第11話
「え、え~と、あの、いいんですか??」
青年はその店の人とは思えないような声色で私に問いかけてきた。
怖がっているような。心配しているようなそんな感じ。
(私、そんなにもさっき怖がらせるような顔をしていたってこと!?)
「い、いいよ。開けて」
罪悪感を擽られてしまい、このまま帰るという選択肢を無意識に捨てた。
ホストクラブなんてあまりいい噂を聞かない。
お金で愛を買う場所。そこに本当の愛はなく、お金を搾り取られる。
そんな認識を持っていた自分がまさかそんな場所に足を踏み込むなんて・・・。
(あれも、これも。あの性悪俺様男のせいよ!!)
「そ、それじゃあ、開けますね」
ドアノブに手を掛け、引っ張て行く青年。
「「「いらっしゃいませ~!!!」」」
その圧倒的な音に踏み込んだ足を思わず後ろへと戻してしまう。
それくらいに凄まじい挨拶を今までに受けたことがなかった。
(え、なにここ!?)
そしてその音と共に視界に映り込んでくる大勢のホストの姿と大勢の女性客の姿
中には本物の恋人のように手を繋ぎ合い、腕にしがみ付き、
顔を近づけているものまでいる
大量に積まれたお酒のボトル。どこか世俗とかけ離れた雰囲気の室内。
さらには入ってすぐのところにホストの顔写真が
10枚ほど数字を振られて張られている。
心臓がすごい勢いで音を鳴らす。
(やばいやばいやばいやばい。つい来ちゃったけど、
これはダメなやつだ。場違いさしかない)
「お、龍聖!!お客さんゲットできたんか」
私がドギマギしていると、長身の人が近づいてきた。
(うわ、なにこの人、うわ、すごくかっこいい!!)
その人は見上げなくてはならないほどの長身に加えて、
スタイルがモデル級に良かった。
女である自分よりも細いのではないかと思ってしまうほどに。
そしてそんなスタイルの良さに引けを取らない顔の良さ。
アイドルグループのセンターを務めていてもおかしくないほどに。
男性の外見に驚いていると、龍星と呼ばれた青年の肩に手を置く彼。
親しげな雰囲気を醸し出している。
「志麻さん・・・。」
しかし、当の龍星くんはどこか困っているようだ。
「志麻~!!まだぁ?!」
そんな中、女性の叫ぶような甲高い声が聞こえてきた
どうやらこの長身の志麻さん?を呼んでいるようだ。
志麻さんはその声に反応するかのように、その声のした方向へと視線を向ける。
「ふぅ~。理央ちゃんに俺呼ばれたみたいだ。そんじゃま、俺戻るな。
あ、そうだ。レディ。俺の名前は志麻ってんだ。機会があればよろしくな。」
志麻さんは私の目線までわざわざ腰を下ろすと、簡単な自己紹介をしてくれた。
かと思うと、声のした方へと向かっていった。
(わぁぁ。すごい綺麗な動き・・・。流れるようにだった。)
まだ会って全然時間が経っていないのに、志麻さんのことが気になってしまう。
(こ、これがホストの力ということなの!?)
「あ!お席に案内しますね」
私が目線を一定に据えていると、隣にいた龍星くんが手を引っ張て来た。
どうやら、今度は席へ案内してくれるみたいだ。




