プロローグ
イグサの独特な香りがする畳のある和室。
その和室の中央にあるちゃぶ台を挟んで二人の姿があった。
一人は老成な雰囲気を醸し出す羽織を着た銀色の長髪の青年と。
もう一人は和室をキョロキョロと見回す病衣を着た栗毛の幼い少年が居た。
青年が落ち着きの無い少年に声を掛けた。
「初めまして、恐神 御霊君。
僕は運命を司る神、ウガラカンと言う者だ。
宜しく頼むよ」
「はい!
………かみさま?
あの、ここはどこ?」
反射的に返事をした少年は答えた後から思った疑問をそのまま口にした。
「そう、神様だ。
全知全能って訳じゃないからね。
ここは僕の部屋さ。
ここで人の魂を管理してるんだ。
僕は運命を司る神だから魂も管理してるんだよ。
そして君はまだ寿命が残っているのに死んでしまったんだ」
そうウガラカンは少年に伝えると少年はふと思い出したかのように身体を触れ始めた。
「………いたくない。
からだが、あんなに、いたかったのに」
少年は頭を、腕を、脚を、お腹を、そして最後に胸を確認していくかのように触れてポツリと言った。
「人は死んだら物質から解放されるからね。
苦痛は無くなるのさ。
そして君はある事情によって寿命が残っているのに死んでしまったんだ。
僕はそんな君に新しい世界で生きて欲しいんだよ。
いわゆる転生ってやつだね。」
青年は少年の今の状態を説明しつつ少年への要望を伝えた。
しかし、少年は…
「てんしょう?」
分かっていなかった。
理解するには幼過ぎたのだ。
青年はその少年の様子を想像していたのか構わず話を続けた。
「元の世界、5118208では君は生き難い環境だからね。
それよりも君に合った次の世界、9492813に転生してもらうよ。
君も君の姉も生き易いだろうからね」
「あね?」
少年は首を傾げた。
まるで初めて聞いたかのような反応だった。
「あとは、そうだね。
僕からのプレゼントも送ろう。
9492813は5118208とは違う世界だからね。
期待をしていると良いよ。」
そして少年に伝え終えた青年は少年に向かって払うように手を振った。
すると少年は和室から忽然と跡形もなく消え去ったのだ。
「さて、これで良いかな。
ふぅ、緊張した〜。
危うく5118208の魂のバランスが崩壊してしまう所だったよ。
あんな子達が産まれるなんてね。
危険はもう去ったからとっておきのお茶と和菓子でも食べよっと。」
青年はそう言って立ち上がり襖を開けて和室から出て行った。




