第2話
目の前が光に包まれ、次に軽い落下感を覚える、その感覚が消えると閉じていた眼を開くと、皆人は真っ白い空間に佇んでいた。
(ようこそエレメンタルオブタワークライムの世界へ、私はナビゲーターを勤めさせて頂く蜃気楼と申します。ミラとお呼び下さい)
頭の中に直接語りかけてくる。優しげな女性の声に驚きながらも、皆人は頷く。改めて、今、自分の居る広大な空間を眺めるすると、また女性の声が聞こえてくる。
(これから皆人様には、この世界での貴方の分身となるキャラクターの作成をして頂きます。分らない事などありましたらその都度気軽にお尋ねになって下さい。それではキャラクター作成に移ります)
いきなり本名を呼ばれ、少し困惑してると、その様子が分かるのだろうか皆人の疑問に答えてくれる。
(皆人様が購入なさったHigh end型のspirt worldは、購入時に本人証明が必要になります。その本人証明はspirt worldに登録され、私、蜃気楼に記憶されます、その為、皆人様の本名を知る事ができたのです。)
「なるほど、蜃気楼さんはロイ・カーのメインシステムなんだね……」
皆人は頷きながら上を見上げると、よろしくと手を振る。その行動に蜃気楼はフリーズしてしまったのか、キャラクター作成の進行が止まる
(コホン、失礼しました……)
漸く復帰したのか、妙に人間っぽい咳払いをして仕切り直すと、皆人の目の前に半透明のウィンドウが浮かび上がり。そこにキャラクター作成画面が写しだされると、皆人は目を輝かせながら食入るように画面を見つめる。
(まずはキャラクターの設定を行なって下さい。名前、年齢、性別、血液型、種族の設定をして下さい)
ウィンドウの中には、種族の項目と血液型の項目が現れ、横にはキーボードタイプのウィンドウが現れる
種族
人間
エルフ
ハーフエルフ
ドワーフ
獣人
種族の項目の中のウィンドウには、五つの種族が並んでいる。ゲームでは良く見かける種族なので、何となく特徴が予想できるが、説明がないので簡単に判断できない、皆人は思案顔でミラに話しかける。
「種族の特徴を教えてくれる?」
(分かりました。まずは人間、能力的には平均的でこのEOTCの世界では一番人口の多い種族です。
種族の中で唯一全ての職業に着けるというメリットがあります。それと補足ですが最もプレイヤー人口の多い種族でもあります)
「一番人気の種族なんだ……」
考え込むように一人で頷く。
(それでは続けます。エルフは能力は魔力と速さが高い反面、攻撃力と体力に劣ります。EOTCの世界の特徴でもある精霊との契約も交わしやすいため即戦力としても優秀です)
(ハーフエルフは、その名の通り人間とエルフのハーフで、二つの種族の特徴を受け継いでいます。能力的には総合力で五つの種族中で一番高くなる可能性を秘めていますが…その反面、EOTCの世界では人間からもエルフからも迫害の対象となっているために、クエストなどの受注にペナルティが付く事があります)
(続いてドワーフは強靭な体と精神を持ち、魔法の耐性が最も高い種族です。手先も器用で、鍛冶や細工などのサブ職業に高い適正を持ちます。反面魔力は低く。魔法をつかうにはあまり向いていません)
(最後に獣人です。五つの種族中で最高の身体能力を誇り、あらゆる装備を使いこなす前衛職向きの能力を持っています。猫、犬、兎、虎などの多くの種族がおり、人間についで人口が多いのがこの種族です。魔法使いとしてもそこそこ優秀ですが、精霊との相性が悪く契約が交わし難いので注意が必要です。以上が簡単でありますが種族の大まかな説明です)
「ありがとう、大体分かったよ。うーん、結構悩むなぁ……安定性では人間で、このゲームを楽しむならエルフって感じなのかな? 個人的にはハーフエルフが気になるんだけど…」
一人言を口にしながら、聞いた説明を思い出し。種族を見つめる皆人はウンウン唸っている。その姿を見てミラが声をかける。
(私の個人的意見を言わせて貰えば、皆人様が一番気になる種族を選ぶのが良いと思います。確かに種族の変更は出来ませんが、無難を選ぶなら多少不利でも、自分の気になるものを選んだ方が、後々の後悔が無いと、私は思います)
妙に人間臭いミラの科白に、皆人は感心しながら、言われた事を考えて見る。
(確かに無難で行くより、多少の不利があったほうが面白いよね……楽しむためのゲームだもの。自分の気に入ったもので行くのが一番だよね!)
心の中で決心した皆人は、ウィンドウの中のある種族を選ぶ。確認のメッセージが出て、それもYESと答えていく。
(皆人様の種族は、ハーフエルフに決定されました、続きの項目の設定をお願い致します)
皆人は残りの項目を悩みながらも埋めていく。
「やっぱり楽しいよね! ゲームはこうでないと!」
悩みながらも、自分のキャラクターが出来上がるのが嬉しいのか皆人は次々と空白を埋めて行く。十分程経つと空白は無くなって。
これでよろしいですか? のメッセージにYESと答える
(皆人様のキャラクターの設定が完了しました。これより確認します)
キャラクター名 ミナト・ユウキ
LV 1
種族 ハーフエルフ
年齢 17歳
性別 男
血液型 A型
職業 一般
基本能力値
HP 12
MP 24
筋力 13
体力 11
器用 15
速さ 17
知力 15
精神 18
魔力 27
運 18
残りSTポイント 0
アビリティ 未登録
スキル 未登録
契約精霊 未契約
目の前のウィンドウに、皆人が設定したキャラクターが現れる。アバターはまだ設定されてないのか人影のみだが、能力値が初めて表示され、後はアビリティとスキル、それに契約精霊の欄が新しく加わっている。皆人は改めて自分の分身を見つめながら嬉しそうに微笑むとミラに声をかける
「このアビリティとスキル、それに契約精霊について詳しく教えてミラさん」
(了解しました、それより私の事は呼び付けで構いませんから……)
困惑気味に言ってくるミラに皆人は上を見ながら、にこやかに言う
「ミラさんは凄く人間らしいし、僕の認識では人と変らないから……それに年上のお姉さんっぽいからやっぱり年下としては敬称は必要でしょう?」
(…………)
またフリーズしたのか沈黙が流れる、それでも皆人は変らずニコニコと微笑んでいる
(分かりました、皆人様がそう仰るなら、私は気にしないように致します……それではアビリティとスキル。それに契約精霊についての説明を始めますが、よろしいでしょうか?)
若干疲れたような声で説明を始める。その変化に気付かず。皆人は相変わらず微笑んでミラの説明を興味深そうに聞いている。
(まず、アビリティですが、これは生まれもった先天性の才能を示します。プレイヤーの皆様は、必ず一つのアビリティを授かります。中には複数のアビリティを持つ方もいらっしゃいますが、それはかなりのレアケースになります。
そしてスキルは後天的に憶える技能でゲーム内での経験を基本にしており、これを積む事によりスキルのLVが上がります)
「なるほど…才能と技能って事だね……才能は大事だけど、後々の経験で培った技能は先天的な才能も超える事があるから……」
(その認識で間違いはありません。キャラクター作成では、アビリティがランダム、スキルは候補の中からの選択性になっております。それではアビリティを決定しますが宜しいですか?)
皆人は頷くと、アビリティの項目をタッチする。項目欄の中に様々な文字が凄い勢いで流れていく。一体どの位の数のアビリティがあるのか分からないが皆人は覚悟を決めると、もう一度アビリティの項目をタッチすると、一つのアビリティが浮かび上がる。
≪精霊一体化≫ 契約した精霊と一体化できる。
「何? これ?」
皆人は不思議そうに、そのアビリティを見つめていると、ミラから声がかかる。
(おめでとうございます。凄くレアなアビリティですよ、その名の通り精霊と一体化出来る能力です。)
ミラは驚いたように、皆人に言うと、簡単にそのアビリティの説明を始める。
(このアビリティを持っていると、契約精霊と一体化……分かりやすく言うと合体や変身が出来る様になる能力の事で、プレイヤー全体でも、このアビリティを持っている方は極々少数です!)
今一、事の重大さにピンと来てない皆人は、興奮気味に、説明するミラを見つめ首を捻る。
「えーと、つまり精霊と合体? 変身? 出来るのはレアな能力だという事なんだよね」
(はい、きっとこれから始まる。皆人様の冒険に役に立つアビリティなります。是非、大事になさって下さい)
ミラは、皆人にそういうと、落ちついた声音に戻り。今度はスキルの説明を始める。
(EOTCは、LV制とスキル制二つの側面を持ちます。LVは身体的な強化を、スキルは攻撃や魔法などの威力を強めてくれます。憶えるスキルの数に上限はありませんが、スキルの効果を最大限に引き出すには、スキルをセットしなければなりません。そのセット出来るスキルの数は七つ。これはLVが上がっても変ること無い数字ですので、良く考えてスキルをセットしてください)
「つまり、どんなに沢山の技能を憶えても、最大限にそのスキルの能力を引き出すことが出来る数は七つ。後のスキルは、それほど役に立たないって事?」
皆人は、聞いた話を整理して口に出す。ミラはその言葉に、多少の修正を加える。
「沢山の技能を憶える事は、一概に無駄とは言えません。スキルをセットしていなくても、そのスキルの恩恵を受けることは出来ますから。それにはスキルLVが2以上である事、つまりセットしてないスキルでも、LVの半分の効力をプレイヤーに与えてくれる。それは数多くの高LVスキルを持っていればそれだけでかなりの恩恵を受けられる事を示します。
ただし! スキルを育てるにはセットしないと経験を積んだ事にはならないので、どんなに頑張っても、七つ以上は同時に、育成出来ないという事です」
「つまり、あれこれスキルを育て様としても、七つという数の制限があるために、沢山の技能を高いLVにするには時間が掛かる……それなら数を最初は絞ったほうが良いって事ですか?」
(そうですね、スキルの数をなるべく絞った方が、序盤は良いかもしれません。今のプレイヤー達もメインスキル…所謂セットするスキルを平均12個…サブスキルと言われるものを平均8個位、合計20個のスキルを育てるのが。基本形みたいですね)
データを参照しているのか、ミラは時折確認のため。言葉に溜めが入る。そんな所まで、人間的な反応をするミラに、皆人は改めて製作者の拘りを感じた。
「分かった、ありがとうミラさん、じゃあ早速スキルのリストを見せてくれない?」
その感想をミラに言うのは、何となく憚られたので、皆人は話を先に進める事にした。
(了解しました。それではスキルリストを表示します)
ミラの、その声に反応するように新しくウィンドウが現れる。意外に数が少なく。皆人は拍子抜けする
(初期LVで覚えられるスキルは、限られていますから……数はそんなに多くはありません。だからこそ慎重に選んで下さい。此処で選んだスキルが、皆人様の冒険の手助けになるのですから…)
「うん、分かった……」
ミラの言葉に神妙に頷くと、皆人はスキルリストを見つめる。そこには基本的な戦闘系スキルの剣術、槍術、武術、魔法では地、水、火、風のお馴染みの属性魔法などのスキルが並んでいる。
「うーん、少ないと言っても、これだけあると悩むよね、これからの育成基準になるものだし……」
皆人は、スキルリストを食入る様に見つめると、あるスキルが目に止まりミラに聞く
「この効率行動ってスキルなんですか?」
(随分と渋いスキルを見つけましたね。それは行動の効率を上げ複数回行動を目指すためのスキルです)
「複数回行動って?」
(RPG風に言うなら戦闘1ターンの間に二回攻撃が出来る様になるスキルですね)
「それって物凄く強いんじゃないですか!?」
皆人は驚きながら効率行動のスキルを見つめる、その姿にミラは声を落とし
(複数回行動を目指すスキルと言いました、つまりそのスキル単体での複数回行動は今のところ誰も成し得ていません…所謂死にスキルと言われています)
ミラはそう説明すると、皆人は何故か嬉しそうに微笑みミラに言い返す。
「でも、このスキルが複数回行動への重要スキルなのは間違いない訳だよね! だったら僕はこのスキルを取るよ、だって面白そうじゃない?」
目を輝かせながら話す皆人に、呆れた声でミラは語りかける。その声は聞き分けのない弟を嗜めるような響きを持っていた。
(皆人様、このEOTCが開始されて三年経ちますが、その間に幾百幾千のプレイヤー達が挑戦して諦めた道です……それを初心者の皆人様がいきなり目指すのは些か無謀だと思いますが……素直に剣や魔法のスキルを取ったほうが良いかと思います)
ミラの。その言葉に頷きながらも、皆人は微笑みを浮かべ。視線を上に向け話しかける
「ミラさんの言う事は正しいと思う、でも、やっぱり最初から何か目的があった方がやる気になるでしょう? たとえ失敗して。このスキルが無駄になっても、その失敗までの道のりで経験した事は、無駄にならないと思うんだ……こういうトライアルアンドエラーってのが。ゲームの醍醐味だと僕は思うんだ!!」
皆人の、その力強い言葉に絆されたのか。ミラは溜息を吐き、困ったような声で言った
(今時珍しい位に、純粋なゲーマーなんですね、分かりました。私からはもう何も申しません……)
「ごめんね……心配してくれたのにそれを無視したみたいで……」
皆人は、そう言って頭を下げる、その姿に驚いたのか、ミラは慌てて声を上げる
(い、いえ、私の方こそ余計な事を言ってしまったみたいで……)
「ううん、ミラさんが謝る事じゃないよ、唯の僕の我侭だから…それじゃあミラさんには悪いけど、この効率行動のスキルを取らせて貰うね」
(はい、皆人様が自分で選んだものです。私はもう何も言いません)
ミラは、皆人の言葉を聞いて納得したのか。その判断に口を挟む気は無くなった様だった、その声には仕方ないという感じの感情が、見え隠れしていたが、それに気付いているのか皆人は苦笑を浮かべながらスキルを選んだ。
「あとは。アバターと契約精霊だけど……どっちが先かな?」
皆人はウィンドウを見つめると、影だけのアバターを見ていると、ミラが声をかけてくる。
「まずはアバターを決定してしまいしょう。髪の色、瞳、身長や体重などを入力すれば基本の形は出来上がります。拘る人は此処で何時間もかけますが、皆人様はどう致しますか?」
皆人は少し考えると、自分の姿とアバターを見て一つ頷く
「たしか、僕の買ったspirt worldには本人の身体データが入力されているんだよね? それを下にアバターって出来ないの?」
(可能です、しかし、宜しいのですか? ほぼ本人と同じアバターが出来上がりますが……)
「うん、VRMMOだと自分の体の変化するとそれに慣れるまで時間もかかるし、アバターを格好良くしてもこれと言ってメリットを感じるタイプじゃないから」
そう言って皆人は笑う、ミラは早速皆人のspirt worldから身体データを引き出すとアバターに入力していく、暫く経つと皆人のアバターが出来上がる。
本人と同じ、黒髪、黒目、身長は175cm、体型は普通より少し細めの見慣れた顔のアバターがウィンドウに表示される。
「うん、これで十分だよ。ありがとうミラさん」
(ハーフエルフなので多少の顔の違いはあるでしょうけど、もし現実の知り合いに出会えば皆人様本人と分かってしまうかも知れませんよ?)
ミラがセキュリティ上の危険を皆人に忠告するが、皆人は気にした風も無く答える
「大丈夫! 暫くはソロのつもりだし、EOTC古参の友達も居るし、問題ないよ!」
(私個人としては、ワンポイント何かを付け加える事でバレ難くなると思いますが…)
「ワンポイント?」
(はい、例えば髪の色、瞳の色のなどの目に付きやすい所を変化させればそれだけでもかなり違いがあると思いますけど……)
「なるほど……うーん変化かぁ、僕はそれ程心配しなくても良いと思うんだけど……折角ミラさんが心配してくれてるんだし、瞳の色を変えて置こうかな何色が良いと思う?」
皆人がミラに問いかけると、ミラは暫し黙考するとオススメの色を言ってくる
(髪の色と違和感が無い色だと紫が良いと思います。結構目立つ色ですし、ワンポイントになると思います)
「うん、それじゃあ瞳の色を紫に変えて、それでアバターの設定は完了って事で良い?」
(了解しました。それでは設定の変更行ないます…………完了しました。皆人様これで宜しいでしょうか?)
そこには瞳の色と顔の作りが多少美化された皆人が表示されている。それを確認するとYESタッチパネルをタッチする。するとそのアバターが消え目の前が暗くなるがそれも一瞬で終わり、何が起こったのか不思議に思っていると、突然大きな鏡が現れる、そこに写し出せれているのは先程出来たばかりの自分のアバター姿だった。
「うわ~何か変な感じだね……瞳の色が違うだけなのに何か違う人みたいだ……」
(アバターに何も問題はありませんか? 感覚にずれや動作などに不具合があれば仰って下さい。)
「大丈夫、何も問題ないよ! 何かいよいよゲームが始まるんだなって感じで楽しくなってきたよ」
皆人は嬉しそうに、鏡で自分のアバターを楽しげに観察している。暫くそんな事をして満足したのか、改めてキャラクター作成、最後の項目に目を向ける。
「えーと、これで後は、この契約精霊って項目だけだけど……これはどうすれば良いの?」
(契約精霊に関してはこれから行なう、精霊との邂逅で決まります……このEOTCの花形でもある精霊との契約です、邂逅できる精霊に制限はありません、初期から高位の精霊との契約も可能です。これもアビリティと同じでランダムで決定されます……しかし、その契約した精霊と会えるのは始まりの町を旅立ち、このEOTCの象徴でもある、塔の都に着いてからになります)
「そうなの? じゃあ最初は自分がどんな精霊と契約したのか分からないんだ?」
(はい、その通りです、会えるのは暫く先になりますが精霊との出会いを楽しみにしていて下さい。それでは皆人様、精霊との邂逅に入ります。)
「了解……それで僕はどうすれば良いの?」
不思議そうに辺りを見渡しながら、ミラに問いかける
(そこで目を閉じて立っていて下さい。精霊との邂逅は直ぐに終ります……そこで貴方は自分の契約した精霊の断片的なイメージを見ると思います。それが皆人様の契約した精霊のヒントになりますので……出会いの間、色々と思索してみてるのも良いと思いますよ……それでは始めます)
皆人は言われた通りに瞳を閉じると真っ直ぐに立つ、体が上昇するような感覚に襲われると。次の瞬間目の前が真っ暗になる、暗い空間をただ進んで行く…凄く寒くて、そして時には熱くなる、自分は唯、前へ進む、そして次の瞬間目の前に青い何かが立ち塞がるそれを避けきれずに自分はその青い物体にぶつかる
「うわぁぁぁぁ……はぁ、はぁ、はぁ……」
その衝撃に驚き瞳を開けると、目の前には暖かい陽だまりと心地よい風が吹きぬける、広い草原の真ん中に、一人で立っていた。目の前の光景に目を奪われている皆人の頭の中に、囁きかけるような声が聞こえて来る
(ようこそEOTCの世界へ…これからの皆人様の活躍を祈っています)
これが皆人が初めて訪れたVRMMOの世界…そしてこれから長い間、冒険の日々を過ごす世界との対面だった。