第13話
「圭織、疲れた顔をしているな。」
「え、そ、そんな風に見えますか??」
「ああ、疲れ切った顔をしているぞ。」
星斗さんはそう言いながら、顔に手を伸ばしてくる。
ピタッ
おもむろにその手は私のおでこに触れた。
あまりにも恥ずかしくなって、顔から火が出てきそうだ。
さっきまで冷酷そうなイメージがあったけど、その認識を早々に変えた。
「熱はないようだな。」
彼の手がおでこから離れていく。
そんな単純な所作なのに、見とれてしまう。
(こ、これがホスト!?)
「圭織、今のままでも十分綺麗だが、その顔が笑顔ならもっと綺麗だろうな。」
「い、いや、そ、そんなことないですって///」
甘言の数々に私の心は既に星斗さんにメロメロだった。
一挙手一動が洗練されていて、かっこよかった。
「今夜、この時間だけは圭織の疲れを忘れさせてあげよう。」
「は、はい///」
(やってしまった・・・。)
「あ、あの圭織さん…。だ、大丈夫ですか??」
お店の会計が終わった私は、龍聖君の肩を借りる形で暗闇の道を歩いていた。
あの後、星斗さんに乗せられた私は、あれよこれよとお酒を頼みに頼んだ結果
2万円も散財してしまった。
あとから知った話だけど、星斗さんは店のNo3だったそうで、
初回の客にはあまり話しかけないらしいが、今日は龍聖君に見本を見せるために
きたのだという。
悪く言えば、私はダシに使われたのだ。
(どうりであんなにも口が上手いわけね)
そして、普通に会計をして、帰ろうかと思っていたところで、
龍聖君に声を掛けられた。
というか、星斗さんの口車に乗せられている間、
彼はひどく申し訳なさそうにするだけで
呆然と掌の上で踊らされている私を見ているだけだった。
そんなこともあってなのか、彼はまた客引きに回される羽目になり、
道中を一緒に歩く羽目になってしまった。
まあ、ふらふらしている足のままで明るい道までたどり着けるか
不安もあったので、良かったのかもしれない。
「あ、ああ、ま、まあ大丈夫よ・・・。」
精一杯のやせ我慢だった。
食費が大幅に削られてしまった事もあって、
笑顔はぎこちなくなっている気がする。




