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Lady Devil  作者: アキラ
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第8話

「そんな可愛いだなんてお世辞でもありがとうね。

このココアも絶妙に美味しいし、本当にありがとう。」

お世辞とは分かっていても嬉しいものは嬉しい。

私はその嬉しさを前面に出した笑顔を向けながら、彼に感謝した。

そして時間も時間だったので、ココアを一気に飲み干した。

そのココアの温かさからなのか、彼に優しくされたからなのかは分からないが、

心までポカポカしていて、これなら帰り道もいつも通り帰ることが出来る気がした。

「それじゃあ、もう夜も遅いから帰るね」


そう伝えると、彼はまたしても守衛室の奥の方へとやや駆け足で行った。

(いったい、どうしたんだろう。)

何かトラブルでもあったのかなと思っていると、

彼は手にマフラーを持って出てくると、おもむろに私の首にかけてくれたのだ。

これにはもちろん驚いたし、そのマフラーを返そうと手をかけようとしたのだが、

彼はそれを阻止するかのように私の手をぎゅっと握り、

そのまま守衛室の外へと連れていった

「まだまだ夜は寒いですからそれ着けて帰ってください。

あ、別に返してもらわなくても結構ですよ。

それでは今日もお仕事お疲れさまでした。」

彼はそんな温かい言葉を投げかけると、私の背中を押した。


「あ、ありがとう!!このマフラー、また返しに来るから。」

私はそんな彼の厚意に甘えることにし、彼に別れを告げ帰路に就くことにした。



圭織が会社のエントランスを出て、その姿が見えなくなったのを確認した彼は

さっきまで目の前にいた圭織の姿を思い出し、微笑みを浮かべていた。

がその微笑みはすぐになくなり、その代わりに少し寂しげな表情へと変わっていった。

「はぁ。もうすこしあの人と話したかったなぁ。

まあ、でも最終日にあんなにもかわいい人と話せただけでラッキーなのか。

うん。これ以上の欲張りはダメだ。」

彼はそう呟くと、守衛室の中へと戻っていった。



「あ~、それにしてもこのマフラー、本当にありがたいなぁ。

さっきからすごく風が出てきたから、

もしこれがなかったら絶対に首元を冷やしていたに違いないわ。

今度、会った時に感謝しなきゃね。」

私は吹きすさぶ風の中、帰路を歩いていた。

周りにはもう人影があまりなく、

道路を走る車の明かりと電灯の明かりが道を照らしていた。

少しだけ怖かったが、さっきの守衛の男の子の笑顔とこのマフラーのおかげで、

その感覚も少しは軽減されていた。


と、道路に目を向けていると、見るからに高そうな車が目に入ってきた。

「うわ~、なんか高そうな車!!

そういうのにはあんまり詳しくないけど、あれは高いに違いない。

というかあんな車に乗っている人ってどんな人なんだろう。

社長さんとか芸能人さんだったりして。ふふ」

あまり見たことのない車についつい興奮してしまった私はその感想を口に出していた。

傍から見れば、変な人に映るかもしれないけど周りには誰もいないので、そこは一安心。


私は乗っている人についてあれこれ妄想していたことから、気づけなかったのだ。

その車がどんどんと私の方に近づいてきていたということに。



私がそのことに気が付いたのは、その車が不自然に私の前で停車したのと同時だった。

我ながら、自分の危機管理能力に嫌になった。

もしかして、この車に乗っている人はドラマによく出てくる人身売買の業者さんで

私このまま攫われるのでは。とこの間まで見ていたドラマのワンシーンがよみがえった。

そう考えている間にも、その車の鍵が開く音が耳に届いて、

ますますその予感が現実味を帯びてきた。


そしてドアが私の目の前で開かれると、中からスーツを着た男の人が出てきた。

(あ、私の人生終わった。お母さん、お父さん、いままでありがとう。)


そんな意味の分からない感謝をしている私だったが、一向に何も起こらない

(あれ?おかしいな。もしかして私の勘違い?それもそうよね。

こんな現代社会にそんな人いるわけないじゃない。

あれ?というか私今、すごく恥ずかしい行動してない!?)

そして急に冷静になったわたしは目を開けた。


その瞬間、頭上から笑い声が聞こえてきた。

「ハハハ、なんだ女。さっきまで不安そうな顔をしていたと思えば、

感謝をしているような顔、失敗をした表情、そして急な真顔。

ころころと表情を変える。俺が思ったとおり、面白い女のようだな」

そして続けさまに聞こえてきたのは、

そんな明らかに面白がっているような言葉の数々。


私のさっきまでの不安や後悔はどこかへ消え、

その代わりに見ず知らずの人にそんな態度を取られたことに憤りを感じた。

だから睨みつけるように、その笑い声の主を見た。


しかし、その瞬間私は後悔をすることになる

なぜならそこに立っていたのは、昨日の俺様男だったのだから・・・。


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