4 利害関係の一致から始まる恋③
「もう、園村君、やめてよ。みんなが誤解するでしょう」
私は言ってから、しまった…と思ったが、もう遅かった。人のことだと冷静に捉えられるのに、自分のこととなると、どうしてこんなにテンパってしまうのだろうか…。
「ちょっと、悠ちゃん。その反応、何かあやしいな…」
「もう、遥まで止めてよ」
「うわっ、そうなったら、僕、これから一人で行動しようかな…。なんか、寂しくなるけど仕方ない…」
珍しく、矢島まで悪ノリする。うわっ、マジで最悪だ。できれば、このまま消えてしまいたいぐらいだ。できることなら、ここから逃げたい…。でも、逃げたら誤解が増々深まる。どうしたものだろうか…。
「とにかく、私は馬に乗るよりも、お星様をみるのが好きですから…。残念でした!」
「そっか、それなら仕方ないなぁ…」
何が仕方ないなぁ…だよ。もし、周りに人がいなかったら、ここが大学講義棟のロビーであったとしても、おかまいなく園村をぶん殴りたいぐらいである。本当に何を考えているのか? この男は?
「それじゃ、俺たち、バイトだから、先に帰るね」
「えっ、イズミンと飯倉さん、バイト始めたの?」
「矢島と同じように、俺らも居酒屋でバイトを始めたんだ。夏休みに二人で旅行に行くためにね。ねえ、遥ちゃん」
私はそこで遥が再び頬を少し赤らめるのを見逃さなかった。さっきと違った意味でいささか殺意を覚える。
「じゃあ、僕もそろそろバイトに行かなくちゃ!」
そう言って、大泉と遥、矢島の三人が足早にロビーから去って行った。おいおい、こんな時にやめてくれよ。まるで狙ったかのように、園村と二人っきりになってしまったじゃないか。これは実にまずいぞ…。
「あっ、私も行かなきゃいかん。今日は天同の活動日だ」
もちろん、天同とは天文同好会のことである。本当は活動日ではなかったけど、何か理由をつけて、この場を離れなければ、何かとんでもないことが起こりそうで怖かった。
とにかく、面倒なことは嫌いである。それから、私は園村と二人っきりにならないように、細心の注意を払うことになったのは言うまでもない。




