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第38話

 ミナトとユズリハは、一階の玄関ホールにある階段から二階に上がると、床の絨毯の色が青色から碧色に変わっている。


「二階は何か部屋の数が少ないみたいだね」


「その分部屋は広いみたいだよ、多分二階はこの屋敷の持ち主が住む為の場所なんだと思うよ」


 そう言ってユズリハは部屋の扉を開ける。

 部屋の中入ると、全体的に落ち着いた色調で統一されており、据え置きの家具も大きく高級そうな素材を使って出来ている。


「全体的に高級感があるね……それにこんなに広いと落ち着かないかも……」


「別に此処に本当に住むわけじゃないんだからさ。あくまで活動拠点でしかないんだから良いんじゃないかな、これから先は長くなるんだから広ければ色々と物も置けるし、長い目で見ればきっと手狭になって来るよ」


「でも、実際アイテムストレージにかなり収納出来るから、そこまで物も増えないような気もするんだけど……」


 ミナトは広い部屋を見渡しながらそう言うと、ユズリハは苦笑を浮かべながら反論をした。


「確かに、アイテムストレージにはかなりの数のアイテムが入るけど、これからの(ヴェルト)に登る過程で手に入るアイテムはかなりの数になるよ? それを全部ストレージ内に入れておく訳にも行かないでしょう」


「確かにそうだけど……でも、売ったり、処分したりすれば、そんなに増える事無いと思うけど……」


「そう思うんだよ最初はね……でも、クエスト用の素材アイテムや予備のアイテムや装備なんかも合わせるとかなりの数になるから……」


 備え付けのソファーに座ると、ユズリハは寛いだ様子でミナトに告げる。


「それに、モンスターにやられたら、ランダムでアイテムがロストしちゃう場合もあるから、大事なアイテムは極力持ち歩かないのが鉄則なんだよ?」


「そうなんだ……ロストするのはアイテムだけ? 装備は大丈夫なの?」


「うん、流石に装備してる武器や防具はロストしないよ。でも、装備してない物に関してはアイテム扱いだから、ロストしてしまうから注意してね」


「……なるほど、そういう事があるから、アイテムストレージにあまり物を入れておいてはいけないんだね」


 ミナトは納得すると深く頷いた、ユズリハはソファーに寄り掛かりながら笑顔を浮べている。


「どうしたの? 何か可笑しい事でもあった?」


 ユズリハの浮べた笑顔の理由が気になったのか、ミナトは不思議そうに問い返した。


「ううん、あれだけ戦闘が強いミナト君なのに、本当に知識面では初心者なんだと思うと、ちょっと可笑しくて」


「それは何度も言ってるじゃないか、僕は初心者だって、実際EOTCを始めてまだ一週間も経ってないんだkよ?」


「あの戦闘を目の当たりにすれば、ミナト君が初心者なんて誰も信じないと思うけどね……」


 ユズリハはそう言って苦笑を浮かべると、ソファーから勢いをつけて立ち上がった。


「それに付け加えて、謎の超強力な精霊と契約してるみたいだしね!」


「あぁ、そう言えば、あのお姫さまの事をすっかり忘れてた……彼女にも色々聞きたいんだけど。どうすれば呼び出せるの? 精霊って……」


 ミナトは考え込むように首を捻りながら、ユズリハに精霊の事について尋ねる。


「精霊と初めて会うのは、本当なら(ヴェルト)に入ってからなんだよ、本当ならね……でも偶に凄く精霊との相性が良かったり、契約した精霊が強力だったりすると勝手に現れて契約者を危機から助けるなんて事もあるみたいだから、姫が現れた事自体は別段珍しい事ではないんだけど……あの大暴走(グラン・スタンピード)を止めた力は生半可な力ではなかったよね……」


 ユズリハは、シルエルティから聞いた被害の規模を思い出すと僅かに身震いした。その様子にミナトも自分の精霊の事を思い出し、一つ溜息を吐いた。


「色々と聞きたい事はあるんだけどね……あのお姫さまには……でも、どうして(ヴェルト)に入らないと精霊とは会えないの?」


「ああ、それは通常ならね(ヴェルト)の一階層に、契約精霊を呼び出す為の祭壇があって、そこで初めて契約者の召喚に精霊が応えてくれるんだよ。でも、さっきも言ったように、祭壇に行かなくても現れる精霊も居るんだけどね」


「なるほど、お姫様がそのフリーダムな精霊だったって訳か……」


 ミナトは大暴走(グラン・スタンピード)の時に助けに現れた精霊の姿を思い出し、苦笑を浮かべる


「つまりは(ヴェルト)に行けば、あのお姫様に会える様になるんだ……」


「そういう事……さて、もう少しこの屋敷を見て回ったら買い物に行こう」


「了解、それじゃあ今度は三階に行ってみよう」


 ミナトとユズリハは、部屋から出ると三階を目指して階段を上って行く。

 三階は一つ一つの部屋の広さは二階に及ばないが、その分数が多く全部で十二の部屋がある事を確認した二人は相談をして、それぞれが二階の部屋を使う事になった。

 ミナトは屋敷の東側の角部屋、ユズリハは西側の角部屋と別れる事になり、荷物やアイテムの整理の為に今はそれぞれの部屋に一度引き上げている。


「うん、取り合えずは、こんなな物かな……」


 部屋の中でミナトはアイテムを、備え付けの棚の上に置くと、ふと何かを思い出したようにフレンドリストを開くと、その人物に連絡を入れた。


(おう、ミナト、お前もう塔の都(ストーバ・トルレム)に着いたのか?)


 すると、呼び出して直ぐにジンの声が、ミナトの耳に届く。


「うん、飛行船に乗ってきたからね、それでジンの用事って何?」


(ああ、これから少し時間取れるか? 直接会って話したいんだが)


「ごめん、これから買出しに行く予定があるから、直ぐには無理っぽい」


(そっか、確かにちょっと急だしな、それじゃあ買出しが終わったら、また連絡くれよ)


「良いの? そうしてくれると助かるけど……」


(ああ、こっちは全然構わない、それじゃあまた後でな)


 そう言うとジンとの通話が切れる。ミナトはフレンドリストを閉じると、アイテムストレージの中に獲得した憶えのないアイテムがあるのに気付いた。


「これって……あっ!? God Worldのコラボアイテムだ、えーとアイテムランダムボックス? 開けると中に何かアイテムが入ってるのか……よし早速開けて見よう」


 ミナトはアイテムボックスを取り出し、テーブルの上に置くと蓋を開けた。

 七色の光が箱の中から溢れる、その光が収まると箱の中には、一枚の黒いカードが入っている。


「カード……何のアイテムなのかな?」


 ミナトはカードを手に取ると調べ始める。薄い金属で出来ているらしく重さはそれなりにあり、金属特有のひんやりとした感触が手に伝わってくる。


「うーん、良く分からないなぁ……」


 金属製のカードを眺めていると、部屋のドアがノックされる。ミナトはそのノックに返事をする。


「開いてるよ」


 そう返事をすると、ドアを開けユズリハが部屋の中に入ってくる。

 ソファーに座るミナトに近づくと、ユズリハはミナトが持つカードに気付くと声をかけてきた。


「へぇ、ミナト君は素材の持ち込みで武器を作ってもらうんだね」


「えっ……どういう事?」


「だって、素材を持ってるじゃない? その黒い金属のカードは素材アイテムだよ、そのカード一枚で武具一つ分の金属インゴットが取れるんだよ」


「そうだったんだ……何のカードかと思ってたけど、素材アイテムだったんだ……」


 ミナトは手の上にある黒いカードを見つめていると、ユズリハが苦笑を浮かべながら言った。


「知らなかったんだ……それも仕方ないか、見た目は唯のカードだしね……でも、その形状をとっているという事は純度の高い金属って証だよ」


「そうなの?」


「うん、カード型は精製の過程で、不純物を取り除いて純度を高めてあるから、武器や防具を作ると高品質の物が出来るんだよ」


「なるほど、素材も形状によって価値や純度が違うんだ。憶えておくよ」


 ミナトはユズリハの笑顔に向かってそう答えるとソファーから立ち上がる。金属素材をアイテムストレージにしまうとユズリハに向かって声をかけた。


「それじゃあ、早速北地区に買物に行こう、ユズリハさんも準備は出来てるんだよね?」


ミナトの問い掛けにユズリハは笑顔を浮かべる。


「うん、こっちは準備は何時でも良いよ!」


 ユズリハの元気な声と共に二人は部屋を出る。一階の大きな玄関ホールから出て、広い庭を抜けると、二人は北地区を目指し歩きだす。

 東地区から北地区への道すがら、二人は出店で買ったホットドックを食べながら歩きながらミナトは譲りリハに問いかけた。


「そう言えば、ユズリハさんも武器を買い換えるの?」


 ミナトはホットドックを頬張るユズリハを見ながら聞いた。

 その視線を受けると顔を少し赤くしながら、かぶりついたホットドックを慌てて飲み込むと答える。


「ボク? う~ん、今使ってる物不満はないから武器の買い替えはいいかな……その代わり防具は新しいの欲しいから、そっちを優先するつもり」


「防具……さすがに服だけって訳にはいかないだろうし、僕も良いのがあったら買わないと……」


 ミナトは自分の格好を見直す。黒い服の上下にブーツと言う軽装備と言うのもおこがましい貧弱ぶりだった


「でも、その服かなり防御力高いんでしょう?」


「そうだけど、金属鎧には流石に敵わないし……この服の上から装備出来そうな物を探して見るよ」


 二人はそんな事を話しながら歩いていると、段々と周囲に人が多くなってきているのに気づく。

 ミナトとユズリハは辺りを見渡すと、広い筈の通りには、数多くの出店が並び、商人達の活気の良い声が辺りに響いている。


「ユズリハさんは、何時も何処で買い物してるの?」


「そうだね……生産系ギルド最大手の職人達の集いアデプト・ギャザリングの加盟店で買い物をしてたよ……でも、ボクは塔の都(ストーバ・トルレム)じゃなくて始まりの都(インゼル・ヌル)を拠点としていたから、実はあまり詳しくは無いんだ……ごめんね」


 ユズリハはそう言って申し訳なさそうに謝った。その姿にミナトは微苦笑を浮かべると手を振りながら謝罪を遮る。


「ユズリハさんが謝る事ないよ、それならこれから二人で、良いお店を探せばいいんだから」


「そう言って貰えると助かるよ……」


 ユズリハはミナトの言葉に微笑を浮かべると、通りに向かって歩き出した。


「最初は武器を売っている店を中心に回って見ようよ」


「了解、それじゃあ、まずはさっきユズリハさんが言っていた、職人達の集いアデプト・ギャザリングの加盟店から見ていこうか」


 それから二人は、大通りにある大型店を目指し歩みを進めながら、目に付く露店にも意識を向けていく。大通りに出ると人混みはさらに多くなり、二人ははぐれない様に手を取り合いながら目的の店を目指し歩いていく。

 ミナトとユズリハは大通りにある大型店を幾つか見て回るが、納得できる物が見つからず、休憩も兼ねて通りに面したカフェに腰を一旦落ち着けた。


「はぁ~ 中々無い物だね……良さそうな物があっても、LV制限やステータスが足りないって事が何回かあったからなぁ……」


「それは仕方ないよ、北地区のプレイヤーメイドの武器や防具は中堅LVを基準としているから、ミナト君やボクみたいな低LV帯の装備の供給が少ないのはどうしようもないよ……」


 二人は注文した飲み物に口を付けながら疲れた様に項垂れる。ユズリハは少し思案顔を作ると思い切ったようにミナトに告げた。


「もうこうなったら、オーダーメイドしてしまった方が良いかも、幸いな事に金銭的にも余裕もあるし、オーダーメイドで職人に作って貰おうよ!」


「一点物って事だよね……少し贅沢じゃない無いかな? LV1なのに……」


 ミナトは今一歩乗り気では無いようで少し躊躇いがちにユズリハに言う


「確かに、普通のLV1なら何を贅沢なって思うけど、ミナト君の戦闘技術を考えれば、良い装備を持つのは決して悪い事ではないと思う。これからの事を考えて先行投資だと思えば良いんじゃないかな?」


「先行投資か……少し贅沢かもしれないけどユズリハさんの言う通りにしようかな。このままずっと探し続けるのも大変だしね」


 ミナトはそう言って笑うと、ユズリハも笑顔を浮かべると小さく頷く。


「それじゃあ、腕の良い鍛冶師が居るお店を探さないとね」


「腕の良い鍛冶師……これまた探すのが大変そうだね……」


「まぁ、直ぐには見つからないかもしれないけど、ミナト君に合った武器を当ても無く探すよりは簡単だよ」


 ユズリハはそう言って、ウィンドウを操作しリストを開くと、そこにとあるキーワードで検索をかけた

その様子をミナトは黙って見ていると、ウィンドウには(生産職スキル&LVランキング)と言う文字が現れる。


「これって……」


「そう、生産職のプレイヤーのランキングだよ、これには生産職上位千名の名前と所属ギルドが掲載されているんだ、ここから探していけば確実に腕の良い鍛冶師が見つかるよ」


 ユズリハは得意気な笑顔でミナトに向かって親指を立てる。相変わらずそういう芝居がかった動作が不自然を感じさせない事にミナトは感心する。


「うん、確かにこれなら当ても無く探すよりも、かなり確率が高くなるけど……流石に大手ギルドに所属している人は無理でしょう?」


「うん、流石に職人達の集いアデプト・ギャザリングみたいな大手ギルドに所属している様な、高LVの生産職プレイヤーには頼めないだろうけど……中小ギルド、もしくは一人でお店を開いている鍛冶師なら注文を受けてくれると思うから」


 ユズリハはリストを捲りながら条件に合いそうな職人を探しながら、ミナトに答える。


「確かに、伝手も無い状態で、大手の高LVプレイヤーにいきなり武器を作ってくれって頼んでも無理だろうし……ユズリハさんの言う通りに個人経営のお店か中小ギルドの中で受けてくれそうな人を探すしかないね……」


 ミナトは腕を組みながら難しい顔で考え込んでいると、リストを見つめていたユズリハから声がかかる。


「この店なんか良いかもしれない。polestar(ポーラスター)って名前で、高LVの鍛冶師の個人経営のお店みたい」


「うん、そういう所なら受けてくれるかも、場所は分かるの?」


「お店の名前が分かれば、問題ないから直ぐに向かえるよ」


 ユズリハの言葉に、ミナトは頷くと、二人は北地区の大通りを東に向かって歩き出す。暫く歩くと人通りが少なくなってくる。


「こっちは随分と閑静なところだね……」


 ミナトが周囲を見渡しながらそう呟くと、隣を歩くユズリハがその疑問に答える。


「この辺りは、最近区画の販売が始まったばかりみたいだからね、人の行き来も少ないし、建物も少ないのは仕方ないよ」


「なるほど、新興の区画なんだ……ここも大通りみたいに賑やかになるのかな?」


「うーん、この区画は建物を敷地を広く取ってるみたいだから、あそこまで雑然とした感じにはならないと思うけど、それでも一年後も経てばかなりの数のお店がこの通りに並ぶ事にはなると思うけどね」


 ユズリハは、今はまだ建物が少ない通りを眺めながらそう呟く。

 ミナトはその言葉に小さく頷くと、まだ緑の多い通りをゆったりとした気持ちで歩いた。二人は散歩気分のまま、爽やかな風を感じながら歩いていると、他の敷地の二倍はありそうな建物が目に入る。その建物には看板が掲げられている


polestar(ポーラスター)……これだね」


「随分と大きなお店だね……」


 二人は店の前で、看板と建物を交互に見ながら確認しあうと、互いに頷き店のドアを目指し敷地に入る

建物からは金属を叩く甲高い澄んだ音が響いてくる。

 ミナトは分厚いドアを開けると店の中に入る。広い店内には陳列ケースが置かれ、中には何本かの剣が並べられている。壁際には金属鎧が並べられており大きな窓から入る日の光に照らされ輝きを放っている


「いらっしゃいませ……polestar(ポーラスター)にようこそ」


 店の奥のカウンターから澄んだ声が聞こえて来る。二人がそちらに目を向けると、猫耳少女が小さい頭を下げている所だった。


「えっと、武器を注文したいんだけど、大丈夫かな?」


 ミナトは猫耳少女を見つめながらそう言うと、猫耳少女は小さく頷くとカウンターから出てくる。

 着物を身に付け上品に歩いてくる猫耳少女に何度目かの既視感を感じながら、ミナトの目の前まで来た所でもう一度告げる。


「武器を作って欲しいんだ、此処には腕の良い鍛冶師が居るんでしょう?」


 猫耳少女は小さくコクンと頷くと、店内に設置してあるソファーセットに二人を案内する。二人は腰掛けると正面のソファーに正座をして座る猫耳少女が二人に告げた。


天目一音(アマノ ヒトツネ)、それがこの店で腕を振るう鍛冶師の名前……腕は確か……でも、凄く職人気質だから……作ってくれるとは限らない」


「注文を受けてくれるか分からないって事?」


 猫耳少女はコクンと頷くと、袂から一枚の懐紙を取り出し、ウィンドウを開くとアイテムストレージからお茶菓子を取り出し懐紙に並べていく。繊細な形の落雁や色取り取りの金平糖が一枚の絵のように並ぶ


「どうぞお召し上がり下さい。お茶をお持ちしますので暫くお待ち下さい」


 猫耳少女はそう言って店の奥に消えていく。二人はテーブルの上に置かれた和菓子(ちょっとした芸術品)に慄きながら顔を見合わせた


「何か独特な間を持った人だね……」


「うん、ボクも驚いたよ……でも、この和菓子綺麗だね……食べるのが勿体無いよ」


 ユズリハは感心していると、店の奥から猫耳少女と黒く綺麗な黒髪を総髪にした、長身の美しい女性が出てくる。


「私に武器を創ってほしいと言うのは貴方達か……」


「はい、そうです」


 長身の女性はミナトを見ると、一瞬言葉が途切れる、だがそれも僅かの間で気を取り直すようにして二人に声をかける。


「取り合えず話は聞こう、でも、その前にお茶をご馳走になってもいいかな? 朝から作業を続けていたから喉が渇いてしまってね」


 女性はソファに座ると手に持ったコップから水を飲み始める。

 黒髪黒目、目元のスッキリとした綺麗な顔立ち、服の隙間から覗く透き通るほど白い肌、うっすらと汗の浮かぶ肌には染みの一つ無い、豊かに膨らんだ胸に汗が流れていく様に思わず視線が釘付けとなってしまう、片手で払われた総髪から覗く項からは何と言えない色気が漂い、ミナトは知らず知らずに顔が赤くなる。


「ゴホン……ミナト君は何処を見てるのかな?」


「べ、別に何処も見てませんよ!?」


 ユズリハが蔑む様な視線でミナトを睨む、その視線から逃れるようにしていると目の前にお茶が置かれる。


「ありがとうございます」


 猫耳少女は小さく首を振ると、ユズリハの前にもお茶を置く。そしてソファーに正座で座ると、綺麗な所作でお茶を飲み始める。


「……えっと、改めてお願いしたいのですけど、剣を一振り打って貰いたいのです」


「少し待て、その前に互いに自己紹介くらいしたい、私は何も知らない相手の剣を打つ事はしたくない。この子から名前は聞いているかも知れないが、私は天目一音(アマノ ヒトツネ)この店で鍛冶師をしている」


「私は……白鳥琴(シラトリ コト)このpolestar(ポーラスター)の店長をしています」


「僕は、ユウキ・ミナトです。最近このEOTCを始めたばかりの初心者です」


「ボクは、ユズリハ、ミナト君の仲間です」


 二人の自己紹介を聞くと、ヒトツネは驚いたような顔でミナトを見つめて来る。その視線の意味に首を捻っていると。


「一目見た時に、まさかとは思いましたが……」


「えっ!?」


「昨日振りですね、ユウキさん」


その言葉に驚くと同時に昨日あった事のの記憶が浮かんでは消えていく


「えっ!? もしかして……」


ミナトはヒトツネを見つめると、最近現実(リアル)で知り合った女性の面影が頭を過ぎる。


「分かっていただけましたか?」


「御子柴さん……ですか?」


「そうですよ」


polestar(ポーラスター)の店内にミナトの間抜けな声と、ヒトツネの可笑しそうな声が響いたのだった。

お久しぶりです。

時間が取れたので大急ぎで書きました。

これからも不定期にはなると思いますが書き続けるので

よろしくお願いします。

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