表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/52

actual world&spirit world Ⅱ-Ⅰ

 クライマーギルドを後にすると、三人は空港を目指し大通りを南に向って歩いていると、頭の後ろで手を組んだキッカがミナトに話しかける。


「なぁ、皆人これから何処に行くんだ? 何となく、二人に付いて来たけど……」


「これから飛行船に乗って、塔の都(ストーバ・トルレム)って言う場所に、移動するんだよ」


「飛行船?」


 キッカが、少し不思議そうにしているのに気付くと、ユズリハが空を指差し。丁度飛び立ったばかりの飛行船にその指を向ける。


「あれが飛行船だよ、あれに乗って、ボク達が普段活動の拠点にしている場所に向かうんだよ」


「おおー、かっこいいな! あれに乗れるのか、楽しみだぞ!」


 はしゃいだ様子のキッカに、ミナトとユズリハは苦笑を浮かべつつ、空港に向かって歩みを進めながら、今後の予定を話し合っている。


塔の都(ストーバ・トルレム)に着いたら、まず、スキル屋さんに行って見よう。品揃えには、あまり期待は出来ないけどね……」


「そうなの? もしかしてスキルって結構、レア物だったりするの?」


「うん、実はそうなんだよね……スキルって本や巻物の形で売っているんだけど、使えるスキルって、本当に少ないんだよね……特に初心者だと……職業に就けば、基本的なスキルは自動的に修得するから良いんだけど、ちょっと特殊な物だったりすると手に入れにくいんだよね」


「そうなんだ……でも、魔法は? そんなに手に入れにくいんじゃ、初心者の魔法使いって大変じゃないないの?」


 ミナトは、はしゃいでいる。キッカを見つめつつ、疑問に思った事をユズリハに問いかけた。


「魔法に関して言えば、そんなに問題は無いんだよ。それぞれの属性は簡単に手に入るから……ただ修得するのは簡単なんだけど、スキルLVを上げるのが大変なんだって。魔法はさ……」


 ユズリハは、キッカの方を見ながら、軽い溜息を吐く、それを見たミナトは、苦笑を浮かべると仕方ないなぁみたいな顔で告げる。


「まぁ、どんなRPGでも、魔法使いの育成が一番大変って言うのは、変わりが無いって事なのかもね」


「そうだね……職業によって、育ちやすさが違うのは、RPGの常だから……それに強くなれば、一番役に立ってくれるのも魔法使いだし……だから、前衛や中衛は、後衛の魔法使いを一生懸命守ろうとする訳だし」


「でも、良かったよ。これで比較的バランスの取れた。PTになりそうで」


「そうだね、本音を言えば、盗賊と回復専門の魔法使いが欲しい所だけど、それはまた、追々考えて行けば良いさ」


 二人の話が終わる頃には、既に空港が目の前に見えてきていた。三人はもう直ぐ出発の飛行船のチケットを買い。飛行船に乗り込む。先日乗った物より大型な飛行船は、艦橋や甲板にも出れて、より一層、空を間近に感じらた。

 船内を一通り探索してから、ラウンジにあるテーブル席に着くと、そこでPT申請の仕方や、ステータスウィンドウの見方、互いのフレンドリストへの登録などの、細々とした事を済ませていく。

 そんな中、ユズリハが嬉しそうに、ミナトに言ってくる。


「ボクも通話アプリと、ステータス表示設定追加アプリ入れたよ。これで連絡がつけやすくなったね」


「そうなんだ、昨日の今日なのに速いね」


「うん、だって凄く便利そうじゃない? ステータスの方は、まだ今一歩使い道が無いけど、持ってて困る物でも無さそうだしね」


「二人で、何話してるんだ?」


 キッカは、自分のステータスウィンドウを見ながら、二人の話に付いて行けない事が不満なのか、不機嫌そうな顔で聞いて来る。


「アプリの話だよ、そう言えばキッカのspirt worldにも、アプリがインストールされてたはずだよね? 昨日の初期設定の時に、話題に上がった記憶もあるし……」


「おおー、そういえば、何か色々インストールされてるって出てたぞ、良く分からないから、無視してたけど」


 キッカのその適当な返事に、ミナトとユズリハは顔を見合わせ、互いに苦笑して頷きあう。ミナトがアプリの説明をすると、キッカは、漸く話に入れて貰えたのが嬉しいのか。興味深そうに話に聞き入っている。幾つか入ってると言った、キッカの言葉に嘘は無く。アプリの設定の仕方を教えると。

 ミナトとユズリハの二人が使っている。アプリの他にも、かなりの数のアプリが、キッカのspirt worldにはインストールされている事が判明した。


「昨日も言ったけど、叔父さんには良くお礼を言った方が良いね」


「おうっ! 分かってるぞ! 昨日も言われたからな、今日の朝、電話だけど、ちゃんとお礼言っておいたぞ」


 キッカは、そう得意気に言って、薄い胸張った。ミナトはその対応の速さを褒めるように、サラサラの金髪の頭を撫でる。嬉しそうに目を細めるキッカの様子に、何か猫っぽいなと思うミナトだった。

 互いの頭上に、表示されているウィンドウを確認しあうと、キッカが、ミナトのウィンドウを見てから大仰に頷く。


「皆人って名前、ミナトってカタカナ表記なんだな、それも、じゃきがんならではなのか?」


「……流石に本名の漢字を、そのままの表記で使うのは、セキュリティの面で危険だと判断したんだよ……」


「なるほどな! そういうタテマエなんだな。分かってるぞ。よし、その設定に習って、おれも皆人の事ミナトって呼ぶぞ!」


「僕が邪気眼と言う設定は、キッカの中で揺るがない物になっているみたいだね……」


 ミナトは情けない表情で、そう言うと、キッカは不思議そうに。ユズリハはご愁傷様と言う感じの困った顔で見つめている。

 そんな話をしていると、飛行船のアナウンスでもう直ぐ、塔の都(ストーバ・トルレム)に到着する事が告げられる。

 飛行船のラウンジから見える、塔の大きさに、キッカは大興奮し。ミナトも改めて見上げると、その大きさに圧倒されてしまう。飛行船はそのままゆっくりと発着場に着陸すると、三人は短い空の旅を終え、塔の都(ストーバ・トルレム)に到着した。

 空港から出ると、三人は北地区に向かい。塔の都(ストーバ・トルレム)の目抜き通りをゆっくりと進む


始まりの都(インゼル・ヌル)も大きいと思ったけど、こっちの街はもっと大きいなぁ……」


 キッカは、中央に聳え立つ塔を見つめながら、二人より僅かに先を歩く。間違った道を行きそうになる度に、キッカを呼び止め方向転換させながら、三人はゆっくりと歩く。


「さて、北地区に着いたら、まずはpolestar(ポーラスター)に行こう。昨日、注文した武器が出来上がってる筈だからね」


「うーん、でも、あの後、直ぐにメンテナンスに入っちゃったからなぁ……時間的に厳しくないかな?」


「そういわれてみれば、そうかも……メンテナンスが終わったのが確か……」


 ユズリハはウィンドウを開くと、運営からの報告に目を通すと、難しそうな顔でミナトに告げる。


「メンテが終わったのが、夜中の三時らしいから。時間的に無理かもね……」


「だよね……まぁ、出来ていなかったら諦めるよ。慌てる事も無いしさ」


 軽い感じで言うミナトに、ユズリハは頷くと、キッカには聞こえない様に耳打ちをしてくる。耳にかかる吐息と、鼻腔を擽る甘く爽やかな香りに、思わず顔が赤くなる。


「ところで、お金は飛行船の中で話した通りで良いの? ボクが全額出しても良いんだよ?」


「こういうのは、折半が一番良いんだよ。僕とユズリハさんで、金貨を五千枚ずつ出し合って、それをPTの維持費に当てるって決めたじゃない」


 先程の飛行船の中で、これからPTを組んで活動するにあたって、PT内の雑費を二人で出し合うと言う事を、決めた二人だが、ユズリハとしては、納得の行かない提案だった。

 ミナトから、報酬として受け取った金貨は、ユズリハから見ても高額で、新職業発見に、あまり貢献出来ていないと内心ずっと思っていた。

 ユズリハは、その事が、ずっと心苦しかったのだ。そこにPT維持のために、お金を出すと言う提案が出た時に、全額出すと主張したユズリハの意見を、折半という事で、早々に話を付けた。ミナトの対応にユズリハは不満を隠せないのであった。


「はぁ……そんな顔しても駄目なものは駄目だよ」


 拗ねたような、不満そうな表情の、ユズリハに、ミナトは溜息を吐きつつ言い放つ。


「ミナト君って、意外に頑固だよね?」


「それをユズリハさんが言う?」


「それはお互いさまだよ!」


 ミナトとユズリハの間に、気不味い空気が流れる。お互いに強い視線をぶつけ合い。無言で睨みあう。


「…………」


「…………はぁ、不毛だから止めよう? 別に喧嘩をする様な事じゃ無いんだから」


「そうだけど……それでも少し心苦しいよ、ボクは昨日買った、この鎧で十分だからさ、残ったお金は共同資金にしておこうよ」


「ユズリハさんに渡したお金は、正当な報酬だよ、貢献出来なかったとか、役に立ってなかったとか、そんな事は関係ないよ。二人で始めた、初めてのクエストだったんだよ? 二人で達成したんだから、そんな他人行儀な事言わないでよ……」


 ミナトは、少し悲しそうな顔をすると、ユズリハを見つめる。その視線に怯むと溜息を吐き、困った顔で頷いた。


「そこまで言ってくれたミナト君に、これ以上何か言うのは野暮だよね……分かったよ、これで、この話は終わりにしよう」


 ユズリハは観念したのか、そう言って苦笑を浮かべながら、ミナトにそう告げると、最後には何時もの様な綺麗な笑顔を浮かべる。


「ごめんね……何か、僕の感情を押し付けたみたいになって……」


「ん? 構わないよ、こういう事を経験しながら楽しんで行くのも、VRMMOの醍醐味でしょう?」


 片目を瞑りながら、颯爽と答えるユズリハを、眩しそうに見つめると。ミナトはスッキリとした表情で、返事を返す。


「うん、その通りだと思う……これからもよろしくね、ユズリハさん」


「うん、こちらこそよろしくね……ミナト君……」


「おーい、ユズねえにミナト~、道はこっちで合ってるのか~?」


 二人を呼ぶキッカの声に、ミナトとユズリハの間に、一瞬流れた甘い空気が霧散する。照れ臭そうに、先を歩くキッカの方に、早足で向うユズリハを見つめながら、ミナトは、仲良く歩く。二人の後ろ姿を、見守る様にゆっくりと歩いていった。




 北地区の新興区画にある武具屋polestar(ポーラスター)に、三人は辿り着くと、店の正面の扉を開け中に入る。


「御免下さい。昨日武器を注文した、ユウキですけど……」


「いらっしゃいませ。ようこそpolestar(ポーラスター)へ、ミナト君!」


 挨拶しながら店内に入るミナトに、カウンターから、聞き覚えのある声が響いてくる。視線をそちらに向けると、リーフが軽く手を振りながら挨拶をしてくる。


「リーフ? 今日はEOTCにログ・インしてたんだ、朝、フレンドリスト確認した時は、まだ、入って無かったみたいだけど……」


「一時間位前に、ログ・インしたの、ヒトツネから、今日、ミナト君がお店に来るって聞いてたから……それで……えっと……」


 何か聞きたそうに、ミナトの背後に視線を送る。リーフの様子に気付く。

 すると背後から、「またかこの野郎」みたいな目で、ミナトを視線の刃で斬り裂いている。気配を感じながら。それぞれを紹介していく。


「えっと、こっちは、今、PTを組んでる。ユズリハさんとキッカ、それで、前に話した事があると思うけど、現実友達(リアルフレンド)でクラスメイトのリーフ」


 ミナトが簡単に紹介すると、ユズリハはリーフを見つめ軽く頷くと、前に出て手を差し出す。


「初めまして、ユズリハって言います。よろしくねリーフさん」


 物怖じしないユズリハの態度に、驚きながらもリーフは差し出された手を握った。


「こちらこそ、よろしくお願いします……ユズリハさん」


「お姉さん、よろしくお願いします。キッカって呼んでくれて良いよ」


 ユズリハとの挨拶が、終わるのを待っていた。キッカが人懐っこい笑顔で挨拶をすると、リーフはにこやかに挨拶を交わす。


「よろしくね、キッカちゃん。私の事はリーフって呼んで」


「それじゃあ、リーフねえって呼んでも良いか?」


「うん、全然構わないわ。それにしても……ミナト君のPTって女の子ばかりだね……」


 少し呆然とした感じでそう言うと、恨みがましそうな顔でミナトを見つめて来る。その視線に苦笑を返しながら返答する。


「何か、僕の事を女誑しみたいに言うけど、実際はそんな事無いからね。大体、男一人、女の子二人のPTなんて珍しくないでしょう?」


「そうなんだけど……日頃の行いが……」


「ミナト君の場合……無意識に……誑かしているというか……」


「ミナト。一途な男の方がモテるって、お母さんが言ってたぞ?」


 女の子三人組みはミナトの言い分を、疑わしそうな目と口調で一蹴する。


「身に覚えがないのに……冤罪だ!」


「その無自覚さが、罪なのですよ……ユウキさん?」


 ミナトの言葉に綺麗な声が答える。声のした方に視線を向けると、店の奥から、ヒトツネと琴が笑顔を浮べながら出てくる。


「言いたい事も分かりますが、やはり女性にそう思わせてしまうのは、ユウキさんの不手際なんです、まぁ、私はユウキさんが不特定多数の女性ちょっかいを出す人だなんて、これっぽちも思っていませんけどね」


 意味深な視線でミナトを見つめると。内心を見透かされた様な感じがして思わず目を反らしてしまう。

 その様子にヒトツネは微笑を浮べると、先程までミナトを責めていた三人に視線を向ける。その視線に居心地の悪さを感じたのか、三人は顔を俯かせた。


「まぁ、どちらの言い分が正しかったとしても、良いと思いますよ、青春っぽくって」


「ヒトツネは、偶に妙に年寄りくさい……年はリーフとそんなに変らない癖に……」


 ヒトツネの隣でボソっと呟く琴の頬っぺたを引っ張りながら、ヒトツネはミナトに告げる。


「剣を受け取りに来たのですよね?」


「はい、そうです」


「申し訳ありませんがもう暫く待って貰えませんか? あと少し完成なのですが……」


 ヒトツネは申し訳無さそうに頭を下げる。ミナトはそれを見て、慌てて止めに入る。


「そんな事しなくていいです! 無理を言ったのは僕ですし、それにメンテナンスで時間が無かったのは分かっていますから」


「そう言って貰えると助かります。あと一時間ほどで完成すると思いますから、もし、よろしければ店内でお待ち頂ければ……」


「それなら僕達は他の用事を済ませて来ますね、ユズリさんとキッカもそれで構わないよね?」


「うん、ボクは構わないよ」


「いいぞ~、色々見て回るの楽しそうだし」


 二人はそれぞれに頷くと、店内から外に出ようとする、するとリーフから声がかかる。


「用事って、何処かに行くの?」


「キッカと僕のスキルを買いに行くんだ、そうだ良いお店知らない?」


「スキル屋さんか……」


 リーフが少し考え込んでいると、漸く、ヒトツネの手が頬から離れた琴が、ミナトの傍に寄ってきて、袖を引っ張る


「わたし……良いお店知ってる」


 琴はそう言い放つと、ミナトの袖を引っ張りながら、外に出る。polestar(ポーラスター)の裏に周ると、其処にはひっそりと佇むように、一軒の店が建っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ