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Lady Devil  作者: アキラ
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第9話

「ほほぅ、またもやその目をこの俺に向けるのかあ。面白い」

俺様男はそのまま私の顎を掴んだ。


少しだけドキッとしたが、見ず知らずの男の人、

それもこんな勘違い男に恋心なんて抱くわけもなく

、思いきり、その手を振り払った。

「ちょっと、いきなり何するのよ!!

あなた昨日から思っていたけど、おかしいわ!!」

そして思いのまま叫んだ。


しかし、彼は全く動じていないのか、

更に興味をそそられたと言わんばかりに口角をあげた。

「ふはは。本当に面白い女だな。お前は。よしきめたぞ。

早坂、今夜の予定は全てキャンセルだ。」

彼は私の腕を痛いくらいにぎゅっと掴みながら、いつからいたのか、

スーツを着た初老の男の人に命令口調で言葉を発した。

早坂と呼ばれたその男性は明らかに困り果てた顔をしている。


「しかし、須央様、本日の会食の相手は

三山銀行の頭取とだったと記憶しておりますが・・・」

続けて早坂さんは次の予定について彼に伝える。


私はその予定についつい驚いてしまった

(三山銀行ってあの日本3大銀行のうちの一つなんじゃ・・・。

い、いやそんなわけないよね?だってこの人は勘違い俺様男で・・・)

昨日知り合ったばかりの男性なので、確かなことは言えない。

(だけど、もしも本当にこの後の予定が三山銀行の頭取なのだとしたら、

この人凄い社長とかなんじゃ・・・)


それに対して、須央と呼ばれた彼は

私がおもむろに狼狽え、困惑している様が

あまりにも面白かったのか、笑っていた。

「早坂よ。あんな狸爺との話よりも俺はこの女との話の方が

何倍も面白いと思うのだが、それでもお前はまだ、

俺に前からあった予定を優先しろと。そういいたいのだな。」

そしてかなり高圧的な態度で彼は早坂さんに詰め寄っていった。



早坂は困惑していた

自分の主人である須央様が突然の思い付きで発した我儘よりも前からあった

この会食予定の方が何倍も大切だということは分かっている。

あの天下の三山銀行の頭取との会食をドタキャンしたとすれば、

きっと先方は怒りを露にするに違いない。

最悪の場合は取引が無くなるというリスクをはらんでいる。

先々代の時から長年の取引を行っていた三山銀行との取引が

無くなるなんてことになってしまえば、自分の監督責任も問われかねない。

最悪の場合、解雇。

だが、ここでまた反論でもしようものなら、

須央様に逆らったという理由でクビにされるかもしれない

今の須央財閥は、先代の秋一様が急逝してしまったことから、

息子の高臣様に全権が委譲してしまったのだ。

だから今、私の進退は彼の一存のみで決定されてしまう。

どちらを選択したとしても、自分の首が飛んでしまう可能性が高い

まさに究極の選択を迫られていた。

こんなことなら、今日の朝、佐原さんと勤務を交代するんじゃなかった。


ついつい自分の朝の選択を後悔してしまう早坂だったが、

そんなことを思案している間にも須央は早くキャンセルの電話を入れるようにと、

無言の圧力をかけていた。


誰か、助けてくれ。

それは早坂の切実な願いだった。




「ねぇ。」

私は苛立ちが限界を超えそうだった。

さっきまでは驚いていた自分が馬鹿だったと

思うほどに怒りを胸に溜めていた。

今日は仕事が結構遅くまでかかっていて疲れていた。

その疲れをさっきまではあの警備員くんのおかげで少しだけ回復していた。

後はいつも通り家に帰って海外ドラマを見て、完全回復して翌日の仕事に臨む。

その予定だった。


そのはずだったのに・・・。

昨日と同じように俺様勘違い男に絡まれた。

腕をきつくつかまれてすごく痛かったし、

理不尽な我儘を目の前で繰り広げてくる。

それも自分がすべて正しいと思い込んでいるような

どや顔を浮かべながら、宮坂さんと呼ばれていた

彼よりも年の行った人に我を通そうとしている。

正直言って、腹が立たない要素がないほどだった。


我慢しようとは思った。

だけど、やはりどうしても自分を抑えることはできなかった。


私は彼に声をかけた瞬間、

掴まれていない方の左手を彼の頬に向けて振り切った。

パチーン。という綺麗な音が真夜中に響き渡った。


これにはさすがの俺様男も驚いたのか、

先ほどまでの嘲笑ったような表情が消えた。

「いい加減にして!!アンタ本当に何なの!?

どっかの社長かお坊ちゃまなのか知らないけどね。

していい事と悪い事すら分からないの!!

こんな真夜中に見ず知らずの男の人に難癖付けられて、触られて、

その上、どこかに連れていこうとして本当に最低よ!!

それになに、アンタのさっきの発言は!!

前からしていた約束を急遽キャンセルして、

思い付きで違うことをしようとするだなんて・・・。

ほんと、ふざけんな!!皆がアンタの言いなりになるわけじゃないし、

時間を計算してみんな動いてんのよ!!

それを何でアンタなんかが変えられると思ってんの!!そんなの傲慢よ!!

そのおじさんにも頭取さんにも謝りなさいよ!!

あ~。もうほんと。アンタのせいでさっきまでのいい時間も台無しじゃない!!

もう帰る!!」

私は全ての怒りをぶちまけるかのごとく叫んだ。


彼と宮坂さんは唖然としていた。

そしてこれを好機だと思った私は若干言い逃げみたいな感じがして

嫌だったが、全力で自分の家へ向かって走り出した。


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