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Lady Devil  作者: アキラ
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第5話

翌朝、私は大慌てで家を出ていた。

こうなったのもすべては昨日に私のやけ酒ならぬやけドラマのせいだ。

昨日帰り道に出会ったイケメンなのにすごくもったいない

あの俺様男のせいで私の心は帰宅後、怒りに包まれていた。

そんな時はいつも好きな海外ドラマを見てすっきりしてから

次の日に備えて寝るところ。

なのだが、昨日見ていた海外ドラマの展開上、

面白すぎて寝るに寝れない状況になってしまい、結局寝たのは3時。


それでもかなり次の日に影響を及ぼすことだが、

私には目覚まし時計の朝陽君が付いていてくれるから大丈夫。そう確信していた。

しかし、これまたタイミングの悪いことに故障していたようで、

朝から朝陽君は私を起こしてはくれず、結局自力で起きることとなってしまい、

その結果始業時間の1時間前に起床してしまうという惨事に。

だから私は着替えとメイクをいつもの倍のスピードでなんとか終わらせて、

朝ご飯を抜いて、今猛スピードで走っていた。

(このまま走れば、なんとかギリギリ会社に間に合うバスに乗れる。

昨日も部長に怒られたばかりなのに。あ~、もう私のばかぁ!!)


なんとか始業時間、3分前に会社のロビーに着いた私

しかし、この時になって初めて想像以上のミスをしていたことに気付いた。

というか、そのせいで私は今会社のロビーで立ち止まって、

部長にどう説明するべきかを考えていたのだが、

どう説明をしたとしても激怒される未来しか想像することはできない。


(あ~、もうなんでこういう日に限って社員証を忘れちゃうかなぁ。

あれがないと自分の部署までたどり着けないのに~)

そうして項垂れていると、後ろから肩を叩かれた。

私が驚きながら後ろを振り返ると、そこには清一さんが立っていた。

清一さんは会社の同僚で優しく、

それでいて優秀で部長からも一目置かれている。

ついこの間も若手ながら会社の代表として一人で気難しいことで

有名な御伽屋の社長と会談をしていた。

そしてその会談の内容が掲載された雑誌は破竹の勢いで売れたらしい。

だからか最近は「今若手で一番、次期新部署のトップに近い男」と言われているのだろう。

そんな同僚でありながらも遠い存在の彼が目の前にいる。

そのことがたまらなくうれしかった。

しかし手放しで喜んでいられるほど心に余裕はなかった。


清一はなぜか私の顔を見つけたまま、動こうとはしない。

(あれ?どうしたのかな。

っていうかもしかして私今日なにかメイクでミスを犯しちゃった!?

だからこんなにも見られているの!?うわぁ。恥ずかしぃよぉ)


そんなことを考えていると、ふっと清一さんは微笑みを浮かべた。

かと思うと私の手をいきなり握りしめた。

(え?え?ど、どういうこと!?あ、あの若手トップの清一さんが私なんかの手を)

思い切りどきどきと脈打っている私を他所に清一は、

私の手をぐいぐいと引っ張ると、そのまま彼のカードを使って、

部署へ続く扉が開けられた。


その瞬間、さっきまで私の手を包み込んでいた温もりは消え、

清一は私の背中を優しく押した。

「早く向かった方がいいですよ。加治木部長を怒らせると本当に怖いですから。」

そう言いながら彼は優しい笑みを浮かべていた。

そんな彼の言葉に従うように自分の部署まで走り出していったのだが、

途中まで来て感謝をしていないことに気付き、後ろを振り返った。

しかし、残念なことにもうそこに清一さんの姿はなく、

今度会ったら改めて感謝しようと思った。


部署の扉を開けた先に待っていたのは、部長の鬼の形相だった。

それもそのはずで、

清一さんが扉を開けてくれた時にはもう既に始業のベルが鳴り響いていて、

そこからどれだけ急ごうが遅刻は遅刻なのだ。

ただ今日は怒られるという事態を何度も想定していたためからか、

この光景になることは覚悟をしていた。

そのため今日はいつもよりもごく自然な所作で頭を下げ、

部長に反省の色を見せる姿勢を彼に示せた。


その甲斐あって、今日のお説教は15分で終わった。




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