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狩人と農夫と獲物  作者: あまやま 想
第5章 2012年の天体ショー
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5 2012年の天体ショー①

 二〇一二年は天体ファンにとっては極めて特別な年である。五月二一日の朝、私はいつもよりもずっと早起きして、天文同好会の部屋へと向かった。


 会長の四谷さんを中心に、私を含めた十人のメンバーで金環日食の瞬間を待った。これほど観察条件に恵まれた金環日食は千年に一度ぐらいしかないらしい。


 まず東京や大阪、名古屋など、太平洋側を中心とした広いエリアの大都市で見ることができること。これは日本総人口の三分の二にあたる約八三〇〇万人の生活圏で金環日食が見られる。


 さらにこれほど広範囲で見られるのは一〇八〇年以来実に九三二年ぶりの出来事である。期待は高まる一方だ。…と、テレビに出ていた天文学者が宣っておられた。


 日食の記録を撮るために写真を撮る人もいたが、私はただ日食グラスをつけて、空を見上げただけである。食は午前六時十九分から始まっているらしいが、素人には全く分からない。


 午前七時二〇分を過ぎると急に空の暗さが増した。午前七時三四分三〇秒、待ちに待った金環日食が始まった。わずか、三分三〇秒足らずであったが、天空には大きなリングがキラキラと輝いていた。


 日食グラス越しの天体ショーに思わず息を飲んだ。これが見たいがために、私はわざわざ天文同好会に入ったのである。やがて、金環日食も終わり、外が少しずつ明るさを取り戻して来た。


 午前七時五〇分を過ぎると空はいつもと変わらぬ明るさになった。しかし、食が完全に終わるのは午前九時二分である。八時頃にはほとんどの人は会室に引き上げていた。


 ちなみに会室とは天文同好会の部屋のことである。それにしても、四年生の平尾さんはすごいな…。彼女だけは食が完全に終わるまでずっと写真を撮り続けていた。


 もちろん、千年に一度の天体ショーであったので、同好会のメンバーでなくても、多くの人々が金環日食を一目見ようと、大学の講義棟の屋上や運動場などにたくさんの人々が詰めかけていた。


 また、家から眺めた人もたくさんいたようである。大泉と遥のバカップルは二人で一緒に見たと言っていたし、AKBマニアの矢島も珍しく関心があったようで、生きているうちに見られてよかったと言っていた。


 唯一、前日に夜更かしして寝坊した園村だけは昼のニュースで初めて見たと、実物を見られなかったことを残念がっていた。

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