刺激的で楽しいけど、休まる暇がなくて、すぐにクタクタになってしまう…。大学一年生の前期だからだろうか、常に新しい人との出会いが続いて、精神的にかなり疲れていた。
ああ、早く実家に帰ってから、御所浦島から海を眺めたい! そして、海に沈む大きな夕日を見ながら、疲れきった心を癒したいものである。
「ちょっと、悠ちゃん、聞いとると? 私、汀のことを信じていたのに…。これから、どうしたらいいと?」
七月に入ってから、飯倉遥が大泉汀のことで、私に相談するようになった。そんなことは二人だけの問題だし、私に相談されても、私は何の力にもなれないのに…。彼女は一方的に話し続ける。
まあ、話すことで少しでも楽になるのならいいけど…。だったら、私に助言を求めるのは止めて欲しいのである。どうせ、言っても聞かないんだから、言うだけ無駄なんだ。
それにしても、大泉と付き合うのであれば、遅かれ早かれ、このようなことになるのではないかと思っていた。それほど、大泉は軽薄…もとい、フットワークのかなり軽い男である。
「遥はどうしたいの? イズミンと別れたいの? それとも、やっぱり別れたくないの?」
「そんなの、別れたくないに決まっとるでしょう」
「だったら、イズミンを信じるしかないね…」
「えっ、今さら何を信じればいいと? 私、目の前でアイカ先輩と汀がキスする所を、この目で見てしまったもん…」