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彼女のはじまり1

はじめまして

初投稿の上、見切り発車です。よろしくお願いします。

――――我が名は糸葉(いとは)。森羅に続く天祖姫神に奉る。我が意を組み 我が願いを叶えたまえ 時と異界を繋ぐ縁の御橋を今ここに。――――――





そしてわたしを(イシュ)の元へ連れてって……





「あ、夢か……」



いつもの部屋のベッドの上。そう自分の部屋のスプリングのない木枠に板を置き、その上に布団をひいたベッドの上で志染(ししめ)糸葉は目を開けた。


何かにすがるように右手を天井へとまっすぐに伸ばし、目元には窓辺から降り注ぐ朝日に光る雫を流しながら、糸葉はこの地球に戻ってから2ヶ月目の朝を迎えたのだ。



「イシュ……」



そうつぶやいた声音は、朝起きたばかりの特有の掠れを伴って糸葉の口からこぼれ出た。



その名の主はこの地球上には存在していない。


異世界遠宮(とおとのみや)……


そう呼ばれる世界の住人のひとり。


2ヶ月前に糸葉が迷い込んだ世界で出会った一人の男性である。



糸葉が遠宮に迷い込んだのは5月の半ば、5月病と呼ばれるゴールデンウィーク疲れが感知しつつある初夏のよく晴れた休日の午後のことだった。

その日糸葉は胸まである黒髪を二つに結び、薄い水色のキャミソールに白い短パン、お気に入りの編み込みのサンダルを身につけて家の近くにある水路に向かっていた。



「糸葉ちゃん、就職は決まった?」


「まだだよ、信楽さん」


「そうなの……早く決まってお母さんを安心させてあげるんだよ」


「うん、わかってる」



わかってるんだよ、わかってるんだけどね……。



糸葉は去年の9月大学を卒業した。普通の人たちと違って9月卒業なのは卒業制作のテーマをちょっと上を目指しすぎて期間内に間に合わなかったからだ。高校から勤めていたバイトも4月に半年後の卒業を確実にするためにやめた。好きな読書の時間もおやつも就職活動もやめた。卒業できなきゃ就活しても意味ないからだ。

おかげで無事に卒業できたわけだが、元から人と対面して話す事が苦手だった糸葉にとって就職活動というのは人生に置いて大きな壁となって立ちはだかったのである。


そしてずるずると続けて今に至るというわけだ。



糸葉の家族は母親と弟と妹二人の5人である。父親は糸葉が中学の時に離婚し家を出ていった。三つ下の弟は高卒で就職、現在は隣の県で一人暮らしを送っている。5つ下の妹も高卒で就職のため、今年の3月家を出て寮生活となった。

なので今家にいるのは母親と糸葉と中学2年の妹の3人である。


母の手と今までバイトで貯めた貯金で生活している身としては、早く就職して安心させなれけばと思っているんだけどね……。弟や妹にも先を越されているわけだし……。



でも、な……



最近は就職を焦るストレスか、手が震えるようになり、ちょっとしたことで自分を追い詰め泣くことが多くなった。人にも会いたくなくなり、一日の大半を自分の部屋で過ごすようになった。


自分が引きこもりになりかけていることは自覚しているため、気分転換を兼ねて今日は外に出てきたのだが……

家を出て早々に近所のおばさん、信楽さんに声を掛けられてしまった。


しかも話題が今一番言ってほしくないことである。一気に気分が沈んでいくのがわかる。


早くひとりになりたいな……


一歩進むごとに足を動かすペースが早くなっていき、糸葉は目的の水路にたどり着いた。



ここは糸葉お気に入りのひとりになれる場所。

少し離れた田んぼまで続くこの水路は、流れる水音が耳に心地よく、いつまで聞いていても飽きない。周りは背の高い雑草や木々で囲まれているため、この場所は誰にも見つかることはない糸葉だけの場所。



ここに来ると落ち着く。



自分の部屋で音楽を流していても落ち着くけど、親の声や家の前を通る車の音などがちょっと気になる。

それに比べてここは、流れる水音や風に揺れる草木の音以外は存在しない特別な空間なのだ。




次話未定な上に内容改変するかもです。

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