6 梅雨空とAKB②
六月も中旬にさしかかり、東京もすっかり梅雨空の毎日である。こうなったら、天体観測なんてできるはずもない。おのずと、私の足は自然と天文同好会から足が遠のいていった。
そうなると、自然と園村と矢島の三人で過ごす時間が増える。雨が降って活動できないのは馬術部も同じである。大泉と遥は時々一緒に過ごすこともあるものの、普段は二人っきりでいるのも相変わらずであった。
私は三人でいる限りは安心して過ごすことができた。ただ、常に園村と二人っきりにならないように用心していた。矢島はAKBおたくであり、内弁慶であることを除けば、実に優れた常識人である。
矢島は前田敦子のいないAKBには一切興味がないから、八月の東京ドーム公演が終われば、AKBなんてどうでもよくなるだろうと、この頃よくつぶやく。前田敦子は八月にAKBを卒業して、女優になるらしい。
「それなら、ソロになった後、あっちゃんだけ応援すればいいでしょう?」
「いや、ソロになったあっちゃんなんかに興味ないね。僕はAKBのあっちゃんしか興味ないんだよ。それがファンのこだわりってもんでしょう!」
「そう言うものかな…。私にはちょっと分からんな…」
「俺もそう言うのは分からん。何であろうと、あっちゃんはあっちゃんだろう?」
「二人にこんな話をした僕が、馬鹿だったよ…」
そう言うと矢島が急に落ち込んだので、園村も私も、どう声をかけていいのか分からずに途方に暮れてしまう。そして、矢島はバイトの時間だからと言って、一人で勝手に帰ってしまった。それで私も慌てて帰ることにした。いつも、一人だけ残される園村…。彼は一体何を期待しているのか。